スコットランドから4トライを奪う完勝で、ジャパンが史上初の決勝トーナメント進出を果たしました。ここまでフォワード陣の健闘が目につくジャパンですが、バックス陣の活躍も見逃せません。
ラグビーW杯は1987年に始まりましたが、1試合で4トライ以上、7点差以内の敗戦には勝ち点1というボーナスポイント制度が採用されたのは2003年大会からです。これにより、試合は最後まで目が離せなくなりました。勝つにしても3トライと4トライとでは、後々に大きな影響が出てきます。負けるにしても7点差以内なら、決勝トーナメント進出に望みを繋ぐことができます。
前回のイングランド大会、ジャパンは南アフリカ戦を含む3勝をあげながら、決勝トーナメントに進めなかったのは、ボーナスポイントが1点も取れなかったからです。4トライ以上あげた試合はゼロ。これが尾を引き、同じ3勝1敗ながら、勝ち点で南アフリカに4、スコットランドに2及びませんでした。
トライ数は1位南アフリカが23、2位スコットランドが14だったのに対し、日本は9でした。
4年前の教訓が今回は生きています。アイルランド戦を除く3試合で4トライをあげ、勝ち点19で1位通過を果たしました。サモア戦では試合終了間際の猛攻からウイング松島幸太朗選手のトライが生まれ、ボーナスポイントを加えた勝ち点5を獲得しました。
安定感のあるスクラムがバックス陣に活力を与えています。1次リーグでは13トライのうち9トライが松島選手と福岡堅樹選手の両ウイングによってもたらされました。
同じフィニッシャーでも、2人はタイプが異なります。福岡選手が「1歩目、2歩目が速い」(元日本代表・堀越正巳さん)スプリンタータイプなら、松島選手は「目の前から消える」(元日本代表・大野均選手)変幻自在のステップを武器にしています。
松島選手を「フェラーリ」に例えたのはジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)です。ハットトリックを達成したロシア戦後、「外からフェラーリが飛んでくるようなもの」と最大級の褒め言葉を送りました。それを聞いた松島選手、「僕の中では(福岡)堅樹がフェラーリ」と切り返しました。福岡選手はさすが頭脳派です。ウイットに富んだセリフを口にしました。「燃費が悪いというのもある。褒め言葉として受け取って、そう言ってもらったからにはスピードを生かしたプレーをしたい」
ジャパンが誇る両翼ならぬ両輪がフル回転したのがスコットランド戦です。試合開始前、ジャパンの勝ち点が14だったのに対し、暫定トップのアイルランドが16、同3位のスコットランドが10。ジャパンは勝てば文句なしの1位通過、負けてもボーナスポイント次第ではベスト8に進出できる状況でした。
まずは松島選手がやってくれました。前半17分、7点ビハインドの場面。左サイドタッチライン際でボールを受けた福岡選手が持ち味のスピードを生かし、縦に突破。相手のタックルを浴び、バランスを崩しながらも、並走する背番号14に絶妙なオフロードパスを送りました。スピードに乗った状態でボールをキャッチした松島選手、誰にも触れられることなくインゴール左中間に飛び込みました。
福岡選手も負けてはいません。前半終了間際、センターのラファエレ・ティモシー選手のキックパスを右手でコントロールすると、無人の野を突っ切りました。欧州最高のフルバックとの呼び声が高いスチュワート・ホッグ選手を歯牙にもかけませんでした。
さらに福岡選手は躍動します。後半開始早々、センターライン付近でボールを奪い取ると、一気に加速し、約50メートルを独走しました。後半開始時点で14点差。スコットランドにすれば、早い時間帯で追いつき、逆転への機運を盛り上げたいところです。それが先にスコアを動かされてしまったわけですから、これは痛恨のトライだったはずです。
福岡選手の2トライ目は、チームにとって4トライ目。この時点でボーナスポイント獲得が決まりました。スタンドオフ田村優選手のコンバージョンキックも成功し、28点差。ベスト8進出をほぼ確実にする価値あるトライでした。
参考までに紹介すれば、この試合のボールキャリー(ボールを運んだ距離)は福岡選手が両チームトップの110メートル、松島選手は同3位の78メートル。両輪の走行距離がジャパンの勢いを物語っていました。
ベスト4をかけ、迎える相手はW杯開幕前のテストマッチで7対41と完敗した南アフリカです。松島選手がこの試合、ジャパンで唯一のトライをあげたのに対し、福岡選手は右ふくらはぎを負傷し、途中で退きました。それぞれに秘めた思いがあるはずです。決戦は日曜日です。
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