W杯に日本代表として4大会連続(2011年ニュージーランド、15年イングランド、19年日本、23年フランス)で出場した通算76キャップ(ジャパン歴代6位)のフッカー、堀江翔太選手が今季限りでの引退を発表しました。6日に行われた記者会見では、終始清々しい表情で、その胸中を明かしました。
ポロシャツ姿で壇上に上がった堀江選手、「唐突ですが、今シーズンをもって、ラグビー選手を引退します」と明言し、こう続けました。
「僕自身、10歳から競技を始めましたが、ターニングポイントでいろいろな人と会って、いいラグビー人生が送れたと思っています。僕自身、ここまで(上に)いけるようなラグビー選手ではなかった。いろいろな人の支え、サポートがあって、ここまで来られたんだなと感じています」
引退発表の場ともなればスーツが通例ですが、「僕っぽくない」という理由でチームのポロシャツを選んだそうです。
「僕は常に“明日、引退しろ”と言われても後悔のないようにやってきた。(引退は)遅かれ早かれやってくること。ネガティブな感情はなく、むしろワクワクしている気持ちの方が強い」
今年1月に37歳になった堀江選手ですが、引退の理由は体力面ではないようです。本人も「体力的には全然大丈夫。まだまだ動ける」と語っていました。
では、なぜ現役を終えるのでしょう。それについて、堀江選手は「正しい体の使い方を伝えていきたい」と語りました。引退後は、フリーランスのS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチを目指すとのことです。
「ケガをしてからでも正しい体の使い方をすれば、もっと良くなっていく。これをもっと若い子たちが知れば、大きなケガを防ぎ、パフォーマンスを上げていくことができるはず。若い子たちのレベルが上がれば、もっとトップレベルのアスリートが増えていく。今、僕はラグビーが主体ですが、ラグビー以外のいろいろなスポーツでも正しい体の使い方をすれば、パフォーマンスが上がり、痛みも取れる。この正しい体の使い方をもっと広めていきたい」
言うならば「正しい体の使い方」を広める伝道師といったところでしょうか。なるほど、思い当たる節があります。以前、読んだ彼の著書『ベテランの心得』(PHP研究所)から引きます。
<僕はトレーニングって、なんのためにするのかと考えるんですよ。ラグビー選手の場合、体を鍛えるためじゃない。ラグビーがうまくなるために必要な体を作り、それをどう使うかということだと思うんです。ところが、いろいろな選手を見ていると、「うまく使う」という発想が抜け落ちている気がするんです。
筋肉はついても、正しい使い方ができないと、体力でカバーできる10代、20代のうちはいいかもしれませんけど、30代になったら、ガタッと来ますよ。それは年齢因子じゃないです>
堀江選手は15年に首、18年には右足首を手術しています。復活に向け、堀江選手をサポートしたのが佐藤義人トレーナーです。この佐藤トレーナーとの二人三脚が、引退後にS&Cコーチを目指すきっかけとなったようです。
<僕が佐藤さんとのトレーニング経験を通して感じているのは、小学生のうちに背中の使い方を学んでおいて欲しいということです。背中の筋肉や、肩甲骨の使い方を身につけておくと、まったく違う人生が送れると思います>(同前)
これまで、日本のスポーツ界において、トッププレーヤーが引退後にいわゆる裏方に回ったというケースは、あまり多くありません。堀江選手の決断に拍手を送りたいと思います。
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