ラグビーW杯で3度の優勝を誇るニュージーランドは北島(ノースアイランド)と南島(サウスアイランド)、ふたつの主要な島からなる立憲君主制国家です。人口の4分の3を占め、行政機関が集中する北島に対し、南島は酪農や観光産業が盛んです。5日、首都ウェリントン(北島)で、両島の威信を賭けたインターアイランドマッチが行なわれました。
インターアイランドマッチの歴史は古く、ニュージーランドラグビー協会が設立されてから5年後の1897年にスタートしました。対戦成績は北島の50勝27敗3分け。かつてはオールブラックスのメンバーを選ぶためのセレクションマッチという位置付けでした。
95年に国際ラグビー評議会(現ワールドラグビー)がプロ化を容認してからは、スーパーラグビー(SR)のチームからの選出が恒例化していました。今年はコロナ禍でSRの試合数が少ないため、8年ぶりに伝統の一戦が復活しました。
チーム分けは出身地ではなく、初めてプレーした州代表の所在地が北か南かが基準になっています。それにより兄弟でも北と南に分かれることがあります。例えば昨年のW杯日本大会でも活躍したバレット兄弟は兄ボーデン選手がタラナキに所属していたため北、弟ジョーディー選手がカンタベリーに所属していたため南のジャージーを着ました。
日本で馴染みのある選手と言えば、父親が日本のリコーに所属していたアキラ、リーコのイオアネ兄弟や“微笑みの貴公子”と呼ばれるフルバックのダミアン・マッケンジー選手。彼らは北、一方パナソニックワイルドナイツに所属していたロックのサム・ホワイトロック選手は南でプレーしました。
今回、多くの日本人が注目したのはサントリーサンゴリアスへの入団が決まった兄のB・バレット選手だったのではないでしょうか。昨年のW杯日本大会ではフルバックで起用されましたが、後方からスタンドオフのリッチー・モウンガ選手を巧みにサポートしました。この“ダブル司令塔”体制でオールブラックスは得点を量産。大会最多の36トライをあげました。
今回のインターアイランドマッチではB・バレット選手が北島の10番を背負い、奇しくも南島スタンドオフのモウンガ選手との司令塔対決が実現しました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、この一戦は無観客で行なわれました。先制したのは北島です。前半3分、敵陣深くからB・バレット選手はディフェンスの裏を狙い、グラバーキック(グラウンダーのキックパス)を繰り出しました。絶妙な位置に転がったボールをセンターのR・イオアネ選手がキャッチし、そのままインゴール右中間に飛び込みました。年間最優秀選手賞に2度輝いた司令塔が早々に存在感を発揮しました。
12分、南島に7対10と逆転されたものの、北島は18分に試合をひっくり返しました。センターライン付近から細かくパスを繋ぎ、ウイングのケレリプ・クラーク選手が左サイドを突破しました。そこからオフロードパスの連続で、最後はマッケンジー選手がインゴール左に悠々とトライ。コンバージョンキックも決まり、14対10と再びリードを奪いました。
その後、両軍は一進一退の攻防を続けました。北島は一時、南島に10点差を付けられましたが、途中出場のスクラムハーフのアーロン・スミス選手、マッケンジー選手らを中心に切れ目のないアタックを見舞い続けます。27、32分とトライを重ね、北島が35対31とリードしました。
このまま北島が逃げ切るかと思われましたが、試合終了間際にドラマが待っていました。南島は左サイドでボールを持った途中出場のスタンドオフ、ジョシュ・イオアネ選手が逆サイドにキックパスを送ります。これを188センチのジョーダン選手が相手と競り合いながらキャッチ。そのままインゴール右に飛び込み、逆転トライをあげました。白熱の攻防は、38対35で南島に軍配が上がりました。
時計の針を昨年のW杯に戻しましょう。3連覇を目指していたオールブラックスは優勝候補の筆頭にあげられながら準決勝でエディ・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が指揮を執るイングランドに7対19で敗れました。スティーブ・ハンセンHC(当時)は「イングランドが素晴らしいチームだった。何の後悔もない。今日は自分たちよりいいチームに負けた。痛みはあるが恥ずかしくはない」と敗戦の弁を口にしました。確かにあの試合はイングランドが素晴らし過ぎました。
コロナ下、既にオールブラックスは2023年のW杯フランス大会に向け動き出しています。インターアイランドマッチの翌日、2020年のオールブラックス35名が発表されました。スコッドには前夜の試合で活躍したジョーダン選手、クラーク選手ら7名が新顔として名を連ねました。やはりオールブラックスが強くなくてはラグビーは面白くありません。ニューオールブラックスの挑戦が始まります。
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