ジャパンはウルグアイ代表とフランス代表とのテストマッチを2勝2敗で終えました。2敗はいずれも2023年W杯のホスト国フランスでした。本番に向け、収穫と課題の見えた夏のシリーズでした。
4試合を終えた翌日の7月10日、藤井雄一郎ナショナルチームディレクターは「若い選手がたくさん試合に出られた。そういう意味ではいいシリーズだったと思う」と総括し、こう続けました。
「選手たちがテストマッチとリーグワンの試合がどれだけ違うかを経験できた。その中で選手がどれだけのパフォーマンスが発揮できるかということも分かりました」
計4試合で代表デビューを飾ったのは15人。昨年(キャップ対象6試合)の10人を上回りました。シリーズ前の時点で1桁キャップ数だった選手を含めれば39人の選手をテストしたことになります。
ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)は「チームとしてはここからステップアップし、しっかり前に進んでいけるんじゃないかと思う」と手応えを口にしました。
このシリーズ、対戦前の時点で世界ランキング3位(7月11日の発表で1位に浮上)のフランスとの2試合は、同10位のジャパンからすれば格好の腕試しの機会でした。今年2月から3月にかけて行われた欧州の強豪6カ国・地域による対抗戦、シックスネーションズをグランドスラム(全勝)で制した際の主力、スクラムハーフのアントワーヌ・デュポン選手、スタンドオフのロマン・ヌタマック選手らを欠くとはいえ、“ぶつかり稽古”にはもってこいの相手です。
7月2日に愛知・豊田スタジアムで行われた第1戦は、前半は互角(13対13)ながら、後半に突き放され、23対42で敗れました。ジャパンはボールをキープし、素早いパス展開から相手を疲れさせる作戦でした。スポーツ専門局ESPNの試合データによれば、パス本数はフランスの113本に対し、ジャパンは206本。しかし、倍近いパスは勝利に直結しませんでした。なぜなら自陣内でのパスが多かったからです。
1週間後の第2戦、ジャパンは初戦の苦い記憶を生かしました。改修後初の代表戦開催となった東京・国立競技場は5万7000人を超える観客が詰めかけました。前半に15対7とリードを奪い、後半31分に逆転を許した後も粘りました。34分には、敵陣左サイドで獲得したラインアウトからナンバーエイトのテビタ・タタフ選手が数人を弾き飛ばし、インゴールに飛び込みました。レフリーは一度トライと判定したものの、TMO(ビデオ判定)の結果、ノックオン。結局、15対20でノーサイド。届きそうで届かなかった歴史的勝利。キャプテンの坂手淳史選手は「最後は遂行力。もう一歩、その一歩がすごく大きいと感じました」と残念そうに語りました。
フランスとの第2戦、ジャパンのボール支配率は54%(第1戦は58%)、パス本数は151。しかし、自陣でパスを回し続けた第1戦と違い、第2戦では効果的にキックとパスを使い分けました。
美しかったのは前半40分、オフロードパスを織り交ぜ、スクラムハーフ齋藤直人選手、スタンドオフ李承信選手、フルバック山中亮平選手、フッカー坂手淳史選手、センター中野将伍選手、坂手選手、フランカーのリーチ・マイケル選手、山中選手とのべ8人が狭い空間でボールをつないだトライです。“シャンパンラグビー”のお株を奪うようなトライについて、リーチ選手は「攻撃のスイッチを入れるようなアタックはジャパンが目指すかたち」と振り返りました。
それでも勝ち切れなかったのは、先述したようにトライをとれる場面で、確実にとり切れなかったことに尽きます。「善戦」と「金星」は紙一重ですが、実はその間には、何枚、いや何十枚もの紙が重なっているのです。悔しい敗北により、「紙一重」の意味を理解できたことがW杯1年前の最大の収穫だったと言えるかもしれません。「残念すぎる負けでしたが負けは負け。まだ強くなります」。長谷川慎アシスタントコーチの言葉がすべてを物語っていました。
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