ジャパンの旅はベスト8で終わりました。ベスト4をかけた南アフリカとの準々決勝はスコアの上では3対26と完敗でした。明暗を分けたのはラインアウトでした。
W杯前のテストマッチでは7対41で敗れているとはいえ、南アフリカはニュージーランドと比べれば、まだ勝ち目のあるチームのように思われました。2015年イングランド大会でのジャイアントキリングの余韻は、まだ消えていません。
4年前、エディー・ジョーンズHC(現イングランドHC)は何をやったか。当欄でも何度か紹介しましたが、担当するレフェリーのクセまで分析したそうです。
「ジャパンが南アフリカを細かく分析していたのに対し、南アフリカはジャパンの分析をほとんどしていなかった。“日本は強いからもっと分析した方がいいぞ”と日本のチームに所属していた選手はチームに進言したそうですが、彼らがそこにフォーカスすることはありませんでした」(元ジャパン・大野均選手)
だが、今回の南アフリカは違いました。ジャパンを強豪国と見なした上でしっかりと分析し、ウイークポイントを徹底的に狙ってきました。
そのひとつがボールの差配役であるスクラムハーフ流大選手とスタンドオフ田村優選手への集中攻撃です。ボールの供給網を遮断しようとしたのです。またジャパンが得意とするサインプレーも不発に終わりました。ウイングの松島幸太朗選手は試合後、「サインプレーを読まれていたようで、自分たちのテンポに持っていけなかった」と語りました。
セットプレーも同様です。ジャパンのマイボールラインアウトは13回ありましたが、成功したのは8回。1次リーグでは90%を超えていた成功率が、62%にまで落ちました。攻撃の起点となるセットプレーで、ことごとく敵にボールを奪われていたのでは、劣勢ははね返せません。スローワーのフッカー堀江翔太選手は「南アフリカは高かった。プラン通りに投げたところに人がいた」と肩を落としていました。
翻って南アフリカは10回のマイボールラインアウトを全て成功させました。1次リーグからのマイボールラインアウト成功率は脅威の100%です。そこで調べてみると、出場した身長2メートル以上の選手はエベン・エツベス選手、ルード・デヤハー選手、ピーターステフ・デュトイ選手、RGスナイマン選手と4人もいました。まさに“緑の壁”です。
後半26分にはラインアウトからのドライビングモールに蹂躙され、決定的とも言えるトライを奪われました。コンバージョンキックも決まり、3対21。この時点で試合の興味は「日本も一矢(トライ)報いて欲しい」に変わりました。
ラインアウトの巧拙は身長が全てではありません。とはいえ、低いよりは高い方が有利に決まっています。日本にも190センチ台の選手は何人かいましたが、マイボールの状態でも“制空権”を握ることはできませんでした。
ベスト8までの道のりを振り返ると、スクラムの健闘が目立ちました。長谷川慎コーチが設計した「力を漏らさない」スクラムは世界の強豪相手にも十分、通用することを証明しました。
地上戦の弱さは克服したとして、残る課題は空中戦です。4年に1度巡りくるW杯において、ベスト8以上の結果を出し続けるには、制空権を握る人材の育成と工夫が求められます。
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