9月9日から11日までの3日間、南アフリカ・ケープタウンで行われた7人制ラグビー(セブンズ)のW杯、女子はオーストラリアの優勝で幕を閉じました。日本代表(サクラセブンズ)はトーナメント1回戦で今大会5位のフィジーに7対36で敗れ、目標のベスト8入りこそ逃したものの、過去最高の9位で南アフリカを後にしました。
大会を振り返りましょう。初日にフィジーに敗れたサクラセブンズは、翌日に南アフリカ、ブラジルを下し、最終日のチャレンジファイナル(9位決定戦)にコマを進めました。対戦相手は8月に「ワールドラグビー・セブンズチャレンジャーシリーズ2022」決勝で破ったポーランド。
前半4分、自陣左サイドを突破され、先制トライを許しました。7分にもトライを奪われ、0対12とリードを許す苦しい展開。
サクラセブンズの反撃は前半ロスタイム。ハーフウェイライン付近で梶木真凜選手のパスを受けた原わか花選手が快足を生かし、左サイドを駆け抜けます。インゴールまで約50メートルを走り切り、5点を返しました。
これで息を吹き返したサクラセブンズは、後半に入り、主導権を握ります。ポーランドはマイボールラインアウトでノットストレートの反則を犯し、自ら崩れていきます。中継映像では、サクラセブンズの選手からも「相手バテてるよ!」との声が聞こえてきました。4分には相手ボールのラインアウトを中村知春選手兼コーチがスティール。そこからボールを右に展開し、原選手が再びトライ、2点差に迫りました。
6分には敵陣で相手が落球。この機を逃さずにサクラセブンズがプレッシャーをかけ、ノットリリース・ザ・ボールの反則を誘いました。平野優芽選手がクイックタップですぐにリスタート。相手守備陣のギャップを突き、インゴール左中間に飛び込みました。須田倫代選手のコンバージョンキックが決まり、17対12で逆転。この5点のリードを最後まで守り切ってノーサイド。サクラセブンズは男女合わせてW杯過去最高の成績で大会を終えました。
試合後、キャプテンの平野選手は「相手が走れなくなるのはわかっていました。私たちは走り勝てると自信を持ってプレーできたので、苦しい場面もありましたが、勝利につなげることができたと思っています」と胸を張りました。
大会を振り返ると、ポーランド戦に限らず、南アフリカ、ブラジル戦も先制を許しながらの逆転勝ち。3連勝をもたらした「最後まで走り負けないフィットネス」は、猛練習の賜物です。
昨年9月から指揮を執る鈴木貴士ヘッドコーチ(HC)は言います。
「普段の練習がきついんだと思います。彼女たちがよく口にするのは『試合の方が楽』と。そのくらい選手たちが練習で自分を追い込んでくれている」
指揮官によれば、7対7の実戦練習を行う際、ボールを持った1人が抜け出した後にプレーを切るそうです。「全員がサポートにいくようになるまで何回も繰り返しやってきました」。今大会でも湧き出るように現れるサクラセブンズの選手たちが印象的でした。まさに“くの一戦法”です。
ポーランド戦、後半4分の原選手のトライに至るまでのアタックに、それが凝縮されていました。一の矢、二の矢、三の矢と、相手に息つく暇を与えません。6分の逆転トライにつながった相手の反則も、サクラセブンズがルーズボールにすぐさま反応したことで、誘発したと言っていいでしょう。
今大会5トライを記録し、ピッチで鋭い突破を何度も見せた原選手はこう語ります。
「7人が常に走り続け、アタックもディフェンスもする習慣が染みつきました。自分がブレイクしてもまわりに仲間がいる安心感があり、誰かが抜け出した後も1人、2人とついていく」
逞しさはフィジカルだけではありません。中村選手兼コーチは「先に点を取られても慌てなくなった」と精神面の充実を指摘します。
「このチームは切り替えがうまい。今大会は初戦にすべてをかけるつもりで準備してきましたが、負けてしまった。以前のサクラセブンズならズルズルいってしまうところがありましたが、今のチームは違う。“仕方がない。じゃあ次”と切り替えることで、自分たちの力を発揮できた。気持ちの面での成長を感じました」
身心ともに逞しくなったサクラセブンズ。パリオリンピックまで、あと2年。「ハナノミヤコデ サクラサク」。そんな朗報に期待したいものです。
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