4トライをあげて快勝したサモア戦、ジャパンのゲームキャプテンはフランカーでスタメン復帰したリーチ・マイケル主将ではなく、同じフランカーの“ラピース”ことピーター・ラブスカフニ選手でした。ラブスカフニ選手はアイルランド戦に続き、2試合連続で“ピッチの指揮官”を務めました。
キャプテンがスタメン出場すれば、通常はゲームキャプテンも務めます。なぜ、そうならなかったのか。メンバー発表時に、そのことを聞かれたリーチ選手は「その質問が一発目に来ると思っていた」とジャブを放ち、こう語りました。
「彼(ラブスカフニ)はボールに近いし、レフェリーともコミュニケーションがすぐとれる。僕のポジションは(攻撃時)一番外だからレフェリーから離れていて、コミュニケーションをとれる回数が少ない」
それに加え、サモア戦のレフェリーがラブスカフニ選手と同じ南アフリカ出身だったこともゲームキャプテン起用の理由にあげられています。
では、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)の狙いはどこにあったのでしょう。
「前回、リーチをベンチに置いたのは、まずプレーのところをしっかりやりなさい、ということ。彼にのしかかる負担を軽減したんです。これまで以上にラグビーに専念できることが重要なんです」
試合を振り返れば、ジェイミーHCの狙いは、うまくいったと言えるでしょう。リーチ選手は後半23分に交代するまで体を張ったプレーでチームを牽引しました。最初のトライはリーチ選手のターンオーバーがきっかけでした。
一方、ラブスカフニ選手のゲームコントロールも「まずは勝つことを優先した」と的確でした。本人が語るように手堅い試合運びが光りました。
ラグビーにおけるキャプテンの重責は他の競技の比ではありません。HCの指示は無線を通してスタッフから届きますが、あくまでも最終的な決定を下すのはキャプテンです。
前回のW杯イングランド大会、現場がエディー・ジョーンズHC(当時)の「ショット」の指示を無視したことにより、奇蹟の逆転トライが生まれたことは、今では広く知られています。ウォーター(給水係)としてエディーHCの指示を伝える役目を担っていた沢木敬介さん(当時コーチングコーディネーター)は、選手たちの空気を察知してイヤホンを耳から引き抜いたと言います。最終的にレフェリーに「スクラム」を告げたのはキャプテンのリーチ選手でした。
2大会連続でキャプテンを務めるリーチ選手が背負う心身への負担は想像を絶するものがあります。
実はW杯日本大会が始まる直前、エディー・ジャパンでリーチ選手にキャプテンを譲った廣瀬俊朗さんは、こんな心配をしていました。
「リーチはプレーで引っ張るタイプ。それが彼のキャプテンシーの特徴です。しかし、キャプテンである以上はチーム全体のことを考えなくてはならない。それに加えて自らのパフォーマンスもあげなくてはならない。リーチは仕事に手を抜かない男だから、頑張り過ぎてケガ(恥骨炎)をしてしまった。彼を楽にプレーさせるためにはリーチをサポートする人間が必要になってきます」
リーチ選手をサポートするプレーヤーとして、ラブスカフニ選手の存在は廣瀬さんの目にも心強く映っていることでしょう。
サモアに38対19で完勝した直後の記者会見の席で、ラブスカフニ選手はこう語りました。
「この勝利は(僕やリーチの)リーダーシップだけではない。(試合に出場した)23人だけでなく、選ばれなかった選手全員の貢献によるものです」
試合を重ねるごとに「ワンチーム」としての輝きを増すジャパン。台風に邪魔されなければ、決戦は日曜日です。
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