欧州の強豪6カ国・地域による対抗戦シックスネーションズが6日(現地時間)、欧州各地で開幕しました。ジャパンが2023年W杯フランス大会で同組となった優勝候補のイングランド代表はホームでスコットランド代表に6対11で敗れる波乱のスタートとなりました。
昨年、シックスネーションズとオータムネーションズ(欧州6カ国対抗に加え、フィジー、ジョージアの8カ国・地域による対抗戦)の2冠を達成したイングランドが、1983年以来、38年ぶりにロンドンのトゥイッケナムスタジアムでスコットランドに敗れるという屈辱を味わいました。
ノートライに終わったことに加え、規律面では前半だけで10回もペナルティーを犯すなど、悪い部分ばかりが目につきました。ボール支配率、タックル成功率でもスコットランドを下回り、「少し精彩を欠いたプレーが目立った」と、試合後にはエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)も苦笑を浮かべていました。
しかし、そこは経験豊富なエディーHCです。13日のイタリア代表戦までには、きっちり修正してくるでしょう。
2年後のW杯フランス大会で「19年日本大会以上」(森重隆会長)の成績、すなわちベスト4を目指すジャパンにとって、このシックスネーションズは同組最強と目されるイングランドを分析する絶好の大会です。
この試合を観ていて、目に留まったのがボックスキックを巡る攻防です。ボックスキックとは、ラックなどのプレーヤーが密集した状態から高く蹴り上げるキックのことを指します。ラックからボールを拾い上げるスクラムハーフがよく使用します。
キックオフ直後からスコットランドのスクラムハーフ、アリ・プライス選手に対し、イングランドのロック、マロ・イトジェ選手は執拗にプレッシャーを掛けていきました。
前半2分と7分、自陣でハイパントキックを蹴ろうとする178センチのプライス選手に対し、195センチの長身イトジェ選手が両手を広げ、覆いかぶさるようにチャージを仕掛けます。得点にこそつながりませんでしたが、こぼれたボールの転がり方次第ではあわやトライの場面でした。
イトジェ選手は、その後もプライス選手に対し、常に目を光らせ続けました。両手を広げてプレッシャーを掛ける姿は、まるで大きく羽を広げ、獲物を仕留めようとする猛禽類のそれでした。22分には、気圧されたプライス選手がキックミスをするシーンがありました。
ナイジェリア人の両親を持つイトジェ選手は並外れた身体能力の持ち主です。バスケットボールや砲丸投げでも17歳以下の代表に選ばれたことがあります。24歳にして既に通算44キャップ。19年W杯日本大会でも活躍し、イングランドの準優勝に貢献しました。フランス大会、ジャパンにとっては要注意のプレーヤーです。
日本でも似たようなシーンを目にしたことがあります。2016年度の日本選手権決勝、サントリーサンゴリアス対パナソニックワイルドナイツ戦において、サントリーのスクラムハーフ流大選手はパナソニックの猛チャージを受けました。サントリーが9対3とリードした後半16分。流選手は自陣でのボックスキックをウイング福岡堅樹選手にチャージされ、こぼれ球を拾ったロックのヒーナン・ダニエル選手にトライを奪われました。コンバージョンキックも決まり、9対10と一時は試合をひっくり返されてしまったのです。
この場面、身長165センチの流選手が蹴ったボールを弾いたのは福岡選手でしたが、196センチの長身ヒーナン選手も同時にプレッシャーを掛け、ミスを誘いました。
このように自陣深くでのボックスキックをチャージされると、相手にトライを奪われるリスクが生じます。それを考えると安易に蹴るのは禁物です。
話をトゥイッケナムでの試合に戻しましょう。スコットランドも、ただイトジェ選手の圧力の前に無力だったわけではありません。8分の場面ではラックまわりにいるFWがブロックし、小柄なプライス選手をイトジェ選手から守りました。36分には、プライス選手がハイパントを左足で蹴ると見せかけ、逆サイド(右)へのパスを選択。イトジェ選手を釣り出すことに成功しました。プライス選手は後半29分にベンチに下がるまで、両チーム最多となる68本のパスを通し、勝利に貢献しました。
長身で身体能力に優れたイトジェ選手をどう封じるか。ジャパンにとっては多くのヒントが詰まった試合でした。
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