リーグワンで無敗街道を突き進む埼玉パナソニックワイルドナイツ。第11節終了時点で11戦全勝の勝ち点51。総得点数(528)や総トライ数(75)などのチームスタッツでもリーグトップに立っています。ここまでの手応えと課題をワイルドナイツの飯島均ゼネラルマネジャー(GM)に聞きました。
――今季は開幕11連勝、敵なしですね。
飯島均: リーグ戦が中盤に入り、主力にケガ人や体調不良者が出ていますが、その穴を中堅や若手が補い、チームとしての成長を見せられていると思います。ワイルドナイツは2023年W杯フランス大会でジャパンにリーグワン最多の11人を送り出し、他国の代表を含めると13人が本大会に出場しました。逆に言えば、プレシーズン、彼らが不在の状態でチームづくりをしなければならなかった。双方のマーケット拡大の一環で2020年から業務提携を結ぶスーパーラグビー・パシフィックのレッズ(オーストラリア)と、今季もプレシーズンに国際交流試合を行いました。そこで主力がいなかったにもかかわらず、強豪レッズ相手に互角に戦えた。チームの底力が上がってきた証拠と思いました。
――キャプテンのフッカー坂手淳史選手は「誰が出場しても良いプレーをすることを掲げているチーム」と話していました。
飯島: そうですね。慶大出身5年目のフルバック丹治辰碩は入団直後、なかなか出場機会に恵まれませんでしたが、第8節の静岡ブルーレヴズ戦から2試合連続で先発出場(ウイング)し、ブルーレヴズ戦でトライをあげるなど結果を残しました。第10節のコベルコ神戸スティーラーズ戦で途中出場した大東文化大出身5年目のプロップ古畑翔は、元々1番(左プロップ)だったのですが、今季から3番(右プロップ)に挑戦しています。同じプロップとはいえ、左右の入れ替えはスクラムで逆側に位置するため容易なことではありません。それでも彼は19年W杯日本大会に出場したプロップ中島イシレリ選手を相手にしても、スクラムで負けなかった。試合で勝ち続けていることはもちろんうれしいのですが、個々の選手たちの成長を実感できることは、もっとうれしい。
――総得点、総トライがリーグ最多、総失点は同最少と攻守において他チームを圧倒しています。
飯島: これはワイルドナイツが持っているラグビーの考え方やカルチャーがチームに浸透してきたからだと思います。グラウンドだけでなく、クラブハウスや普段の生活でもウチの選手は高い規律を保っている。それが試合の結果に表れているんだと思います。
――ワイルドナイツの強みは規律面、反則の少なさです。前身の三洋電機時代は、よく言えば豪快、悪く言えば粗削りのイメージがありました。
飯島: 私の現役時代に神戸製鋼(現・スティーラーズ)が日本選手権7連覇を達成しましたが、その頃三洋電機は7度とも全国社会人大会で神戸製鋼に敗れているんです。三洋電機の方がトライの多い試合があったにもかかわらず、勝てなかったのはペナルティーが多かったから。そして敗因を外に求めていた。誰かのせいだと……。
――そういう負のカルチャーを払拭できたのは、やはり2014年に監督に就任したロビー・ディーンズさんの存在が大きかったのでしょうか。
飯島: 我々は過去からいろいろなことを学んだ。そこにロビーさんというスーパーラグビーのクルセイダーズを率い、強豪チームに育て上げた指導者が加わった。ちょうどいいタイミングでした。
――あえて現在の課題をあげるなら?
飯島: これは現場側というより、運営側の話になります。ラグビーは試合数が少ない。いかに優秀な人材に機会を与えるか。私たちは地域の大学や高校、少年ラグビーチームを底上げしていきたいと考えています。もっと多くの人たちにワイルドナイツのプレーを観ていただく、触れていただく。そうすることでファンが増えると同時に選手たちの成長にもつながっていくと考えています。
――2022年にリーグワンがスタートしてから、埼玉県内にキャンパスを置く東洋大、立正大、日本薬科大と包括連携協定を結びました。
飯島: 身近にお手本がいることは成長を促す意味でも効果的です。またチームにとってもメリットがあります。キャリア晩年でコーチングを学びたい選手が、大学の練習に指導者として参加することができますから。こういった人材交流を、今後より積極的に進めていきたい。
――大学との連携は、リクルートにおいても効果がありそうですね。
飯島: もちろんチームに入ってきてくれることはうれしい。逆にチームに来なかった場合、何がダメだったのかを検証することができる。私たちが情報をオープンにすることによって、いいところだけでなく悪いところも明らかになる。それはとても大事なことだと思っています。
<飯島均(いいじま・ひとし)プロフィール>
1964年9月1日、東京都出身。現役時代のポジションは主にフランカー。府中西高を経て大東文化大に進む。大学4年の時、大学選手権優勝を経験。三洋電機(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)に入社。95年度の全国社会人大会初制覇を最後に現役を引退した。96年度から99年度まで三洋電機の監督を歴任。その後、2001年から03年までラグビー日本代表のコーチを務め、05年度からは三洋電機に復帰した。08年度より再び監督に就任し、日本選手権の連覇を3に伸ばし、10年度には悲願のトップリーグ初優勝に導いた。ラグビー部長を経て、現在はゼネラルマネジャーを務める。
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