全国大学ラグビー選手権準決勝第二試合は、関東大学対抗戦Aグループを制した帝京大学が関西大学Aリーグ王者の京都産業大学を37対30で破りました。4年ぶりの大学日本一をかけ、9日に東海大学(関東大学リーグ1部1位)を39対24で下した明治大学(関東大学対抗戦Aグループ3位)と戦います。
逆転勝利の立役者は、後半20分から投入された背番号18の主将、プロップ細木康太郎選手でした。
20対30と10点差を追いかける場面、敵陣でマイボールスクラムを獲得すると、帝京大・岩出雅之監督はプロップ奥野翔太選手に代え、細木選手を送り出しました。昨年11月の明治大戦で負傷し、この日が1カ月半ぶりの復帰戦。岩出監督の意図はこうでした。
「本人は『10分から15分出たい』と言っていましたが、できれば残り5分で使いたいと考えていました。ただクロスゲームになっていたので、ここが一番の分かれ道だろうと……」
細木選手は、残り20分での10点差をどう考えていたのでしょう。
「バックスから『ペナルティーを獲ってくれ』とコールがありましたし、FWも『ここでペナルティーを獲ろう』と声を掛けてくれた。グラウンドに入り、その言葉によってもう一段階ギアが上がり、スクラムに集中できました」
細木選手が入って以降、それまでほぼ互角だったスクラムで、帝京大が優位に立つようになりました。
24分には、スクラムで押し勝ったことで生まれたスペースを突き、スクラムハーフの李錦寿選手がトライをあげました。スタンドオフ高本幹也選手のコンバージョンキックも決まり、これで3点差です。
その後も帝京大FW陣は圧力をかけ続けます。32分、京産大がコラプシングの反則を犯し、高本選手がPGを決め、30対30の同点に。さらに34分、京産大が反則を繰り返したため、レフリーがシンビンを科しました。直後の38分、ウイングのミティエリ・ツイナカウヴァドラ選手がインゴール右隅にトライ、高本選手のコンバージョンキックも決まり勝ち越しました。これで7点差。残り時間はボールをキープしながら、試合終了を待ちました。ホーンが鳴った直後、高本選手がボールを外へと蹴り出し、37対30でノーサイド。4年ぶりの大学選手権決勝進出を果たしました。
細木選手の投入が、帝京大にとってどれほど大きかったか。それは後輩たちの以下のコメントからも明らかです。
「1年間を通し、チームの先頭に立ち続けてくれた。試合に出てきた時はすごく安心感がありました」(ナンバーエイト奥井章仁選手)
「細木さんが試合に入ってきてくれて“スクラムはいける”と思い、スクラムを中心に相手を崩していくプランに変えました」(高本選手)
帝京大の主将は例年、新チームの最上級生による話し合いで決められます。基本的に監督はそれを承認するだけです。
「副将の上山(黎哉)、押川(敦治)もいいキャプテンになれたと思います。でも細木には、彼らとは違う、勝利に対するストレートな思いを一番持っている。それを皆に強く訴えて、鼓舞しながら引っ張っていく力がある。それがさらに皆の力になる。そういうことを期待して、僕も賛同しましたし、彼自身もその通りにやってくれている」とは岩出監督です。
同じポジションのレギュラーを争う奥野選手も細木選手を推したと言います。
「彼がキャプテンになったら自分が試合に出る機会は減るかもしれない。しかし、もしそうなったとしても、細木がキャプテンになることに魅力を感じました。僕がいいなと思うのは、細木が“勝つ”という気持ちを前面に出していること。それによって僕自身も熱くなって試合に臨むことができます」
最後にもう一度、細木選手のコメントを紹介しましょう。
「今年1年勝ちにこだわってきた。僕が試合に出る出ないに関わらずグラウンドに立っている選手が最後必ず勝つというところを皆に求めてきました。僕自身もそれを体現しようと思い、常に皆に問いかけ、自分自身もやってきたつもりです」
そう語る細木選手の目は、4年ぶりの大学日本一に向いています。
ところで帝京大と明治大との頂上決戦は4年ぶり2回目。前回は帝京大が最大13点差をひっくり返し、21対20で勝利しています。帝京大が返り討ちにするか、明治大がリベンジを果たすか。手に汗握る熱戦に期待しましょう。
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