父親から素晴らしいDNAを受け継いだのでしょう。さる8月27日、10月のW杯ニュージーランド大会前国内最後のテストマッチで、15人制日本女子代表(サクラフィフティーン)はアイルランド代表を29対10で撃破しました。アイルランド戦初白星の立役者は2トライをあげたフルバックの松田凛日選手でした。
凛日と書いて「りんか」と読みます。日本体育大学3年生の凛日選手は身長170センチ、体重75キロと恵まれた体躯の持ち主です。セブンズ(7人制ラグビー)では東京五輪日本代表に内定するも直前のケガで本大会出場はなりませんでした。15人制でのポジションはウイング、センター、フルバックをこなすユーティリティバックス。スピードとパワーを兼ね備えたランが持ち味です。
周知のとおり、父は日本を代表する名フルバックの努さん。W杯メンバーに1991年の第2回大会から4大会連続で選ばれ、通算43キャップを記録。東芝府中(現・東芝ブレイブルーパス東京)の日本選手権3連覇(96~98年度)にも貢献しました。
私が松田さんのプレーを初めて観たのは彼が関東学院大学1年生の時ですが、まるで野生児のようでした。速い上に強く、しかも馬力がある。風に揺れる後ろ髪が、存在感を際立たせていました。
余談ですがサッカー元日本代表の岡野雅行さんのプレーを初めて観た時、「サッカー界の松田か!?」と思ったものです。岡野さんのニックネームは“野人”でしたが、競技こそ違えど、松田さんのプレーに重なるところがありました。
凛日選手に話を戻しましょう。27日のアイルランド戦後、報道陣に「お父さんのプレーに似ていますが、映像などでイメージはありますか?」と聞かれると、「父のプレーはちゃんと観たことがないんです。遺伝ですね」と笑顔で答えました。
ともあれ彼女のプレーを振り返りましょう。5対5の前半34分、敵陣でスタンドオフ大塚朱紗選手のパスを受けるや向かってくる相手を弾き飛ばし、インゴール右中間に飛び込みました。また体を張った守備でもチームへの献身が光りました。
圧巻は後半15分のプレーです。センター古田真菜選手からのパスはワンバウンドに。一度スピードを緩めた状態からのアタックだったにもかかわらず、45メートル以上を独走しました。アイルランド守備陣も、ただ指をくわえて見ていたわけではありません。最初の追撃を右手で制し、2度目は鋭いステップでかわしました。「抜けた時の歓声は今まで感じたことがないものでした」と本人は満足そうに振り返りました。
試合後の記者会見。サクラフィフティーンのレスリー・マッケンジーヘッドコーチは「ホントニ、オモロカッタ。スゴク、ワクワクスルセンシュ」と日本語で褒めました。「これからの成長が楽しみ」とも。「どこがオモロカッタ?」との問いには、こう答えました。
「セブンズを経験していたこともあって、バックフィールドをカバーできる能力が高い。アイルランドはキッキングゲームが強い。そこに対しても、スピードを生かしてうまく動いていてくれるところが“オモロイ”」
セブンズの経験が15人制で彼女の強みになっていることは本人も認めるところです。
「大きなスペースで相手と1対1の場面で止めるというのは、セブンズでトレーニングしてきた。その部分が(15人制のプレーに)生きていると思います」
さて凛日選手、15人制とセブンズ、どちらの道を選ぶのでしょうか。「自分の中では“オリンピックに出たい”という気持ちが強い。次のオリンピックに向けて15人制を経験してからオリンピックを目指しても間に合うと思った。違うことを経験した方がラグビー選手として、もっと成長できると思ったから15人制にチャレンジしました」。彼女が描くのは「ニュージーランド経由パリ行きの道」。W杯ニュージーランド大会は10月に始まります。その場所に彼女の姿はあるのでしょうか……。
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