さる11月17日(現地時間)、世界ランキング11位の日本代表はイギリス遠征で同4位のイングランド代表と対戦しました。ジェイミー・ジョセフvs.エディー・ジョーンズの新旧日本代表指揮官対決として注目された一戦は、15対35でエディーHC率いるイングランドに軍配が上がりました。
まずは「ラグビーの聖地」と呼ばれる8万2000人収容のトゥイッケナムスタジアムでの試合から振り返りましょう。日本は開始早々にイングランドに先制されたものの、センター中村亮土選手のトライなどで逆転しました。10対10の前半31分には、フランカーのリーチ・マイケル選手が右サイドでボールを持つと、4人をかわす鮮やかなトライを奪います。これにより日本は15対10と1トライ差をつけて折り返しました。
しかし、後半に入ると一気に流れは格上のイングランドへ。日本は後半だけで3トライを含む25失点を喫し、結局、15対35で敗れました。
以下はジェイミーHCの試合後のコメントです。
「このような場で自分たちのパフォーマンスをしっかり見せて、しかも勝てるところまで持っていけるような展開に持ち込めたというのが非常に大きな収穫だ。だが後半、相手に流れを渡してしまったところは課題である」
後半に入り、ペースを握られた理由のひとつに、選手交替があげられます。後半、日本はスクラムハーフの田中史朗選手、ロックのヘル・ウヴェ選手、フランカーの西川征克選手に代えて、流大選手、アニセ・サムエラ選手、布巻峻介選手をピッチに送り出しました。キャップ数の少ない選手に経験を積ませる狙いもあったのでしょうが、選手交代は凶と出ました。特に田中選手の不在は大きかったように思われます。ボールポゼッション率は前半の69%から後半は59%に下がりました。
翻ってイングランドはカードを有効に切ってきました。センターのアレックス・ロゾフスキ選手に代えてオーウェン・ファレル選手を投入、これが生きました。ファレル選手は2017年の欧州最優秀選手です。後半は彼がスタンドオフのジョージ・フォード選手とともにゲームのコントロール役でした。パスの出し手が増えたことでイングランドの攻撃は厚みを増しました。その結果、日本はPG2本決められてしまいました。エディーHCは畳みかけるように後半32分には90を超えるキャップ数を誇るプロップのディラン・ハートリー選手を投入、これがトドメでした。その4分後、日本はハートリー選手にトライを許しました。エディーHCからすれば狙い通りの采配だったでしょう。
エディージャパン時代、コーチングコーディネーターとして指揮官を支えたサントリーサンゴリアスの沢木啓介監督の解説を引きます。
<前後半でイングランドは別のチームになった。大きいのは後半から入ったSOファレルの存在。日本に対してバタバタだったチームの意識が、強いリーダーシップで変わった。自信を持ってボールを回し、アタックをしてくるようになった。日本にチームを変えるような交代選手はいなかった>(「日刊スポーツ」11月19日付け)
戦術的交替が可能になったのは1996年からです。現在はリザーブ8名全員の交替が認められるようになり、従来以上に指揮官の選手起用、選手交代の腕が問われるようになってきました。すなわちベンチ入りした23人全員で戦う時代になってきたのです。
サントリー、日本代表でエディーHCの下でプレーしたロックの真壁伸弥選手は以前、こう語っていました。
「本音を言えば、最初は(ロックのレギュラーの)5番を着たかった。でもエディーさんがHCになってからは18番や19番という番号にも誇りを持てるようになりました。力が落ちるからリザーブなのか、それとも後半の武器として考えてくれているのか。試合に出ていないメンバーを含めて、全員に役割と居場所がある。それが本当に強いチームでしょう」
真壁選手は2015年W杯イングランド大会の代表スコッドで全4試合中3試合にベンチ入りし、全ての試合で途中出場しました。歴史的勝利をあげた南アフリカ代表戦では後半13分から投入され、逆転トライにつながるスクラムで身体を張りました。日本はベンチ入りの23人全員がピッチに立ち、文字通り総力戦で“ブライトンの奇跡"を起こしたのです。
真壁選手が言うように、本当に強いチームには全員に居場所と役割があります。もはや15人で戦い切れる時代ではありません。世界ランキング11位の日本が格上のチームを倒すには、いつ、どこで、誰と誰を替えるか――。指揮官のカード捌きが重要になってくるのです。
さて、今週末の24日、日本は2019年W杯開幕戦で当たるロシア代表と対戦します。世界ランキング19位の格下を相手にジェイミーHCは「若手中心のメンバーで臨む」と明言しています。若手にチャンスを与えることは大事ですが、自らのカード捌きにも磨きをかけてもらいたいものです。そして、できればロシアをコテンコテンにやっつけ、「日本にはかなわない」との苦手意識をウォトカの国の戦士たちに与えてもらいたいものです。
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