2020年シーズンのスーパーラグビー(SR)を戦うサンウルブズの新首脳陣が決まりました。ヘッドコーチ(HC)には18年シーズンから2年間、サンウルブズのアシスタントコーチを務めていた大久保直弥さん、コーチング・コーディネーターには15年W杯イングランド大会のジャパンで同職を務めた沢木敬介さん。ともにサントリーの監督としてチームを日本一に導いた実績があります。
サンウルブズは代表強化のため、15年秋に結成されたチームです。これまでの戦績は1勝(16年)、2勝(17年)、3勝(18年)、2勝(19年)と決して芳しくありません。
しかし、代表の強化を図る上で、サンウルブズが大きな役割を果たしたことは、参戦した選手たちが語っている通りです。
「僕とフミ(田中史朗)さんがSRに挑戦するときはすごく大変なことやった。サンウルブズがあったことで挑戦、経験を早くできるようになった」(フッカー堀江翔太選手)
「非常にいい機会をもらい、その中で成長させてもらった。18年までは国内でフィジカルを売りにできるけど、“海外だと、どうなんだろう”と思っていた自分もいました。それが世界を経験することで確信に変わりました」(センター中村亮土選手)
史上初のベスト8進出を果たしたW杯日本大会、31人のスコッド中28人がサンウルブズに参戦経験がありました。
これまでサンウルブズを指揮したHCは4人いますが、いずれもニュージーランド人でした。順に名前をあげると、マーク・ハメットさん(16年)、フィロ・ティアティアさん(17年)、ジェイミー・ジョセフさん(18年)、トニー・ブラウンさん(19年)。
今回の大久保HCはサンウルブズ史上、いやSR史上初の日本人HCです。大久保HCは現イングランド代表HCエディー・ジョーンズさんの後を受け、12年度から14年度までサントリーの指揮を執りました。
前任者の“遺産”を継承しつつ、さらに上積みを図る――。大久保HCはこの難しい目標を1年できちんとやり遂げました。
サントリーを12年度の日本一に導いた後、大久保HCは語りました。
「これはエディーの2年間の成果です。最初の1年目、選手たちはまだまだひ弱でしたから、徹底的に走り込みをしました。2年目はそれにスピードもつけて、より強度が高く、実戦的なトレーニングを積ませました。そして昨季(12年度)はウエイトトレーニングにも力を入れました。スピードとパワーは相反する部分があるのですが、ひとりひとりの数値を見ながら、両方のバランスをとる体づくりをしていきました。練習に関しては世界の強豪にも引けをとらない内容だと自負しています」
サンウルブズの運営会社ジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは大久保さんを起用した理由ついて「将来的な日本代表の強化を考え、協会の中でも彼にHCをやってもらおう、と。彼に対する日本ラグビー界の期待は大きい。プレッシャーにならないようにサポートしていきたい」と熱く語りました。
コーチング・コーディネーターの沢木さんも、エディーさんの門下生です。15年イングランド大会では“エディーの右腕”としてジャパンの3勝に貢献しました。
前回大会、沢木さんはエディーさんからサインプレーの設計を任されました。指揮官のアイディアを仮想敵に対し、ひとつひとつ具現化、実用化していくことが沢木さんのミッションでした。
南アフリカ戦の後半28分には、沢木さんの設計したサインプレーがピタリと決まりました。敵陣左サイドでのマイボールラインアウト。フッカー堀江翔太選手のスローインをロックのトンプソン・ルーク選手がキャッチし、スクラムハーフ日和佐篤選手、センター立川理道選手、スタンドオフ小野晃征選手、ウイング松島幸太朗選手と流れるようにパスが回り、最後はフルバック五郎丸歩選手がインゴール右隅に飛び込んだプレーです。五郎丸選手はコンバージョンキックも決め、試合を振り出しに戻しました。
大久保HCと沢木さんは同学年の44歳です。現役時代はともにサントリーでプレーし、引退後はフォワードコーチとバックスコーチ、監督とヘッドコーチという間柄でした。
20年シーズンのチームスローガンは“KEEP HUNTING”。大久保HCはサンウルブズが目指すスタイルをこう説明しました。
「我々は毎試合トライに対して貪欲でありたい。1本取ったら、もう1本、2本、3本と。トライ、勝利に飢えている姿勢が我々のスタイル。それにふさわしい言葉だと思います。今回ジャパンの“ONE TEAM”が皆さんの心に突き刺さったのは、素晴らしいパフォーマンスや態度、行動に依るところが大きい。“KEEP HUNTING”という言葉に意味を持たせるのは、我々の行動であり、プレーだと思っています」
“KEEP HUNTING”と聞いて、サントリー時代に標榜していた“Attacking Rugby”を思い出した人も少なくないでしょう。その背景にあるのは“やってみなはれ!”のサントリーイズムかもしれません。
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