9月20日に開幕するラグビーW杯日本大会の経済波及効果は大会組織委員会によると約4372億円にものぼると見られています。消費税増税による消費の冷え込みを心配する事業者サイドにとっては思わぬ援軍となりそうです。
夏季オリンピック、サッカーW杯とともに世界3大スポーツイベントのひとつに数えられるラグビーW杯。夏季オリンピックの開催期間が約2週間、サッカーW杯が約1カ月であるのに対し、ラグビーW杯は1カ月半にも及びます。しかもラグビーファンには富裕層が多いということもあり、「観光などの開催都市を中心とする国内各地の経済活性化につながる」(組織委員会)との期待が広がっています。
とりわけ“W杯特需”に大きな期待を寄せているのがビール業界です。2015年のイングランド大会では、同じ会場で行なわれたサッカーの試合に比べ、平均6倍以上のビールが消費されたというデータもあります。
ラガーマンも酒豪揃いです。中には、「エッ、この人飲めないの?」という人もいますが、それはほんの一握りです。下手に誘うと“朝までコース”が定番です。
酒豪揃いの中でも、日本ラグビー史上最多のキャップ数98を誇る大野均選手は1、2を争います。何度か酒席をともにしたことがありますが、豪快な中にも気配りを感じさせる愉快な酒でした。
その大野さんに、「最も思い出深い酒」について聞くと、「イングランドW杯で南アフリカ戦に勝ったあとの20杯」をあげてくれました。1杯ではなく20杯、というところがミソです。
「南アフリカに勝ったあと、オフの日にまちのパブに行きました。軽く2、3杯飲んで帰るつもりが、店内のお客が次々に“ジャパンの大野だろ? オレのおごりだ、飲め!”と。気がついたら20杯くらい飲んでいました。
あのワールドカップでは3勝をあげたものの、残念ながら決勝トーナメントには進めなかった。日本に帰る前日は、みんなで夜中まで飲みました。翌日は空港へ向かうバスの中で昼間からビール、ビール、ビール! それまでは食生活もずっとストイックだったので、その反動でハンバーガーやフライドポテトなんかを途中で買い込みました。それで食べて、飲んで盛り上がった。あれは最高の時間でしたね」
聞けば、ほとんどの選手が南アフリカ戦後は「オレのおごりだ! 飲め!」の恩恵にあずかったそうです。ラグビーファミリーならではの絆の強さが感じられるエピソードです。
その一方でラグビーは紳士のスポーツでもあります。親しき仲にも礼儀あり、です。大野選手によると、ラグビーの世界では「左手でビールグラスを持つのがマナー」だそうです。それは以下の理由に依ります。
「ラグビーでは試合後にアフターマッチファンクションといって、両チームの選手がちょっとした食事や飲み物を囲みながら親睦を深める場があります。オーストラリアやニュージーランドなど海外の人たちには左手は"不浄"という考え方が強いので、必ず右手で握手をする。ところが冷たいグラスを持っていたら右手は冷え切って、それで握手をするのも相手に失礼なことになる。海外では『バッファローのひづめみたいだ』と表現されます。だからグラスは左手で持つんです。もし右手で持っているのが見つかったら、一度グラスの中のお酒を飲み干して左手に持ち替えないといけない。だからラガーマンは皆、自然と左手でグラスを持つようになっていますね」
この説明はストンと胸に落ちました。冷え切った手で握手するのは失礼――。ちょっとした行為にも相手への思いやりが感じられます。長丁場のW杯、ラグビー界特有のマナーを、ぜひ全国津々浦々まで広めていきたいものです。
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