エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)2期目の初陣は黒星スタートとなりました。「世界のトップ4」(エディーHC)入りを目指すエディー・ジャパンにとって、昨年のW杯フランス大会3位のイングランドは願ってもない相手。出だしは快調でしたが、終わってみれば17対52。トリプルスコアで敗れました。だが完敗の中にも「超速ラグビー」の一端を示すなど、光は見えました。なおイングランドとの対戦成績は12戦全敗となりました。
「まずは残念な結果で悔しく思っています。ただ非常に大きな糧を得ることができました。セットプレーでイングランド相手に競り合うことができたのは、非常に大きなステップアップと感じています。アタックに関しては良い方向に進んでいることを示せたと思いますが、チャンスを生かし切ることができなかった点は今後の課題」
試合後、エディーHCは時折、笑みを浮かべながら、こう語りました。
収穫のひとつはスクラムです。昨年のW杯フランス大会で世界から高い評価を得たスクラムは、プロップ稲垣啓太選手、フッカー堀江翔太選手らフロントローが、初キャップのプロップ茂原隆由選手、フッカー原田衛選手に入れ替わってもファーストスクラムで相手から反則を誘うなど、マイボールキープ率100%(数字はESPNラグビーサイト参照)と実力を発揮しました。マイボールラインアウトも、この日は15本全て成功と、練習の成果を見せました。
開始早々からテンポの速いアタックで相手の反則を誘いました。3分、スタンドオフ李承信選手がPGを決め、3点を先制しました。
スクラムハーフ齋藤直人選手を起点にした素早い球回しは、エディーHCが「アツイ鉄板の上に居続けさせろ」と指示たように、イングランド代表を慌てさせるに十分でした。
しかし、「超速」が機能したのは前半15分くらいまで。序盤の2度の決定機を逃した日本は、確実にチャンスをモノにするイングランドにじりじりと差を付けられ、前半のスコアは3対26。1本でもトライを獲っていたら、もう少し日本に流れがきていたかもしれません。
それでも後半26分にはウイング根塚洸雅選手、29分には途中出場のフルバック山沢拓也選手がトライを獲り、スタンドを沸かせます。ロックのワーナー・ディアンズ選手が乱れたパスを伸ばした左手一本で掴み取り、トライに結び付けたシーンは、これまでの日本には見られないパターンでした。202センチの長身、長いリーチは、日本にとって大きな武器です。経験を積めば、彼はワールドクラスのロックに成長できるでしょう。
この日、キャプテンを務めたフランカーのリーチマイケル選手は、試合後、こう語りました。
「結果は悔しいですが、この経験が必ず自分たちの財産になる。若い選手もどんどん出てきて、イングランドというトップ中のトップと(互角に)やれたところもたくさんあった。必ずこのチームは強くなる。次の試合に向け、もっといい準備をしたいと思います」
競技こそ違いますが、「超速ラグビー」と重なって見えたのが、加茂周さんがサッカー日本代表監督に就任した際に導入した「ゾーンプレス」です。「クラシックなサッカーはやりたくない。モダンなサッカーに挑戦したい」と常々語っていた加茂さんは、横浜フリューゲルス監督時代に採用したこの戦術を日本代表にも落とし込もうとしました。
元はと言えば、このゾーンプレス、フリューゲルスでコーチをしていたスロベニア人のズデンコ・ベルデニックさんが日本に持ち込んだものですが、それを日本流にアレンジしたのが加茂さんでした。
相手のボールホルダーに対し、数的優位をつくった上で積極的にプレスをかけ、ボールを狩り、手間ひまかけずに攻撃に移行するこの戦術は、体力と持久力、アジリティを選手たちに過度に求めるものでした。
このゾーンプレス、出だしはおもしろいように機能したのですが、それも最初の15分くらいまで。選手たちが疲れてくると、途端に機能しなくなりました。
90分間通して走り回り、相手にプレスをかけ、主導権を握り続ける作業は、「言うは易し、行うは難し」というものでした。
ある主力選手がポツリと言った言葉が忘れられません。
「急だけでは長続きしない。緩があっての急。その緩は自分たちで見つけるしかない」
エディーHCの「超速ラグビー」に話を戻しましょう。試合後、彼は「(精度を上げるには)練習あるのみ」と言いました。その通りでしょう。
とはいえ、「超速」を80分間続けるのは、かなりの難業のようにも思えます。どこかに「緩」を入れないと、せっかくの「急」も生きてはきません。その塩梅が難しく、またおもしろいところです。「超速ラグビー」の進化に期待しましょう。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。