W杯日本大会の前哨戦となるパシフィックネーションズカップが7月27日に開幕します。それに向けた宮崎合宿が今月9日からスタートします。W杯本番まであと3カ月――。生き残りをかけたサバイバルレースが続きます。
7月末にスタートするパシフィックネーションズカップには、日本、カナダ、サモア、フィジー、アメリカ、トンガの6カ国が参加します。いわばティア2の「環太平洋王者」を決める戦いです。ジャパンはこの大会に向け、宮崎合宿を3段階に分けて行います。
ジェイミー・ジョセフHCは3日に行われた記者会見で、「私の仕事は9月20日に開幕するW杯でチームを勝たせること」と説明しました。つまりW杯から“逆算方式”で選手を戦士に変える方針のようです。
南アフリカを撃破するなど3勝をあげた2015年W杯イングランド大会でも、本番前のキャンプ地は宮崎でした。
本番1年前までキャプテンを務めた廣瀬俊朗さんは「6月の合宿が一番きつかった」と言います。最大の理由は「試合がなかったこと」です。4、5月はアジアラグビーチャンピオンシップ、7月はパシフィックネーションズカップ、8月は強化試合とテストマッチが組まれていました。しかし6月の試合スケジュールだけは白紙でした。
「試合はお客さんの前でプレーできる楽しみがあり、僕らもリズムを変えられる。ところが6月は練習だけ。それも地獄の合宿でした」
合宿中のスケジュールは以下のようなものでした。朝5時から5時半の間に起床し、6時から1時間ほどトレーニングをします。7時に朝食をとり、8時から10時まではスリープ(休息・休憩)。10時半から12時頃までグラウンドで練習を行い、終了後は昼食をとり、13時から15時まで、またスリープ。その後、15時半から夕方の練習です。時には“4部練習”の日もありました。まさに練習漬けです。
廣瀬さんによれば、合宿中は、ただただホテルとグラウンドの往復でした。ハードな練習に加え、エディー・ジョーンズHCから「理不尽なカミナリ」を落とされることも、しばしばでした。
「6月は精神的にも相当追い込まれました。エディーさんは、その中でも前を向ける選手をピックアップしたかったんだと思います」
地獄の中にもオアシスはありました。こんなこぼれ話を披露してくれたのは当時のメンバー大野均選手です。
「楽しみは食事ぐらいしかありませんでした。食事はビュッフェスタイル。(堀江)翔太がパンにいろいろな食材を組み合わせて、めちゃくちゃ美味しいホットサンドを作ってくれた。それを僕も真似して作ってみたら、すごく美味しかった。そのおかげで、宮崎合宿に楽しみができました。合宿後、翔太にお礼を言ったことを覚えています」
ジェイミー・ジャパンに話を戻しましょう。9日から15日にかけて実施するW杯イヤー恒例の宮崎合宿の目的をジェイミーHCは「チームとして改めてつながる。そして、いちからつくり直し、鍛えたい」と話していました。
「理不尽」な要求の多かった前任者に比べると「常識人」のジェイミーHCですが、選手たちに「ハードワーク」を求める点は共通しています。
昨年10月の合宿では新型のGPSと心拍計を取り入れ、練習中、12項目に及ぶフィジカルデータを計測しました。疲れた状態でいかに動けるか、それを選手たちに求めたのです。
本番まであと3カ月。ケガのリスクを恐れ、一部には「あまり追い込むのはどうか」との懐疑的な意見もあるようですが、“地獄”からの生還者の意見は概ね肯定的です。
たとえば、大野選手は、こう語りました。
「どうすればチームはひとつになれるのか。それはきつい練習をチーム全員で経験し、その記憶を共有することです。前回のイングランド大会がそうでした。最終スコッドに入れなかった選手までもが、最後まで気持ちをひとつにすることができたのは、エディーさんの下、全員がきつい時間を共有したからだと思っています。ラグビーは理論や戦略だけで語れるものではありません。前回も宮崎でのきつい練習を通して、“これだけきつい思いを共有したんだ。誰が選ばれても、俺は認める”と納得することができました。あの宮崎ではじめてエディー・ジャパンは真のワンチームになれたんです」
なるほど「結束」とはともに“地獄”を見た者にしか共有できない、非科学の力なのかもしれません。
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