
6月11日から7月19日(現地時間)にかけて行なわれたサッカー北中米W杯で、16年ぶり2度目の優勝を果たしたスペイン代表のメンバー26人中4人が、ラ・リーガ(スペイン1部)ビジャレアルCFのカンテラ(アカデミー)出身でした。大会MVP(ゴールデンブーツ)に輝いた主将のロドリ選手、全7試合に出場したアレックス・バエナ選手が代表格です。そのビジャレアルCFとリーグワンのリコーブラックラムズ東京が、昨年10月、教育・育成を通じたサステナビリティ推進に関するパートナーシップを締結したことは、小欄でも以前に報告しました。
ブラックラムズは8月2日、両クラブのパートナーシップの一環として、東京・二子玉川ライズにて「スポーツチームと考える 人づくり・街づくりカンファレンス」を開催しました。発起人であるブラックラムズのクラブ・ビジョナリー・オフィサーの白﨑雄吾さんは、企画意図をこう説明しました。
「一昨年、ビジャレアルを訪問した際、『スポーツは誰のためのものですか?』という(フットボールマネジメント部の)佐伯夕利子さんの問いに僕は即答することができなかった。その後、佐伯さんをはじめビジャレアルの方々と話をしてきた中で、スポーツの価値を最大限発揮することがブラックラムズを通してできる、と考えた。それを西辻勤ゼネラルマネジャー(GM)とヘッドコーチ(HC)のタンバイ(・マットソン)らスタッフで行動してきたつもりです。スポーツの力を使い、社会課題解決、皆様が一歩踏み出せるようなイベントになればうれしいです」
1923年創設のビジャレアルは、スペイン東部のバレンシア州カステリョン県ビリャ=レアルに本拠地を置くクラブです。ビリャ=レアルは人口約5万人の小さなまちで、レアル・マドリード、バルセロナFCのようなビッグクラブではありませんが、国内屈指の育成型クラブとして知られています。25-26シーズンのラ・リーガでは、バルセロナ、レアルに次ぐ3位でした。
ブラックラムズが着目したのは、ビジャレアルの育成力だけではありません。クラブはトップチームの強化のみならず、地域社会や教育、スポーツ、文化などを支援するサステナビリティ推進活動「Endavant Project」(エンダバン・プロジェクト)にも力を入れています。ちなみに「Endavant」とはバレンシア語で「常に前進」を意味します。
2004年にスタートした、エンダバン・プロジェクトについて、佐伯さんは「単なる社会貢献活動ではなく、クラブの存在意義の延長線上にある思想」と言います。
ところで、このプロジェクトは以下の8つの領域で展開されています。
①スポーツ&アスリート支援②地域創生③共生社会④地域との連帯・連携⑤次世代を担う子ども⑥文化継承⑦教育・学術支援⑧サステナビリティ
中でも③は、カンテラの選手たちが地域の障がい者支援施設や高齢者施設を訪問し、交流する機会を設けるなど、学ぶべきものが多々ありました。先述したロドリ選手、バエナ選手も、このプロジェクトを経験し、巣立っていきました。
佐伯さんは続けます。
「ロドリ選手たちの活躍は職員たちも喜んでいます。最初はコーチ陣から『練習をキャンセルしてまで何をやっているんだ』という反発がありました。今はプロジェクトをやって良かったと肯定された。ロドリ選手は『(現役時代の最後は)ビジャレアルに戻って引退したい』と言っている。そう思ったのはビジャレアルが彼をトップチームに引き上げたからではないと思うんです。人は幸せなところに戻ってくる傾向にあります。その幸せだと感じられる何かがビジャレアルにはある。それがエンダバン・プロジェクトでの体験だったかもしれないと考えると、これからも引き続き進めていきたい」
今回のイベントが開催されたのは、ブラックラムズのホストエリアの世田谷区内にある複合商業施設です。イベントには保坂展人区長や地域行政部長が登壇しました。会場には約200人が集まり、その中には世田谷区の区議会員や職員の姿もありました。
GMの西辻さんは、改めてパートナーシップ締結の意義を語ります。
「ブラックラムズだけでは、できることが限られてくる。こうやって共創していくことが大事なんです。自治体、民間、個別でもつながっていく。今回、ビジャレアルというインパクトの強いチームともつながれた。こうやってかたちになることで、僕らのチームビジョンである『Be a Movement.』、周りを巻き込みムーブメントを巻き起こすことにつながると思うんです」
一方のビジャレアル側はどうでしょう。再び佐伯さん。
「ブラックラムズはクラブの存在価値を追求していくことと、チームを強くすることは並行できる、と証明しつつある。今後、どこに向かうかは未知数ではありますが、お互いにチームが強くなり、社会的な存在価値も高めていくことが、このパートナーシップを結んだ意義だと思います」
世田谷区の人口は23区最多の93万人。5万人のまちビリャ=レアルとは規模が異なります。その点について、白﨑さんは以前、こう語っていました。
「93万人のリソースがあるエリアで、私たちが社会課題を解決するプラットフォーマーになれれば、新しいスポーツの価値提供につながるんじゃないかと考えています。よくホームタウン活動は地方の方が浸透しやすいという声も聞きますが、私は都心部でも十分に実現できると思っています」
25-26シーズンはリーグワンで過去最高の5位に入ったブラックラムズ。来季はチーム成績のみならず、グラウンド外の取り組みにも注目したいと思います。
(取材/杉浦泰介、構成/二宮清純)
データが取得できませんでした


以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。