W杯のスコッド入りを目指すジャパンの候補選手たちは現在、オーストラリアに遠征中です。この後、来月の宮崎合宿で現在の約60人から「35人~45人程度」に絞り込まれます。9月の開幕に向け、生き残りをかけたサバイバルレースが続きます。
ジャパンの候補選手たちの特別編成チーム「ウルフパック」は、3月から強化試合を5試合国内外でこなしてきました。17日にはオーストラリアで最終戦を迎えます。チーム結成の目的はジャパンの候補選手たちに実戦経験を積ませることでした。
選手の中でもひときわ目を引くのが、ここ2試合で「10番」を任されている松田力也選手です。オーストラリア勢のウエスタン・フォース、ブランビーズBとの強化試合ではスタンドオフとして計117得点に貢献しました。中でもプレースキックの正確さは際立っており、2試合で19本中19本成功、抜群の安定感を示しました。
「いいキックがチームにいい影響を与えられる。キックに対して毎回同じアプローチができるように集中すれば、いい結果が出ていると思う」
ゴールキックは2点、PGは3点。ラグビーにおけるプレースキックの重要性は言うまでもありません。
周知のようにジャパンはジェイミー・ジョセフHC就任以降、キックを多用しながら空いたスペースをつくラグビーに磨きをかけてきました。指揮官は「キックは我々の戦いの中で重要な部分。田村(優)と松田はいいスキルとビジョンを持っている。この2人がキープレーヤー」と明言しています。
インプレーにおけるキックでも松田選手は高いパフォーマンスを披露しました。4月27日のウエスタン・フォース戦では後半7分にウイングの福岡堅樹選手のトライをアシストしました。敵陣左サイドでボールを持つと、利き足とは逆の左足でキックパスを裏のスペースへ通したのです。無人のインゴールではねたボールを福岡選手はグラウンディングするだけでした。
スコアは51対38。試合内容について聞かれたジェイミーHCは「10点満点中5点」と顔をしかめる一方で、「10番」でフル出場を果たした松田選手については「7点」と合格点を与えました。
松田選手は大学1年からレギュラーとなり、帝京大の全国大学選手権大会5連覇~8連覇に貢献しました。走って良し、蹴って良し、投げて良しと万能型のイメージがあります。岩出雅之監督は「ランもゲームコントロールもできる。身体も強く、逃げずにチャレンジする力がある。ひとつひとつのプレーが正確」と高く評価していました。
2016年1月の日本選手権で対戦したパナソニック ワイルドナイツのスタンドオフ、ベリック・バーンズ選手は試合後、彼への賛辞を惜しみませんでした。
「ジェイミー・ジョセフHCにジャパンのスコッドに入れるべきだと提案したいくらいだ。ゲームコントロールに長けていて、フィジカルも強い。今日のゲームでもキックでピンチを脱出していた。10番として優れている」
ワラビーズ(ラグビーオーストラリア代表の愛称)で51キャップを誇る司令塔の声が届いたのか、それからしばらくして松田選手はジャパンに招集されました。6月のカナダ代表とのテストマッチで初キャップを飾ると、スコットランド代表との2連戦ではスタメンで起用されました。
大学卒業後、17年にパナソニックに入団し、バーンズ選手の同僚となりました。松田選手は1年目からコンスタントに出場機会を与えられたものの、背番号は主に12でした。そう、スタンドオフでなくセンターでした。その間、世界的司令塔のプレーを間近で学びました。これが彼の財産となっているのです。
3年前のスコットランド戦2試合でともにプレーしたロックの大野均選手は「とても大学生とは思えなかった」と松田選手のプレーぶりを振り返り、こう語っていました。
「田村優に対抗できる唯一のスタンドオフ。シンプルにプレーをするし、しっかり体を張り、ディフェンスもできる。経験を積めば、もっともっと伸びる選手ですね」
とはいえ、田村選手との間には、まだ距離があります。「W杯みたいな短期決戦になると、やはり軸が1本あった方がいい。スタンドオフはコロコロ替えるべきじゃない。ただタイプの違うスタンドオフを置いて、使い分けるというのもひとつの手。そういう局面があるかもしれませんね」。これが大野選手の意見です。松田選手はまだまだアピールが必要です。
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