日本ラグビー協会は7月24日から29日にかけて、女子15人制強化選手及び女子TID(ジュニア・ユース世代を対象に次世代の人材発掘と育成を図るプログラム)の合同合宿を行いました。長野・菅平での合宿には、イングランドのクラブに所属する鈴木彩香選手(強化選手)と加藤幸子選手(TID)も参加しました。
31歳のBK鈴木選手は、サクラフィフティーン(女子15人制ラグビー日本代表)の顔とも言える存在です。2016年には7人制ラグビー(セブンズ)でリオデジャネイロ五輪、17年には15人制のW杯アイルランド大会に出場しています。代表キャップは17。昨年秋に渡英し、イングランドのワスプスでもプレーしました。そして、もうひとりのFW加藤選手は、同じくイングランドのエクセター・チーフスでプレーし、リーグのベスト15にも選出されている実力派です。21歳ながら代表キャップは既に6です。
女子イングランド代表はW杯2度の優勝を誇る強豪で、現在の世界ランキングは1位。同12位の日本からすれば“遠い頂”です。
これほどの実力差があるにもかかわらず、ベテランの鈴木選手は、「サクラフィフティーンの選手はイングランドでも活躍できる」と太鼓判を押します。そして、こう続けます。
「できれば若いうちに行って、海外のカルチャーを経験し、いろいろな世界を知るべきだと思います。イギリスはどの国よりも発展していると感じますし、レベルの高い競争も経験できる。自分で生活し、日本のように整えられていない環境で生き抜いていくことが大切だと思います」
ではイングランドと日本の違いは何でしょう。
「向こうの選手はフルタイムで働きながらラグビーをやっている。ラグビーに集中できるという面では、日本の方が恵まれた環境にあるんです」
日本の方が環境的には恵まれている、というのは意外でした。
「プレミアシップはシーズン中、素晴らしいクオリティーの試合が毎週あります。でも日本で15人制の試合は年間で数試合しかない。その現実が差になって出ているんです」
加藤選手が話を引き取ります。
「プレミアシップは10チームで行われ、最低でも18試合。これは日本では経験できないこと。10チーム全部のレベルが高い。強い選手や速い選手は日本にもいますが、イングランドでは各チームにたくさんいると感じました」
国内の女子15人制ラグビーにおけるトップレベルの大会は、全国女子ラグビー選手権大会のみです。現行のルールでは関東・関西地区の上位チームが対戦しますが、各チーム1試合しか行いません。予選にあたる地区大会を含めても、5、6試合がせいぜい。イングランドとの差は明らかです。
日本ラグビー協会発表の女子ラグビーの競技登録者数は5123人(20年度)。5年前の3569人と比べると増加傾向にありますが、少子化を考えると将来が明るいとは言えません。
この点を鈴木選手はどう考えているのでしょう。
「強化が全てになってはいけないと思います。普及・認知というところにもっと力を入れていかなければいけません。それには私たち選手もSNSなどで発信し、関わっていくことが大事です。トップ選手のトレーニングはどんなものか、栄養や食事はどのように摂っているのか。それらを“見える化”していくことによって、たくさんの人に知ってもらう必要があると思っています」
東京では今、オリンピックが行われています。今大会の女子選手の比率は48.8%と過去最多です。2012年のロンドン大会で女子ボクシングが正式種目になったことにより、女子が出場できないオリンピック競技はなくなりました。ラグビーも男子同様、女子のセブンズが16年リオデジャネイロ大会から採用されています。日本ラグビーの成長戦略を考える上で、女子ラグビーの底辺拡大は避けては通れない課題と言っていいでしょう。
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