12月に開幕する2季目のリーグワン。ディビジョン1(D1)の昇格組は三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)と花園近鉄ライナーズ(花園L)の2チームです。花園LがD2優勝で自動昇格を果たしたのに対し、相模原DBは入替戦でD1・10位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(現・浦安D-Rocks)を破り、昇格を決めました。過去、相模原DBはトップリーグを3シーズン経験していますが、リーグ戦はわずか2勝のみです。今回は最高位のリーグで奮闘を誓う相模原DBを紹介します。
相模原DBは1971年創部の新興チームです。トップリーグに昇格した07-08シーズンから現在のチーム名、「三菱重工相模原ダイナボアーズ」となりました。ちなみにダイナボアーズは「ダイナミック」(活動的な)と「ボアー」(イノシシ)の造語です。“猪突猛進”ということでしょうか。チームカラーはホストエリアの神奈川県相模原市のシンボルカラーである緑を採用しています。
戦いの場をD1に移す相模原DBは10日、オーストラリア代表59キャップを誇るスタンドオフ、マット・トゥームア選手の獲得を発表しました。また7月には「チーム強化のために必要だった」(石井晃GM)と、4季チームを率いたグレッグ・クーパーヘッドコーチ(HC)に代え、昨季アシスタントコーチ(ディフェンス)のグレン・ディレーニーさんを昇格させました。石井GMは新HCについて「彼の人間性を評価している。細かく言うと人の話をよく聞くし、対話を大事にする。選手からの信頼も厚い」と語っていました。ディレーニーHCはニュージーランド出身の48歳。イングランド、ニュージーランド、ウェールズでの指導経験があります。日本のトーヨコでプレーした経験もあります。
ディレーニーHCの手腕については、ディフェンス面を担当した昨季のリーグ戦で既に実証済みです。19‐20シーズンはリーグ戦6試合で244失点、20-21シーズンは同7試合で309失点。それが昨季は130失点と大幅に減少しました。1試合平均40点台(19‐20シーズン=40.7点、20‐21シーズン=44.1点)の失点は14.4(1試合中止のため9試合で換算)に改善されました。それについてディレーニーHCは「私が少し教えるたびに100%を信じて実行してくれた。自分が求めていたレベル以上に努力した。自分はベースをつくるだけだった」と選手たちを称えました。では選手たちのHC評はどうでしょう。
「グラックス(ディレーニーHC)は練習前のミーティングで、机の上にボードを置き、アタックやディフェンスを授業のように指導する。それでみんなが共通認識を持てるようになった。クリアな状態でグラウンドに出られているので、迷いなくプレーできているのだと思います」(スクラムハーフ岩村昂太選手)
「教え方が明確。細かいディテールまで教えてくれた。一人ひとりのポテンシャルを引き出す能力を持っている」(ナンバーエイト/フランカーのヘイデン・ベッドウェル=カーティス選手)
新シーズンに向けチームは、「まずは2、3カ月で体をつくり直す」(ディレーニーHC)ことを目標に7月18日に始動しました。その猛練習ぶりは指揮官曰く「(胃の中が逆流して)食べた朝食をもう1度味わいそうな選手もいる」。それだけハードワークだということでしょう。
「毎日乗り切るのに必死」とは昨季バイスキャプテンを務めたプロップ/フッカー細田隼都選手です。そのハードワークの一端をこう明かしします。
「ウエイトトレーニングひとつとってもボリュームも強度もすごく高い。グラウンドでのボールゲームもフィットネストレーニングを兼ねてやっている。それがものすごくきつい」
変わったこともあれば、変わらないものもあります。「それは自分たちのモチベーション」とはディレーニーHC。「応援してくれる会社や相模原のファンに“自分たちの代表”と思ってもらえるチームになること」との思いが、モチベーションを掻き立てます。その一環として昨季はメンバー全員で三菱重工の工場を見学しました。その狙いをディレーニーHCはこう説明しました。
「自分がどういう会社でプレーしているのか、何を代表しているのかを知ることが大事です。三菱重工の社員たちは精度高く、ディテールにこだわってハードワークをして素晴らしいものをつくっている。チーム全員がどういう会社を代表しているかを知ることで、ディテールにこだわり、精度の高いハードワークをするチームを目指すことができる」
スポーツにおいてチームのバックボーンを知り、ロイヤリティ(忠誠心)を芽生えさせることは大事なことです。神戸製鋼(現・コベルコ神戸スティーラーズ)が18-19シーズンに15年ぶりのリーグ優勝、18年ぶりの日本一を果たした時、ウェイン・スミス総監督はレガシー活動と称して、工場や事業所を訪問しました。チームのルーツを知ることが、一体感につながると考えたからです。
サッカーでは元日本代表の内田篤人さんが鹿島アントラーズからシャルケ04に移籍した直後、ヘルメット姿で地下1000メートル以上の鉱山を見学したことが話題になりました。ホームタウンのゲルゼンキルヘンは炭鉱で栄えた街であり、内田さんは鉱夫たちと食事をともにすることもありました。ちなみにシャルケのホームスタジアムでの合言葉は「グリュックアウフ」。「無事に地上へ」という意味です。こうした体験を通じて内田さんはシャルケの一員となっていったのです。同じことは相模原DBの選手たちにも言えるはずです。
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