日本W杯の行方を左右する大会――南半球4カ国対抗「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」(TRC)が20日、開幕しました。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの強豪4カ国が総当たりで優勝を争います。言うまでもなく、この4カ国は2015年イングランド大会のベスト4。レベルの高いゲームに注目が集まります。
TRCは2012年にスタートしました。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3カ国による前身の「トライネーションズ」(1996~2011)にアルゼンチンが加わったことで、現在の大会名称に変わりました。最多優勝国はニュージーランドで 16回。以下オーストラリアの4回、南アフリカの3回と続きます。
唯一優勝経験がないのが、参戦8年目を迎えたアルゼンチンです。しかし近年のW杯では07年フランス大会3位、11年ニュージーランド大会ベスト8、15年イングランド大会ベスト4と3大会連続で決勝トーナメントに進出するなど、着実に力をつけています。
ラグビーW杯公式ウェブサイトには<ここ10年、世界で最も進化したチーム>と紹介されています。
アルゼンチンは過去、W杯全8大会全てに出場しています。99年ウェールズ大会で初のベスト8入り。スタンドオフのゴンサロ・ケサダ選手が102得点をあげ、得点王に輝きました。07年大会では開催国のフランスを初戦で撃破するなど快進撃を続け、3位決定戦でも再びフランスを破りました。スタンドオフのファン・マルティン・エルナンデス選手、センターのフェリペ・コンテポーミ選手は、この年のIRB(国際ラグビーボード。現ワールドラグビー)年間優秀選手に選ばれています。
アルゼンチンといえば世界屈指のサッカー大国としてその名を知られますが、ラグビーもなかなかのものです。周知のようにラグビーの世界には、世界ランキングとは別に、ティアと呼ばれる階層が存在します。現在のティア1は以下の10チーム。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランス、イタリアとともにアルゼンチンも名を連ねています。
アルゼンチンは世界最高峰のラグビーリーグ・スーパーラグビー(SR)にも参戦しています。同国初のプロラグビーチーム・ジャガーズは15年に代表強化を目的として創設されました。日本チーム(ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ)と同様に15年シーズンから参戦し、初年度こそ4勝11敗と大きく負け越しましたが、昨季はベスト8、そして今季は準優勝と頂点が狙える位置にまで来ました。
そんなアルゼンチンをW杯日本大会のダークホースに推す声は少なくありません。15年W杯イングランド大会でジャパンのコーチングコーディネーターを務めた沢木敬介さんもその1人です。
「選手のスキルも高く、アルゼンチンは面白いラグビーしていますね。今季ジャガーズはSRの南カンファレンスで1位になりました。アルゼンチンは今乗りに乗っています。優勝経験国からすれば要注意でしょう」
キープレーヤーはスタンドオフのニコラス・サンチェス選手です。年齢は30歳。身長177センチと大柄ではありませんが、正確なキックが持ち味の司令塔です。2度のW杯出場(11、15年)を含め、通算キャップ数は75を数えます。通算得点717点はアルゼンチン歴代最高。15年W杯イングランド大会では97得点をあげ、チームをベスト4に導くとともに、自身も得点王に輝きました。
20日に行われたTRCのニュージーランド戦でも、サンチェス選手の右足に注目が集まりました。まず前半3分、21分のPGを確実に決めました。そして9対20で迎えた後半7分、大きな見せ場を作りました。敵陣に攻め込むと、サンチェス選手はインゴール手前でボールを受け取りました。次の瞬間、すぐさま左サイドへ滞空時間の長いハイパントを蹴りあげました。それをフルバックのエミリアノ・ボフェリ選手がキャッチし、そのままインゴールへ。サンチェス選手のコンバージョンも決まり、16対20と4点差に迫ったのです。最後は逃げ切られてしまったものの、大善戦でした。
進境著しいアルゼンチンに自らの姿を重ね合わせる指導者がいます。日本代表ヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフさんです。
「アルゼンチンは日本と似たような道を歩んできています。最初の頃は苦しんでいたはずで、とても難しい挑戦をしていたのだと思いますが、去年(15年)のW杯でベスト4に入るという成績を収めました。彼らの成功を見て、私が思うのは、日本も2019年に同じことをやれない理由はないということです」(2016年9月のHC就任会見)
約2カ月後に迫った極東でのW杯。アルゼンチンはフランス、イングランド、トンガ、アメリカのいるプールCに入りました。決勝トーナメントに進出するには優勝経験のあるイングランド、準優勝2度を誇るフランスのどちらかを撃破しなければなりません。まさに“死のグループ”です。ロス・プーマスの躍動に期待しましょう。
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