2月に開幕した最後のトップリーグ(TL)も、いよいよ大詰めです。16日、日本選手権準決勝を兼ねたTLプレーオフ準決勝は、サントリーサンゴリアスがクボタスピアーズを26対9で下しました。23日の決勝は、サントリーが3季ぶりの2冠をかけ、パナソニックワイルドナイツと対戦します。
試合は前半8分、ウイングのゲラード・ファンデンヒーファー選手のPGでクボタが先制しました。対するサントリーは、20分にスタンドオフのボーデン・バレット選手が約40メートルのドロップゴールを決めて同点に追いつきました。
その後、互いにPGで点を取り合うと、30分にはバレット選手がPGを成功し、サントリーが9対6と、この日初めてリードを奪いました。
勢い付くサントリーは33分、この日初めてのトライを奪いました。敵陣右のラインアウトからスクラムハーフ流大選手が左へ展開。バレット選手、センター中村亮土選手、そしてフルバック尾﨑晟也選手へとパスがつながります。最後は左サイドでボールを持ったウイング江見翔太選手が、トライを阻もうとするクボタディフェンス陣を振り切り、インゴール左に飛び込みました。
前半はサントリーの14対6。後半もサントリーの試合巧者ぶりが目立ちました。敵陣で相手のペナルティーを誘うと、ショット(PG)を選択。バレット選手のPGで着実に得点を重ね、クボタを突き放します。終わってみれば26対9の完勝でした。
準々決勝で優勝候補の神戸製鋼コベルコスティーラーズを破り、チーム初のTLベスト4入りを果たしたクボタでしたが、この日はサントリーに持ち味を封じられました。試合後、フラン・ルディケヘッドコーチ(HC)は「クボタスタイルを出せなかった」と言い、こう続けました。
「我々はボールをキープすることができなかった。サントリーはキックに集中し、うまくプレーして勝負に結びつけた。戦術面のところで相手がうまかった」
クボタは南アフリカ代表フッカーのマルコム・マークス選手、日本代表フランカーのピーター・ラピース・ラブフスカフニ選手ら強力なFW陣が攻守の要です。ボールを保持してじっくりと攻めながら相手に圧力をかけていくスタイルで、ここまで勝ち上がってきました。準々決勝の神戸製鋼戦では、試合の半分以上を1人少ない状態で戦いながら、相手を上回るボールキープ力で数的不利を全く感じさせませんでした。
ルディケHCは「クボタスタイルを出せなかった」と語りましたが、別の言い方をすれば「クボタスタイルを出させなかった」サントリーの戦いぶりに一日の長があったということでしょう。
サントリーの狙いは前半から明確でした。開始早々の2分、バレット選手が自陣から空いたスペースに蹴り込みました。ボールを拾ったクボタにプレッシャーをかけ、ペナルティーを誘うと、流選手がクイックスタート。そのまま裏のスペースに蹴り込み、自らボールを追いかけました。相手は外に蹴り出し、サントリーボールのラインアウト。序盤からエリアマネジメントで優位に立ちました。
キャプテンの中村選手は試合後、キックを多用した狙いを、こう説明しました。
「クボタさんはいいディフェンスをするチーム。簡単にはゲインできないと思っていた。キックを蹴ってアンストラクチャーをつくり、自分たちのゲームに持っていこうと考えていました」
“アグレッシブ・アタッキング・ラグビー”を掲げるサントリーは、パス、ラン、キックを自在に操る多彩な攻撃パターンが持ち味です。今季のリーグ戦は7戦全勝。計60トライはリーグトップです。プレーオフトーナメント2回戦ではNECグリーンロケッツ相手に11トライで76得点をあげ、大勝しました。
クボタ戦ではバレット選手、流選手、中村選手らが多彩なキックを蹴り分け、フィジカル勝負に持ち込みたい相手を翻弄しました。クボタが得意とするラインアウトからのモールで押し込む攻撃に対しては、激しいプレッシャーをかけ、クリーンキャッチを許しませんでした。「ラインアウトからリズムを与えないようにプレッシャーをかけるプランだった」とミルトン・ヘイグ監督。フランカーの小澤直輝選手も「チームメート全員で準備した結果」と胸を張りました。
押してよし、引いてよし。相手に合わせてどのような“相撲”でもとれるサントリーには横綱の風格が漂います。かつて大横綱の大鵬には「型がない」と言われました。しかし、私に言わせれば大鵬は相手に合わせて、どんな相撲でもとることができました。すなわち無数の型があったため、「型がない」ように見えただけなのです。クボタのここまでの奮闘は称えられてしかるべきですが、サントリーとの間には点差以上の実力差があったように感じられました。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。