大詰めを迎えるリーグワン。第14節終了時点までで、ディビジョン1(12チーム)は今年4月に加入した10人のルーキーがデビューしました。日に日に評価を高めているのがNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安のスクラムハーフ飯沼蓮選手です。どんな選手なのでしょう。
身長170センチ、体重72キロ。素早い球出しと、正確なパスが持ち味です。山梨の日川高2年時と3年時に花園に出場し、高校日本代表にも選ばれました。明大では2度の全国大学選手権準優勝(19、21年度)に貢献しました。
飯沼選手はラグビー一家で育ちました。父・健さんは筑波大と、NEC(現NECグリーンロケッツ東葛)で活躍、母・順子さんは元日本代表です。弟の暖選手は現在、日川高の3年生で、花園に出場しています。ポジションは皆、スクラムハーフ。母親を含め、全員がスクラムハーフというのは聞いたことがありません。
このポジションは、小柄な選手が主流です。正確なパススキルに加え、的確な判断力、そして味方とのコミュニケーション能力が求められます。
飯沼選手の場合はどうでしょうか。クラブキャプテンを務めるフランカーの金正奎選手は、チームの公式アプリ内の「アークスラジオ」(2022年4月8日配信)で、「清水建設(江東ブルーシャークス)との練習試合を観た時、“ベテランやん”と思ったよ」と語っていました。ルーキーにしてベテラン。それが飯沼選手を知る上でのひとつのキーワードでしょう。
デビューは敵地・熊谷ラグビー場での第12節、埼玉パナソニックワイルドナイツ戦。飯沼選手はスタメンで起用されました。スコットランド代表76キャップの世界的スクラムハーフ、グレイグ・レイドロー選手は、スタンドオフで起用されました。
「突出しているのは競争心、勝つ意欲がすごく高い選手。“誰にも負けない”という意欲は、ラグビーの能力よりも大事かもしれない。もちろん彼は能力も高い。素晴らしい未来が待っている選手なので、彼と一緒にプレーができて光栄だ」
レイドロー選手のこのコメントが、飯沼選手の将来性を物語っています。チームは格上の埼玉WKに24対31で敗れましたが、7点差以下だったためボーナスポイント1点を獲得しました。
飯沼選手のデビュー戦を、関係者はどう見たのでしょう。
まずはこの試合の中継(JSPORTS)で解説を務めた元ジャパンのスクラムハーフ後藤翔太さん。
「プレーヤー・オブ・ザ・マッチをあげたい。信じられないですね。大卒で入ったばかりにもかかわらず、これだけ落ち着いてゲームをさばけるなんて」
続いてSA浦安のロブ・ペニー監督。
「才能があり、これからどのように力を発揮するか楽しみだ。9番(スクラムハーフ)はチーム内で競争率の高いポジション。今後も競争に勝ち、良いパフォーマンスを出せることを証明できた試合だった」
デビュー戦の高評価がフロックでなかったことは、翌週の横浜キヤノンイーグルス戦で証明されました。試合は5対35と完敗でしたが、指揮官は「今日はフォワードが負ける展開が多かったが、それでも彼はいいパフォーマンスを見せていた」と納得の表情でした。
初トライは第14節のGR東葛戦。31対20とリードの後半5分。センターライン付近でパスを受けると、ディフェンスラインのスキを縫うように中央突破。最後はフルバックのレメキ・ロマノ・ラヴァ選手の追走を振り切り、インゴール右隅に飛び込みました。その後、反撃に遭い、最終スコアは38対34。貴重なトライでチームの9位浮上(試合前は11位)に貢献しました。これにより1部残留圏内に入ったとはいえ、まだ予断を許しません。タイトなゲームがルーキーの成長を後押しします。
当コラムの次回更新は5月12日(木)予定です。
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