ブレイブルーパス森田佳寿コーチ直撃
来季に向け「長所伸ばし、課題克服」

　2023-24シーズンのリーグワン優勝を果たした東芝ブレイブルーパス東京の森田佳寿コーチングコーディネーターは、トッド・ブラックアダーヘッドコーチ（HC）の右腕との評価を得ています。次なる目標に向け、話を聞きました。

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モウンガが背景画面に

――リーグワン優勝おめでとうございます。ブレイブルーパスとして14季ぶりのリーグ制覇。6月29日には府中で優勝パレードを実施しました。

森田佳寿：　僕が2012年にブレイブルーパスに入ってからは初めての優勝でした。パレードにはリーグワン決勝から少し時間が経ってからの開催にも関わらず、4000人を超えるファンが集まってくれました。僕たちの活躍を喜んでくれる人たちがいるということは、漠然と分かっていたものの、実際に優勝したことで実感することができました。優勝後、会社に行くと、予想以上に職場の人たちが喜んでくれました。普段、朝礼はZOOMで行うのですが、その背景画面がリッチー・モウンガになっていたり、ブレイブルーパスが優勝した時の写真になっていたり……。想像以上に関心を持っていただいていると実感しました。

――今回の勝因は？

森田：　長い時間をかけて積み上げてきたものと、前年からの変化の両面があると思います。僕にはアタックコーチとコーチングコーディネーターというふたつの役割があります。アタックコーチの視点でいうと、僕らのDNAは何かということを突き詰めてきた。つまり、どういうプレーを得意とし、他チームとはどう違うか。それを、この2年間で明確にしてきました。1年間のプランを立てるコーチングコーディネーターとしては、一昨年までは自分たちの強みを尖らせること、そしてアタック面に注力していましたが、23-24シーズンは攻守のバランスを重視しました。

――チームスピリット「接点無双」がDNAということでしょうか？

森田：　そのスローガンは「東芝」のラグビーを形容するもの。躍動的なアタックが僕たちの武器です。スピーディーにプレーし、ボールも人も動くラグビーを目指してきました。

――森田さんが選ぶ会心のゲームは？

森田：　準決勝の東京サントリーサンゴリアス、決勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦です。両試合とも必勝態勢で臨みましたが、高いプレッシャーの下でもいいラグビーができたと自負しています。これはシーズンを通して言えることですが、ディフェンスを強いられる時間が長くありましたが、耐えることができた。ディフェンスに対する自信、プレッシャーを跳ね返す力がついたと実感しています。

「選手は満足しているか」

――埼玉パナソニックワイルドナイツとの決勝では、前半2度インゴール目前に迫られながらも、リーチマイケル選手のトライセーブもあり、なんとか踏ん張りました。

森田：　それもディフェンス力が上がった証だと感じています。準決勝もサントリーに攻められる時間が長かった。それでも耐えて自分たちのいいアタックにつなげ、トライを生んだ。アタックでは少ないチャンスをモノにし、相手にプレッシャーをかけていく。それができた準決勝、決勝だったと思います。

――森田さんは22－23シーズンからアタックコーチ兼コーチングコーディネーターを任されています。それまではバックスコーチやディベロップメントコーチという肩書きでした。

森田：　アタックコーチ兼コーチングコーディネーターになってから、仕事量は明らかに増えましたね。忙しさに追われつつも、僕が提案した練習に選手は満足しているのか、僕の提示したプランにワクワクしているのか。そのことを常に考えていました。しかし就任初年度、チームは5位に終わりました。シーズン後にイギリスに勉強に行かせてもらい、戦術のアイディアを得てきた。それもあって、1年目よりも2年目の方が準備をしてシーズンを迎えることができました。

――気の早い話ですが、来季に向けての目標を教えてくだい。

森田：　もちろん来季も優勝です。次のステップに進むため、変化を加えていくシーズンになると思っています。強みを磨いていくことは大事ですが、何を修正すべきかもオフシーズンにきっちり見極めたいと思っています。長所を伸ばしていくことと、課題を克服すること。このふたつのバランスを大事にしていきたいですね。

＜森田佳寿（もりた・よしかず）プロフィール＞
1989年5月14日、奈良県生まれ。現役時代のポジションはスタンドオフ、センター。小学4年からラグビーを始め、郡山東中、御所工業高（現・御所実業高）を経て、2007年に帝京大学入学。鋭い突破力とタックルを武器に1年からベンチ入りし、2年でレギュラーに定着すると、帝京大学の全国大学選手権3連覇に貢献。3年時は主将を務めた。卒業後の12年、東芝（現・東芝ブレイブルーパス東京）に入社。7シーズンプレーし、14-15シーズンから3シーズン主将を任された。19年に現役引退後はコーチングスタッフ入り。22-23シーズンからアタックコーチ兼コーチングコーディネーターを務めている。