ジャパンのフランカー、ナンバーエイトとして長きに渡って活躍し、W杯2大会(1999年ウェールズ大会、03年オーストラリア大会)に出場した伊藤剛臣さんが、今年8月、母校・法政大学ラグビー部のFWコーチに就任しました。13度のリーグ優勝、全国大学選手権では3度の優勝を誇る名門ですが、近年は低迷が続いています。母校の復活を託された伊藤さんに話を訊きました。
――コーチ就任の経緯は?
伊藤剛臣:BKコーチの松隈(孝三)が駒井孝行監督に僕を推薦してくれたんです。
――二つ返事でOKしたんですか?
伊藤:はい。やはり“母校に貢献したい”という気持ちがありましたから。
――リーグ戦は2004年度、大学選手権は1992年度を最後に優勝から遠ざかっています。
伊藤:今回で法大に関わるのは3回目。そのうちの2回はアドバイザーでした。3回目で初めて現場に立たせてもらっています。何が足りないか……うーん、すべてが足りなかったのではないかと思います。だが幸いなことにチームには良い選手、良いコーチングスタッフが揃っています。ラグビーの原理原則、基本の部分から強化したいと考えています。
――具体的には?
伊藤:まずはセットプレーですね。スクラム、ラインアウトの基本的な動きや技術は正直言ってまだ甘い部分があると感じます。
――伊藤さんは大学時代、武村秀夫監督の指導を受けました。厳しい練習で有名でした。
伊藤:他のチームもキツイ練習をしていたと思うので、自分たちだけが偉そうに「猛練習をしていた」とは言えませんが、走る量は相当でしたね。合宿地の網走湖の周りを45キロ走ったこともあります。
――マラソン選手並みですね。
伊藤:はい。10キロ、20キロは当たり前。最終日は45キロマラソン。終わった後、両脛が痛くなり、病院に行くと、疲労骨折していましたよ(笑)。
――コロナ下でも走り込みはできますね。
伊藤:それは監督との相談になります。僕らがやっていた時代は、ある意味、“根性練習”ですから。今は時代に合った練習も必要です。コーチング技術が発達してきていますから、昔のままでいいとは思いません。
――駒井監督からはどのような役割を?
伊藤:FWの指導と、あとはメンタル面ですね。法大は挑戦者。勝ち上がっていくためにはフィジカル、スキルのみならずメンタル面も重要になってくる。僕らが経験してきたことを伝えていきたいですね。
――法大の最後の大学日本一は1992年度。伊藤さんが3年生の時です。
伊藤:あの年は1人1人が、1戦1戦成長していった。また、ひとつひとつのプレーを本気でやっていました。ラグビーは積み重ねが大事。その積み重ねの中で自信が生まれるんです。それを学生たちに伝えたい。
――学生たちに当時の映像を見せたりすることは?
伊藤:僕が入った頃、法大はリーグ戦で中位ぐらいでした。しかしチームの歴史を知ると、第1回大学選手権で優勝している。第2回、第3回は早大が制したものの、第4回も法大が優勝し、当時は“早法時代”と言われていました。それを知ったことで、僕はすごく自信を得た。また法大は対抗戦グループを離脱し、現在のリーグ戦を創設した時の中心チームです。そういった反骨精神を持ったチームでもあるんです。チームの歴史や文化を知ることは非常に大切だと思います。昔の映像を見せることは確かに有効かもしれませんね。
――新入生の竹部力選手は、祖父と父親が法大のOBです。
伊藤:彼の父親は僕と同期で大学日本一のメンバーです。僕と同じ時期にプレーしていた選手の息子ですから、時代の流れを感じます。また彼の祖父は第1回大学選手権の優勝メンバー。法大の歴史を象徴している選手ですね。
――2代続けての日本一。その3代目となる選手の入部は験が良いですね。
伊藤:そうですね。ともかく我々は挑戦者の立場にあることは変わりません。ひとつひとつのプレーを大事にし、1戦1戦、勝利を目指していきたいと思います。
<伊藤剛臣(いとう・たけおみ)プロフィール>
1971年4月11日、東京都生まれ。高校1年でラグビーを始め、高校日本代表に選ばれた。法政大学3年時には大学選手権で25年ぶりの優勝をチームにもたらした。法大卒業後は名門神戸製鋼に入社し、94年度の全国社会人大会、日本選手権7連覇に貢献した。その後も2度の全国社会人大会、日本選手権優勝を経験。トップリーグ初代王者に輝いたチームの中心選手として活躍した。12年、神戸製鋼から釜石シーウェイブスに移籍。ジャパンではW杯2大会出場。通算キャップ62。17年度限りで現役を引退。今年8月より母校・法大のFWコーチに就任した。
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