2年後のW杯フランス大会に向け、ジャパンがそろりと動き出しました。4月12日に代表候補選手52名(28日に2名が追加)が発表され、トップチャレンジリーグ(TCL)近鉄ライナーズのセンター、シオサイア・フィフィタ選手が選ばれました。54名中最年少の22歳に期待が集まります。
代表候補発表後、藤井雄一郎ナショナルチームディレクターは、初選出のフィフィタ選手について、こうコメントしました。
「大学選手権で活躍したし、サンウルブズでも(試合に)出ている。ストレスの中でどれだけできるか。走力があるし、体も大きい。(天理大学では)学年が上がるごとに柔軟になってきたので、そのあたりを代表の中で出せるかどうか」
フィフィタ選手と言えば、今年1月の全国大学選手決勝での活躍が思い出されます。連覇を狙う早稲田大学を55対28とほぼダブルスコアで下し、天理大初の大学日本一に貢献しました。フィフィタ選手はノートライでしたが、4トライを演出。黒衣に徹することで、味方をうまく生かしました。天理大の小松節夫監督は「フィフィタは決勝こそトライがゼロだったが、起点となってパスをつなぐ、いいかたちができた」と称えていました。
この春、天理大を卒業したばかりのフィフィタ選手は、4月にトップリーグ(TL)の下部リーグにあたるTCL近鉄に入団しました。TCLの順位決定戦でデビューを果たし、17日からスタートしたTLプレーオフトーナメントに2試合出場しました。
代表候補選出後の初戦となった1回戦の宗像サニックスブルース戦では先制された後に流れを引き寄せるトライを演出するなど、31対21の勝利に貢献しました。
光ったのは攻撃力です。前半18分、敵陣右サイドでボールを持ち、相手を引き付けてからパス。フランカーのツポウテビタ選手のトライにつなげました。大学選手権決勝での早大戦のように、自らにマークを集め、味方をうまく生かした見事なプレーでした。
殊勲のフィフィタ選手、試合後、代表入りについて、こう語りました。
「アタックだけでは多分入れないと思う。アタックでもディフェンスでもしっかりアピールしたい」
その言葉通り、1週間後にはディフェンス面でも猛アピールしました。2回戦の相手は優勝候補のパナソニックワイルドナイツ。後半10分に見せ場が訪れました。パナソニックのウイング福岡堅樹選手が抜け出し、ディフェンスラインの裏にボールを蹴り込みます。インゴールに迫る福岡選手に負けじと、猛然とボールを追いかけるフィフィタ選手、一足先に追いつき、トライを阻みました。試合は7対54で完敗したものの、フィフィタ選手は随所で存在感を見せつけました。
これで今シーズンの戦いは終了。TLチームとの対戦は2試合のみでしたが、フィフィタ選手には貴重なトライアルになったはずです。
ポジションこそ違いますが、フィフィタ選手は同じトンガ出身のラトゥ志南利さん(旧名シナリ・ラトゥ)を尊敬しています。ジャパンで32キャップを誇るラトゥさんはW杯にも3大会連続で出場しているレジェンドです。
2人が初めて会ったのは、2019年W杯日本大会前のことです。トンガ代表のアドバイザーを務めていたラトゥさんは、練習試合の相手として、日本にいるトンガ人に依頼しました。その中に天理大2年のフィフィタ選手がいたのです。ちなみにフィフィタ選手はラトゥさんのトンガ・カレッジでの後輩にあたります。
フィフィタ選手に初めて会った際のラトゥさんの印象です。
「大学時代の体つきが僕に似てるなって(ラトゥさん185センチ、92キロ、フィフィタ選手187センチ、体重105キロ)。僕は大学も社会人もジャパン(日本代表)もナンバーエイトだったので、そのイメージが強いかもしれないけど、トンガ代表ではセンターをやっていたんです。足も速かった。でもフィフィタの方が僕より速いかな。それに人に強い。前に出る力もあるので、間違いなくジャパンの中心選手になれる逸材だと思いますよ」
フィフィタ選手の今後についても占ってもらいました。
「あれだけの足があればウイングもできると思う。サンウルブズでも経験しているからね。でも、やっぱり彼はセンターの方がいいね。彼の突破を警戒して相手が集まれば、外が手薄になる。それは社会人でもジャパンでも同じこと。無限の可能性を秘めている選手だね」
同胞の大先輩に太鼓判を押された22歳。54名のジャパン候補は、5月24日、35名に絞られます。ラグビーファンのみならずとも目の離せない22歳です。
当コラムの次回更新は5月13日(木)予定です。
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