さる4月7日、東京・秩父宮ラグビー場で行われたリーグワン・ディビジョン1第14節は、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)がコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)を25対17で下しました。東京SGは勝ち点を51に積み上げ、3位をキープ。プレーオフ進出に向け、一歩前進しました。一方、敗れた神戸Sは9位のまま。この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選出されたのはウイングのテビタ・リー選手でした。
この日の秩父宮ラグビー場は、強い風と時折、激しくピッチを叩く雨による「ラグビーをするには難しい」(東京SG田中澄憲監督)ピッチコンディション。試合前から、ミスが案じられました。
最初にミスを犯したのは東京SGのリー選手でした。11分、相手が蹴り込んできたボールの処理にもたつきノックオン。スクラムから神戸Sにトライを許しました。
リー選手は、ニュージーランド出身の28歳。身長182センチ、体重95キロ。加入4季目となる今季は4トライ(第14節終了時点)にとどまっていますが、トップリーグの最終シーズン(2020-21)では最多トライゲッター賞に輝くなど、スピードと高い決定力を兼ね備えたウィンガーです。
リー選手の受難は続きます。29分、ウイングのアタアタ・モエアキオラ選手にかわされ、2本目のトライを奪われました。これで5対12。拳でピッチを叩いて悔しがりましたが、後の祭りです。失態続きのリー選手は前半終了間際にもノックオンの反則を犯しました。
ハーフタイム、ハドルで意気消沈のリー選手を共同主将の堀越康介選手が励まします。「大丈夫だよ」と声をかけたそうです。
これで気持ちを切り替えることができたのでしょうか。後半に入り、リー選手の動きが、俄然良くなります。開始早々、キックオフボールをキャッチしたロックのジェラード・カウリートゥイオティ選手に猛然と襲い掛かります。そのまま押し倒すと、相手はたまらずオフサイドの反則。スタンドオフのアーロン・クルーデン選手がPGを決め15対14。
流れを変えたビッグタックルについて、田中監督は「前半のミスをどう取り返すか彼も必死だったと思う。そういうプレーが大事。誰でもミスはあるので、それをどう取り返すか。彼の態度は非常に良かった」と高く評価していました。
さらに15分、クルーデン選手のパスを受けたリー選手は、フッカー王鏡聞選手のタックルをかわし、3人を置き去りにします。約25メートルの独走トライで20対14。コンバージョンキックも決まり、東京SGは22対14とリードを広げました。
その後は両チームがPGを1本ずつ追加し、結局、試合は25対17でノーサイド。東京SGは今季11勝目をあげました。
後半、好プレーを連発したリー選手は、この試合のPOMにも選ばれました。「自分でいいのかな、と正直思いました」とは偽らざる気持ちでしょう。
ラグビーでは前半と後半でプレーの内容が大きく異なることがよくあります。天気に例えて言えば、この日のリー選手は “雨のち晴れ”でした。
ミスは誰にでもあります。それを挽回するには、必要以上に意気込まないことです。平常心を取り戻すきっかけをつくった堀越選手の一言は、キャプテンシーにみちたものでした。
また堀越選手は「後半一発目にあのタックルをしてくれたことで、チームも勢いに乗れた。いつも通りのT(リー選手の愛称)が戻ってきてくれた」とも語っていました。
ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンとはよく言ったものです。
「チームメイトの名の通り、全員が手厚くサポートしてくれて心強かった。起こったことは忘れ、自分のプレーに集中しないといけないと実感した」とリー選手。チームスポーツの原点を思い起こさせてくれた金曜日の夜でした。
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