日本ラグビー協会は4日、7人制ラグビー(セブンズ)のパリ五輪男女日本代表内定選手を発表しました。その約2カ月前に、パリ行きの切符を掴んだ“日本代表”が1人います。選手、審判員の“二刀流”で五輪の舞台に立つのは、世界のラグビー史上初です。
その桑井亜乃レフリーは北海道出身で、帯広農業高、中京大学までは円盤投げの選手でした。22歳でラグビー選手に転向すると、身長171センチの恵まれた体躯を武器に主にロックとして活躍しました。五輪では16年リオデジャネイロ大会に出場し、女子日本代表の五輪初トライを記録しました。女子7人制ラグビー日本代表(サクラセブンズ)で通算32キャップ、15人制代表としても1キャップを持っています。
31歳で現役引退後、彼女が新たに挑戦したのはレフリーでした。パリ五輪レフリーを目指し、22年に海外留学、昨年はリーグワンのチーム練習に参加するなどしてレフリング技術を磨いてきました。またセブンズシリーズの女子香港大会、同チャレンジャーシリーズの南アフリカ大会、女子15人制の世界大会WXV3など多くの国際大会でレフリーを務め、転向後わずか3年で今夏のパリ五輪マッチオフィシャルの1人に選ばれました。
<数少ない与えられるチャンスのなか、パフォーマンスを発揮するためには、自身に対し常にプレッシャーをかけ、強い意思やメンタルを持つことが大切だったかと思います。リーグワンのチームに練習参加し、強度やスピードが高い中でトレーニングをし、海外への留学へも挑戦するなど取り組んできた3年でした。心が折れそうになった時もありましたが、たくさんの方々に応援していただいたことで、何度も勇気をもらいました。日々ご支援、ご指導いただいている皆様のおかげでオリンピックの舞台に立つことができます。本当にありがとうございます>(日本ラグビー協会リリース2024年5月8日配信 ※原文ママ)
自身のレフリーとしての強みは何か。彼女は「(元選手だからこそわかる)試合勘」だと言います。
「レフリーとして、サインプレーの時に、ここはショート、ここはクロスと世界のスピードに対応できるのは、選手として国際大会を経験したからです。そこは私の強み。いわゆるフライングダッシュができる。抜け出す前のタイミングで、“ここで抜ける”と思ってスピードを上げるのか、抜けてからスピードを上げるのかでは、ポジショニングに差が出ます。立ち位置をどこにするかなどを含め、私は選手時代の経験、感覚を生かしています」
そして続けます。
「オリンピックの独特の空気感を選手の時に経験できたことは大きいと思います。選手たちはオリンピックという舞台では絶対緊張するもの。その緊張感が伝わってくる中、私自身はブレずに、選手がノンストレスの状態で最大のパフォーマンスを発揮してもらえるようなレフリングを目指しています。だからこそ3年前から言っている『強く、美しく』というところをグラウンド上で表現したいと思います」
桑井レフリーは、転向したばかりの頃に関係者から「ジェスチャーがダサい」と指摘されたことで、「強く、美しく」裁くことを意識するようになりました。
「それで鏡を見ながら、自分自身のジェスチャーをつくっていきました。堂々と見せるために手の向きや、動きを大きくするとか、ゆっくりするとか。他の人がやっていないような独特なジェスチャーをしたりもしました。そういったところも(パリでは)見てもらいたいですね」
桑井レフリーは15日のジャパンセブンズを裁いた後、五輪に選出されたレフリーが参加する合宿地のポルトガルに向かいます。本番まで、あと2週間です。
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