2018-2019シーズンのトップリーグ公式戦は1月19日のカップ戦終了をもって幕を閉じました。リーグ戦は神戸製鋼コベルコスティーラーズ、カップ戦はトヨタ自動車ヴェルブリッツがタイトルを手にしました。
03年に開幕したトップリーグですが、単独のカップ戦開催はこれまでありませんでした。今季トップリーグカップが新設されたのは、自国開催のラクビーW杯を控えているからです。これによりリーグ戦の期間は大幅に短縮されました。カップ戦は減少した試合数を確保するために作られたものです。以下はカップ戦新設にあたっての太田治トップリーグ委員長の説明です。
<「このカップ戦の根本にあるのは、日本ラグビーのレベルアップを図りたいというものです。今季は、通常のシーズンよりもトップリーグの試合数が少ない。でも各チームは実戦でチームの強化、選手たちの進化を進めたいので、カップ戦を設置したわけです」>(トップリーグHP2018年11月7日)
カップ戦のレギュレーションは以下のとおりです。
①原則としてジャパンのメンバー入りをした選手は出場しない。②外国籍選手枠は撤廃。これを受け、各チームともカップ戦を「若手育成の場」と位置付けていました。それが証拠にトップリーグカップで4強入りした指導者はこう述べています。
「トップリーグに出続けている選手を休ませ、あまり出ていない若手選手を出場させる機会にしてきた」(4位クボタスピアーズ/フラン・ルディケHC)
「次世代の選手たちを育てる場で日本ラグビーのために行われている大会」(3位パナソニック ワイルドナイツ/ロビー・ディーンズ監督)
「若手をどう成長させるか、そこはブレずにやってきた」(2位サントリーサンゴリアス/沢木敬介監督)
「若手育成の場。この舞台を使っていろいろな選手に経験を積ませるつもりで戦ってきた」(優勝トヨタ自動車/ジェイク・ホワイト監督)
どの指揮官も若手の成長には手応えを感じているようでした。そんな中、サントリーは独自のこだわりを見せました。外国籍選手枠の制限は設けられていないにも関わらず、準決勝と決勝を日本人選手のみで戦ったのです。沢木監督は「ダイバーシティと言われているこの世の中で、日本人だけというこだわりはないです。ただレギュラー陣だけが成長してもチームは成長しません。そのためには若手が上をプッシュしなければいけない。成長させようと思うメンバーをチョイスしたら、たまたま日本人だっただけです」と、“純国産”で戦った理由を述べました。
サントリーのスタンドオフ田村煕(ひかる)選手はカップ戦全5試合に出場しました。決勝でトヨタ自動車に敗れたものの、司令塔としてトライを何度も演出しました。田村選手は「日本人みんなが自信をつけたので、そこは収穫でした」と来季に向け、チーム力の底上げに大きな手応えを掴んだようでした。
反省材料もあります。今季、トップリーグの観客動員数は伸び悩みました。W杯直前のシーズンだったにも関わらず総入場者数は45万5897人。目標としていた50万人には遠く及びませんでした。今季は第1節のトヨタ自動車vs.サントリー戦(豊田スタジアム)で歴代最多の3万1332人を記録するなど上々のスタートを切りました。また神戸製鋼に世界的スーパースターのダン・カーター選手が加入したこともあり、彼のトップリーグデビュー戦には平日開催にも関わらず1万7000人を超える観客が秩父宮ラグビー場を埋めました。
ところが、終わってみれば今季の総入場者数は同試合数(120試合)の3シーズンで最低の数字でした。1開催(同会場で2試合を行った場合は多い方の動員を換算)平均は5153人。昨季の5688人を500人以上も下回ってしまいました。
ちなみにトップリーグの最多総入場者数は2015年W杯イングランド大会後の15-16シーズン。南アフリカを撃破するなど3勝をあげたジャパンの躍進が49万1715人という動員に結び付きました。1開催平均6470人も過去最多の数字でした。
今季の観客動員の内訳を見ると、リーグ戦が62開催で35万8180人、カップ戦が27開催で10万417人でした。1開催平均はリーグ戦が5777人、カップ戦は3719人。リーグとカップには2000人以上もの差があります。興行面でカップ戦が足を引っ張ったのは明らかでした。
ジャパンの選手の不出場が影響を及ぼしたことは言うまでもありません。それでもトップリーグは来季もカップ戦を継続する意向を示しています。現時点では下部リーグにあたるトップチャレンジリーグの8チームを加え、全24チームで戦う予定ですが、開催時期やレギュレーションなどについてはまだ未定のようです。
来日6年目のディーンズ監督は「もしこれが日本のラグビーのためにならないようなものであるならば、そのときは“なぜなんだ”と問いたいと思います」と話していました。
トップリーグの改革は待ったなしです。20年度よりホーム&アウェイ制を導入するとメディアが報じたのはもう1年3カ月も前のことです。その後、踏み込んだ改革案を目にしたことはありません。ポスト2019に向けての動きが気になるところです。
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