リーグワンの各クラブは2024-25シーズンに向け、補強に余念がありません。前シーズン10位に終わったリコーブラックラムズ東京は、スクラムハーフのTJ・ペレナラ選手(ニュージーランド代表83キャップ=2024年8月21日現在)、フランカーのリアム・ギル選手(オーストラリア代表15キャップ)を獲得したことに加え、新ヘッドコーチ(HC)にニュージーランド出身のタンバイ・マットソン氏の就任を発表しました。そこで今回は「トップ4入り」を目指すブラックラムズの西辻勤ゼネラルマネジャー(GM)に話を聞きました。
――来季に向け、HCが変わり、チームは新体制となりました。
西辻勤: 直近のシーズンで結果が出ていないということでチームには変化が必要だと考えました。ピーター(・ヒューワットHC)の後任を探す上で、3つのポイントを重視しました。
――その3つとは?
西辻: まず1つはラグビーナレッジが高いこと。数人に絞った各候補者に対し、23-24シーズンのブラックラムズのレビューをお願いしました。その中でタンバイが一番クリアで、分かりやすく課題を指摘してきた。また彼には、いくつかのクラブでHC経験があることも採用の理由でした。
――残りの2つは?
西辻: 2つ目は育成面での指導力。ブラックラムズには若くていい選手がたくさんいる。だが、その才能をまだうまく活用できていない。だからHC候補者には、選手を育てる意識があるのかどうかも重視しました。そして最後のポイントが人間性です。
――その3点を満たしたのがマットソン新HCだったと?
西辻: そうですね。意欲を含めて彼が飛び抜けていました。彼には日本での経験がアドバンテージとしてあります。2001年から約5シーズン、選手やコーチとしてヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)に在籍していました。我々とオンラインミーティングをした際には、日本語で自己紹介をしたことも好印象でした。
――新HCがチームに合流してから1カ月が経ちました。
西辻: 彼は契約が決まってすぐ来日の予定を立て、7月に始動したデベロップメント(チーム在籍4年以内で、公式戦出場試合数の少ないメンバー)のトレーニングに参加しました。「この時期はデベロップメントのメンバーにしっかりと目を向けられる」と言っていました。
――行動派のHCなんですね。
西辻: はい。彼の意欲の高さはオフの日にも表れています。彼の要望で菅平に泊りがけでリクルーターと一緒に大学生の試合を観に行きました。さらに言えば「名刺を早くつくりたい」とも。理由を聞くと「砧グラウンドの近所の人に挨拶して回りたいから」と答えたんです。
――地域の人とのつながりを大切にしたいということでしょうか?
西辻: そうですね。彼はオープンマインドなので、「砧グラウンドでコーチングセミナーをやろう」と提案してくれました。また菅平合宿で出会った高校生から「見学に行きたいです」と言われた際には「見学じゃなくて練習に入れ」と、実際にトレーニングに参加させました。
――改めて新HCに求めることは?
西辻: 短期的には目に見える結果も大切です。ただ私が求めているのは、中長期的なこと。ブラックラムズにウイニングカルチャーを構築し、常勝チームにすること。昨シーズンを振り返ると、チャンスで得点を取り切れなかった。敵陣深くに入って得点を奪う確率がリーグで10番目に低かった。何が足りなかったかと言えば、選手たちのハイプレッシャー時の正しい判断とスキル、それは自信や経験、日々の積み重ねです。劣勢時にどのように難局を切り抜けるのか、冷静さやリーダーシップが必要です。そういった課題を克服するために、タンバイは「僕らにできることは選手にプレッシャーを掛けること」と言って厳しい指導を予告しています。
――このオフに獲得を発表したペレナラ選手とギル選手については?
西辻: 新シーズンに向けての選手獲得は、この2人だけと考えています。チームにいい選手がたくさんいると思っていますから。勝てない原因を考えると、接戦をモノにできなかったことに尽きる。先ほどあげたチームに足りない部分を補うために必要なリーダーとしてペレナラとギルを獲得しました。
――ペレナラ選手はNTTドコモレッドハリケーンズ(現・レッドハリケーンズ大阪)に加入した20-21シーズン、チームをプレーオフトーナメントのベスト8進出に導きました。
西辻: もちろん彼のパフォーマンスに期待する部分もありますが、私はペレナラが入ることによって同じポジションの選手を含め、チームのみんなが成長することに期待しています。彼らと一緒にブラックラムズを次のステージに持っていきたい。ペレナラとは中長期的な視点から3年契約を結びました。ギルに期待することも同様です。代表キャップは15かもしれませんが、スーパーラグビーやフランスのトップ14でプレーした経験豊富な選手。彼の身体を張るプレーは若手にも大いに参考になると考え、複数年契約を結びました。
――最後に新シーズンの目標を?
西辻: チームのDNAとして、元来の泥臭さやひた向きさには引き続きこだわっていきたい。それが勝つための最低条件と考えています。結果で言えば、少なくともプレーオフに進むことです。中長期的には、今から4年以内のリーグ優勝が目標。そして観客がたくさん集まるチームにしたい。人気も実力も兼ね備えたチームを目指しています。
<西辻勤(にしつじ・つとむ)プロフィール>
1979年8月14日、奈良県生まれ。現役時代のポジションはウイング。高校からラグビーを始める。御所工業高(現・御所実業高)を経て、98年に早稲田大学入学。俊足を生かしたランを武器に1年からベンチ入り。4年時には副将として全国大学選手権準優勝を経験。卒業後の2002年、リコー(現・リコーブラックラムズ東京)に入社。7シーズンプレーし、現役引退。2年間の社業に専念した後、ラグビー部に復帰。普及・採用担当、アシスタントゼネラルマネージャーを経て、20年からゼネラルマネジャーを務めている。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。