これで通算成績は8戦全敗。まさに「オールブラックス」(全て黒星)です。さる10月26日、6万57人の大観衆を集めて行われた神奈川・日産スタジアムでのニュージーランド代表(オールブラックス・世界ランキング3位)対日本代表(同14位)戦は、序盤こそ見せ場をつくったものの、終わってみれば19対64の大敗。またしても「王国」の厚い壁に阻まれました。
先制したのは日本です。前半5分、ウイングのジョネ・ナイカブラ選手がスクラムハーフの藤原忍選手との見事なコンビネーションで抜け出し、2人を置き去りにしてインゴールに飛び込みました。オールブラックスに先制したのは、8回目の対戦にして初めてのことでした。
惜しかったのは、前半22分の“幻のトライ”です。目の前にこぼれきたボールを大きく前に蹴り出したロックのワーナー・ディアンズ選手は、大きなストライドで約60メートルを走り切りました。
トライと認定されれば、日本が17対14で逆転、スタジアムはこの日一番の盛り上がりを見せました。
しかし、TMOの結果、直前にノックオンがあったと判定され、トライは取り消されてしまいました。勝負事に“たら・れば”は禁句ですが、このトライが決まっていれば、いずれ逆転されたにしても、もう少し競った時間帯が続いていたかもしれません。
10月17日配信号でも触れたように、日本代表を率いるエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は「60分まで接戦に持ち込めば、その後はどうなるかわからない」と語っていました。
ディアンズ選手が2メートル2センチの長身をインゴールに投げ出した瞬間、このエディーHCの言葉が頭をよぎりました。
しかし、日本が望んだ展開にはなりませんでした。再開後の22分、センターのビリー・プロクター選手にトライを奪われ、スコアは日本の12対19。そこから、さらに点差を広げられ、あとは“どれだけ善戦できるか”にテーマは移りました。
オールブラックスは多くの主力選手を欠いていたとはいえ、格下相手でも攻撃の手を緩めません。日本のミスを確実に突き、ボールを手にすると約70メートルのピッチの横幅を最大限使って攻めてきました。オールブラックスの多彩で勇猛なアタックには、ラグビーの魅力がぎっしり詰まっていました。
敗戦後、エディーHCは“幻のトライ”について聞かれ、こう語りました。
「トライが認められなかったことでチームは落胆してしまった。残念ながら経験というものは、繰り返すことでしか得られないし、感情のコントロールは教えるのが難しい。だから、今日学んだことを忘れずに、次に同じことが起こったとき、コントロールできない時間が20分から、15分になるかもしれない。次に同じことが起こったときには10分になり、そうやって徐々に進化していく。チームを一つにまとめて試合をするには通常3年かかる」
悔しい思いをしたのは、ディアンズ選手だけではありません。チーム最年少20歳のフルバック矢崎由高選手は「スコアボードを見て、世界との差を感じた。自分としてもチームに与えられた影響はすごく少なかった。その悔しさが巡ってきました」と言って唇を噛みました。
後半28分、ハーフウェイライン付近でパスを受けた矢崎選手は右のタッチライン際を駆け抜けました。
そこへ黒い影。東京サントリーサンゴリアスでもプレーしたオールブラックスのスタンドオフ、ダミアン・マッケンジー選手にタックルを見舞われ、ボールを失ってしまったのです。あと5メートル。近くて遠いインゴールでした。
「あそこで(トライを)取り切れないのが自分の現状だと痛感した。でも、終わったこと。これから前を向いてレベルアップしていくしかない。次に同じような状況がきた時には、必ず取り切れる選手になっていかないと、僕がジャパンで生きる道はない」
来月は欧州シリーズ。日本はフランス代表(世界ランキング4位)、ウルグアイ代表(同17位)、イングランド代表(同5位)と戦います。実りの秋にしたいものです。
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