熱戦が続くリーグワン。勝負はゲタを履くまでわからないといいます。1月27日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で行われたリコーブラックラムズ東京対クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は、それを地でいくようなゲームでした。
15対10とスピアーズリードで迎えた後半40分、ラインアウトモールからゴールに迫りくるブラックラムズFW陣の圧力に耐え切れず、スピアーズのロック、デーヴィッド・ブルブリング選手が反則を犯してしまいました。平川哲也レフリーはイエローカードを提示すると同時に、ペナルティートライを宣告しました。
17対15。ブラックラムズが逆転です。
その直後、スタンドオフ岸岡智樹選手のキックオフボールをブラックラムズのロック、ジョシュ・グッドヒュー選手がキャッチした時点で、事実上、試合は終わったかと思われました。ここから先はボールをキープし、ホーンが鳴れば、外に蹴り出せばいいのです。
だが、ブラックラムズは幕引きに失敗します。フッカー武井日向選手が相手のプレッシャーを受け、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られました。
ペナルティーを獲得したスピアーズは迷わずショットを選択。フルバックのゲラード・ファンデンヒーファー選手が約30メートルの距離をものともせずに射抜き、シーソーゲームに勝利しました。ファイナルスコアは18対17。ハラハラ、ドキドキ、ワクワクの全てが詰まったようなゲームでした。
以下は痛恨の反則を犯した武井選手の試合後のコメントです。
「自分がラックをつくってゲームを切る場面。相手が何かしてくるだろうな、と分かっていましたが、(プレーの)精度が甘かった。ああいう場面でのボールキャリーの仕方を僕は学ばなければならないですし、サポートプレーヤーもどうすべきかを、学ばなければいけない」
端的に言えば詰めが甘かったということでしょう。
ブラックラムズとスピアーズ、両チームの間に、それほどの差があったとは思えません。それは僅差のスコアが証明しています。
では何が明暗を分けたのか。昨季王者のスピアーズの、最悪の状況下でも最善を尽くすという勝利への執念と、追い込まれた中でも最適解を探そうとするサバイバルマネジメント能力が、ひとえにブラックラムズを上回っていたということでしょう。
スピアーズのウイング根塚洸雅選手のコメントです。
「相手を仕留め切らないと、今年の優勝は見えてこないという話をチームみんなとしてきました。この2戦(対コベルコ神戸スティーラーズ、ブラックラムズ)、ラスト数分で逆転して勝っていることは自分たちにとってポジティブな結果。最後まで諦めてはいけない、勝ち切らなければいけないと、チーム全員が思っているからこそだと感じています」
リーグワン優勝を決めた昨季の埼玉パナソニックワイルドナイツとのプレーオフ決勝も、センター立川理道選手の乾坤一擲のキックパスを受けたウイング木田晴斗選手のトライで試合をひっくり返したのは後半29分でした。
このような大勝負での成功体験が、「自分たちは最後に強いんだ」という、いい意味でのマインドコントロールに結びついているような気がします。
これでスピアーズは、今季初の2連勝。星を3勝3敗の五分に戻しました。
試合後、フラン・ルディケヘッドコーチ(HC)は「規律面の改善」を好調の要因にあげ、こう続けました。
「ペナルティーを含め、ベーシックなところ、細かいところを微調整することができました。信頼する力、信じる力によってモメンタムが生まれたと思っています」
昨季の王者とはいえ、スピアーズには相撲でいうところの「横綱」の実力が備わっているわけでありません。再度、“綱取りに挑む”というくらいの気概が必要でしょう。これからが楽しみなスピアーズです。
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