欧州遠征中のジャパンは、現地時間6日、アイルランド代表と4カ月ぶりに対戦し、5対60と大敗しました。今後は13日にポルトガル代表、20日にスコットランド代表と戦います。さて38人のメンバーの中で、ひと際目立つのが身長2メートル2センチのワーナー・ディアンズ選手です。チーム最長身にして最年少。果たして19歳はこのツアーで初キャップを得られるのでしょうか。
ディアンズ選手の名前は当初、欧州遠征のメンバー表にはありませんでした。ところが、ロックの選手に負傷者が続出したことにより10月27日、追加招集されました。
ラインアウトはジャパンの強化ポイントのひとつです。2019年W杯日本大会準々決勝の南アフリカ戦では、マイボールラインアウトの成功率が62%と苦しみました。それが3対26と完敗した一因でした。欧州遠征でもラインアウトでのミスが目立ちます。2メートルを超えるディアンズ選手に期待が集まるのは当然です。
さて「世界一のロックになりたい」と高い目標を口にする19歳は、どんな経歴の持ち主なのでしょう。ニュージーランド出身。父グラントさんのNECグリーンロケッツ(現NECグリーンロケッツ東葛)トレーニングコーチ就任に伴い、14歳で来日しました。高校は流通経済大学付属柏。2年時はロック、3年時はナンバーエイトとして花園のベスト8進出に貢献しました。
身長2メートル2センチ、体重122キロと恵まれた体躯を生かしたプレーが持ち味です。この春、東芝ブレイブルーパス(現・東芝ブレイブルーパス東京)に入団。公式戦未出場ながら今年9月の代表合宿には、次世代のジャパン候補生にあたるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)の一員として参加しました。
ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)は合宿中、ディアンズ選手について、こう語っていました。
「見てみたかった選手。彼の能力は素晴らしいものがあり、合宿1日目のパフォーマンスから感心しました」
流経大柏高時の3年間、ディアンズ選手を指導した相亮太(あい・りょうた)監督に話を聞きました。
「身体能力が高く、バックス並の走力を持っていました。持久系のメニューをやらせてもウイング、センターの選手たちと同じくらいのタイムで走った。2メーター級のサイズで1キロを3分台で走れる選手は私の現役時代でも見たことがない。線は細く見えますが、骨太でケガをほとんどしたことがない。高校3年時のストレングスの数値はトップリーグ選手と同等かそれ以上でした」
さらに相監督は続けます。
「高校3年間、間近で見てきた私からすると、とても理解力が高い。日本語がうまく理解できていなかった面もあったのかもしれませんが、相手が何を伝えようとしているかを見極め、感じ取る能力に秀でていました。またトレーニングや試合でうまくいかなくても、それをネガティブに捉えるのではなく、“次はこうやろう”と考え、前向きにチャレンジできる選手でした」
性格については、「シャイで大人しい」そうです。
「サッカーに例えるなら、ゴール前で得たFKを“オレが蹴る”というタイプではなく“どうぞ、どうぞ”と譲ってしまうタイプ。彼はとても仲間思いなんです。だから私が指示する際も“ラインブレイクしてガツンといけ!”と言うよりも“ワーナーが守ってあげないと味方のFWがやられてしまうぞ”“ラインアウトをカットしないとチームは苦しいよ”と声をかけた方が力を発揮する。ジャパンが厳しい状況、困難な時に最前線で身体を張る。彼には“日本の盾”になってもらいたいですね」
19歳に対する代表選手の評価はどうでしょう。プロップ稲垣啓太選手は9月の合宿初日に、こう語っていました。
「今日は一緒にスクラムを組みました。ジャパンのスクラムは初めてだったにも関わらず、ちゃんと組めていた。まだまだ高めていかないといけない部分はありますが、潜在能力は非常に高いと思いますね」
ジャパンのロック陣は、トンプソン・ルークさんが引退以降、ジェームス・ムーア選手を軸にヘル・ウヴェ選手、ヴィンピー・ファンデルヴァルト選手ら外国出身選手が中心となっています。今回の遠征初戦はムーア選手とジャック・コーネルセン選手の組み合わせでした。世界を見渡すと強豪国のロックの身長はニュージーランド代表ブロディ・レタリック選手が2メートル4センチ、サミュエル・ホワイトロック選手が2メートル2センチ、南アフリカ代表エベン・エツベス選手が2メートル3センチ。それを考えればディアンズ選手は世界基準と言っていいでしょう。相監督は「私の願望としてはバックロー(フランカー、ナンバーエイト)でプレーしてもらいたい。どんどんボール争奪戦に絡み、身体を当てていってほしい」と語っていました。その根拠については、改めて紹介したいと思っています。
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