
日本ラグビーフットボール協会(JRFU)は3月28日、「JAPAN RUGBY 中期戦略計画2025-2028」を発表しました。この中期計画は「JAPAN RUGBY 2050」として2021年に定めた4年ごとの計画案の2期目にあたります。ターゲットは<再びワールドカップを日本に招致し、世界一になる>。日本協会は2019年以来のW杯日本大会開催を目指しています。
現時点で27年大会はオーストラリア、31年大会はアメリカで開催されることが決まっています。日本は35年以降の招致を狙っています。35年以降の開催地は27年オーストラリア大会の前後に2大会(35年、39年)まとめて決まると見られています。
日本協会の岩渕健輔専務理事は、4月9日に行われた理事会後のブリーフィングで、こう述べました。
「ワールドラグビー(WR)の様々な戦略に沿ってタイミングを見極めていきたい。W杯を開催するにあたっては、我々が一方的にやりたいと言ってできる話ではない。関係各機関とお話をし、タイミングを見極めながら、最終的な方向性を考える必要があると思っています」
岩渕専務理事は慎重な姿勢を崩しませんが、国際統括団体のWRとの関係は良好です。
日本協会は23年5月に最上位カテゴリーのハイパフォーマンスユニオンに加わり、理事会における投票権は従来の2票から3票に増えました。昨年11月に行われたWR会長選では、オーストラリアのブレッド・ロビンソン氏に投票したと見られています。
ロビンソン会長が今年2月、最初の訪問国に日本を選んだことからも日本への厚い信頼が見て取れます。来日時には、元日本協会会長・森喜朗氏の元を訪ねました。森氏は「WRはもう日本を軽視することはない」と口にしていました。
W杯を開催するまで日本はWRから軽視されていました。WRの前身であるIRBが、いかに日本大会の成功に対し、懐疑的だったかは、植民地政策を想起させるような運営スキームにはっきりと表れていました。
収入の柱であるテレビ放映権、スポンサー権、ライセンス権、マーチャンダイズ権など、あらゆる権益をIRBが抑え、唯一、日本の組織委員会が受け取ることができたのはチケット収入だけでした。
それでも68億円もの黒字を計上することができたのは、日本代表のW杯史上初となるベスト8進出が追い風となり、販売席数の99.3%にあたる約184万枚のチケットを売り上げることができたからです。当時、大会組織委の副会長を務めていた森氏はIRBの幹部がわざわざ大会期間中に「今までの対応は謝る。日本人のラグビーに対する愛情や前向きな姿勢を、私は見誤っていた」と謝罪したことを明かしました。
さらにはこんなエピソードも。
<2019年ワールドカップの成功で、日本に対する世界の評価は随分変わりました。
名古屋でワールドラグビーの主要最高幹部だったブレッド・ゴスパーさんと飲んでいた時のことです。ゴスパーさんは、私にこう言いました。
「いろいろありがとう。素晴らしい大会でしたが、今度はいつ(ワールドカップを)やるんでしょう?」
まだワールドカップは終わってもいないというのに、随分と気の早い話です。しかし、そこまで持ち上げられて、こちらも悪い気はしません。
するともう一人のメンバーが話を引き取りました。
「今までの対応は謝る。日本にこれだけの力があるとは……。日本人のラグビーに対する愛情や前向きな姿勢を、私は見誤っていた。どうか、もう1回やってもらいたい」
実際、これは酒の席でのリップサービスではありませんでした。令和5年(2023年)2月にワールドラグビーのビル・ボーモント会長が来日し、私の元を訊ねて来ました。
「令和13年(2031年)の第12回大会は米国を予定しているが、困難かもしれない。その時はまた日本でお願いしたい」>(森喜朗著『スポーツ独白録』徳間書店)
現地時間5日、WRはW杯の開催地選において35年大会は欧州、39年はアジアで検討することになったと、複数の英メディアが報じました。
日本のライバルは、スペイン、イタリアのヨーロッパ勢に加え、同じアジアからはカタール、UAE、サウジアラビアの中東3カ国共催案があがってきています。「これからもっといろいろ出てくるんじゃないかなって思っています」とは岩渕専務理事。
ところでアジアラグビーは今年2月、副会長を務める岩渕専務理事の職務停止を発表しました。アジアラグビーの会長はUAEのカイス・アルダライ氏。なにやらきな臭さを感じないではいられません。
当コラムの次回更新は5月8日(木)予定です。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。