サッカーJリーグとバスケットボールBリーグ創設に尽力した日本トップリーグ連携機構会長の川淵三郎さんは、先月19日にさいたま市で行われた「スポーツビジネスジャパン2019」内のパネルディスカッションに出席し、ラグビーのプロ化を推進する清宮克幸さんにエールを送りました。
時に「ワンマン」「独裁者」とも呼ばれた川淵さんですが、その強力なリーダーシップは誰もが認めるところです。川淵さん自身も、「独裁者」という呼び方を気にいっています。
「大きな改革をしようとしたり、何かモノを決める時には、独裁じゃなきゃ何もできない。だから、僕はこうと決めたら絶対に譲りませんでした」
私見を述べれば、日本のスポーツ界は川淵さんの出現以前と以降に分けられます。川淵さんの出現前は学校と企業がスポーツの主役でしたが、「地域密着」を理念に掲げて船出したJリーグの成功により、以降は行政、地域住民、企業による三位一体型が主流となりました。
「理念がなければ、何をやっても成功しない」
それが川淵さんの持論ですが、地域密着を打ち出した理由を、川淵さんはこう語っています。
「クラブが一企業だけの持ち物だったら、その企業が倒産したら、クラブまで潰れてしまう。これでは何のためのクラブかわからない。そうならないためにも、なるべく複数の企業に入ってもらい、行政にも力を貸してもらう。市民、行政、企業の三位一体。Jクラブは単なる営利団体としてではなく、地域社会に貢献する法人という認識が必要だ」
とはいえ、改革に抵抗はつきものです。川淵さんが主導するプロ化に対し、「時期尚早」「前例がない」との批判が相次ぎました。
それに対する川淵さんの答えはこうでした。
「時期尚早と言う人間は100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は200年経っても前例がないと言う」
為せば成る
為さねば成らぬ何事も
成らぬは人の為さぬなりけり
以上は米沢藩の財政を再建した第9代米沢藩主・上杉鷹山の名言ですが、川淵さんも同じ気持ちだったに違いありません。
さて、2021年秋のプロ化を目指すラグビー界の状況はどうでしょう。先月19日のパネルディスカッションで、日本ラグビーフットボール協会の清宮副会長は「理事会で総論は賛成なんです。しかし、“プロ化は必要だ。でもやり方があるよね”というイメージ。今は指摘してもらったところを固め直している段階です」と進捗状況を語りました。
遅々として進まぬ現状に「個人的にはかなり不満です。こんなスピードで本当にプロ化できるのか」と口にする清宮副会長に対し、川淵さんはこうエールを送りました。
「清宮副会長と境田さんがいれば、大丈夫だと思います。僕も可能な限りはサポートしたい」
川淵さんの言う境田さんとは、清宮副会長とリーグのプロ化を進めている境田正樹協会理事のことです。弁護士でもある境田理事は、川淵さんとともにBリーグの立ち上げに貢献した功労者のひとりです。2人をよく知る境田理事は、清宮副会長と川淵さんに、ある共通点を感じたと言います。
「私は今回、清宮さんとW杯日本大会期間中に世界各国の協会やスポンサーの方たちと話をしたんです。それにより、スポーツビジネスを成功させるためには優れたリーダーが必要だと感じました。清宮さんにはリーダーとしてのセンスがあり、川淵さんと同じ“こういうリーダーがいると勝てるんじゃないか”と思わせてくれる人物。今回のW杯日本大会を終え、“清宮さんが中心にいれば大丈夫だ”と確信しました」
陰からラグビーのプロ化を支える川淵さん、さらに清宮副会長にこう発破をかけました。
「“絶対に成功しなければならない”という強い信念を持ってやるということが大事です。気心が知れた仲でも、最後のところで反対する人は結構出てくるもの。それを強い気持ちで突破していくんです」
そして、こう続けました。
「分かり合える人ばかりではうまくいかないこともある。だから異質な人を入れることも、改革には絶対必要。外部から冷静な目で見ている人が入ってくると、ガラッと変わることがありますからね」
プロ化はこれからが正念場です。
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