関東大学ラグビー対抗戦Aグループの優勝争いが佳境に入っています。現在、7連覇中の王者・帝京大学が5戦全勝で単独首位。11月18日、東京・秩父宮ラグビー場での明治大学戦に勝利すれば、対抗戦史上最多の8連覇達成となります。
全国大学選手権大会で前人未到の9連覇中の帝京大において、目を引くのは4年生の副将・フルバック竹山晃暉選手の充実ぶりです。今シーズンはここまで対抗戦5試合で6トライ、133得点をあげています。チームではキッカーを務め、ゴールキックとペナルティーゴールを55本蹴り、うち50本を成功させています。90.9%の高確率を誇るチームの得点源です。
奈良県の御所実業高校から帝京大に進学した竹山選手は1年時からレギュラーとして活躍してきました。身長176センチ、体重80キロとラガーマンとしては小柄ですが、持ち味の俊足を活かし、主にウイングでトライを量産してきました。ちなみに1年時の大学選手権でマークした12トライは1大会最多記録です。
チームのキッカーを担当するようになったのは昨シーズンからです。前年度までのキッカーはスタンドオフの松田力也選手(現パナソニック ワイルドナイツ)でした。彼の卒業で空いたポジションに竹山選手自ら名乗りを上げました。
「松田さんが卒業して、誰がプレースキッカーになるチームで考えた時に『自分が蹴りたい』と言いました。自分の中でチームに貢献したいという思いと、自分の強みをラン以外でも増やしていきたかったんです」
自らキッカーに名乗りを上げたように、竹山選手は強心臓の持ち主です。岩出雅之監督は「いい意味で人を食ったようなところがある」と語っていました。竹山選手が強心臓ぶりをいかんなく発揮したのが昨年11月18日に行われたニッパツ三ツ沢球技場での明大戦です。この試合に勝った帝京大は対抗戦7連覇を決めました。前半4分と9分にトライをあげた帝京大でしたが、竹山選手はゴールキックを立て続けに外してしまいました。前半は残り2つのキック(ゴールキックとペナルティーゴール)を決めたものの、20対14と6点差で試合を折り返すことになってしまいました。
竹山選手には自らに対する歯がゆさがあったのでしょう。前半終了後、チームメイトが引き上げていく中、ひとりピッチに残り、キック練習をしていました。目的は「ズレた感覚を修正するため」でした。黙々と楕円球を蹴ることで、トップフォームを確認していたのです。
後半に入り、帝京大は圧倒的な力を発揮し始めました。竹山選手は前半終了後の修正がうまくいったのか、後半は3本のキックを全て成功させました。ハーフタイムでの点検作業の理由は、こうでした。
「試合前からいつもと足の感覚が少し違った気がしていたんです。でも試合開始までに修正できなかった。それはキッカーとして、まだまだ未熟だということ」
三ツ沢球技場は、プレーする機会の少ないスタジアムです。竹山選手は慣れないピッチに苦戦していたようです。違和感を解消するためにボールを蹴る時間が必要だったのでしょう。
この試合を経て、竹山選手のキックの安定感はさらに増しました。大学選手権の準決勝、決勝では8本全てを成功させました。竹山選手の“黄金の右足"が帝京大の対抗戦7連覇、大学選手権9連覇の原動力となったのです。
帝京大の対抗戦7連覇は早大(70~76年度、2001~07年度)と並ぶ最多記録です。今シーズンは新記録となる対抗戦8連覇、その先の大学選手権では節目の10連覇を目指しています。ところが出足は不調でした。春季大会では明大に敗れ、2年ぶりの公式戦黒星。夏合宿の練習試合では明大、早大に連敗とVロードには暗雲が立ち込めていたのです。
だがフタを開けてみれば、やはり帝京大は横綱です。開幕戦で成蹊大学に113対7と大勝すると、青山学院大学に141対7、日本体育大学に90対7、慶應義塾大学に24対19、早大に45対28と絶好調です。
最上級生となった竹山選手は今シーズンからは慣れ親しんだウイングではなく、フルバックとして起用されています。本人は「個人としても挑戦。難しいけど重みがある」と語り、続けました。
「チームの中で11番(ウイング)にいるのがいいのか、15番(フルバック)にいるのがいいのかを監督とお話ししました。これからは生かされる側から生かす側に変わる。その点は難しいと思います」
フィニッシュ役を担うウイングと違い、フルバックは最後尾に構えます。ディフェンスにおいては文字通り最後の砦です。攻撃において起点にもなります。攻守におけるキーパーソンと言えるでしょう。また竹山選手はウイング時代もキックを得意としていました。
「元々、(インプレー中のキックを)意識はしていたんですが、キック1本1本にどれだけフォーカスを置いて集中できるか。その重みは今までと違いますね」
今年11月5日、秩父宮ラグビー場での慶大戦、竹山選手は絶妙なキックでトライを演出しました。34分、帝京大が14対7とリードした場面でした。センターサークル付近でボールを持った竹山選手は持ち前のスピードを生かし、突破を図ります。ショートパントでボールを前方に送ると、左サイドを自ら駆け上がりました。そのままインゴール目前でボールをキャッチすると、スタンドオフの北村将大選手にパスしてトライをアシストしました。最終的に5点差にまで迫られたこの試合、終わってみれば貴重な追加点でした。
現在、対抗戦Aグループでは唯一全勝で首位に立つ帝京大。11月18日には1敗で追いかける明大と対戦します。先述したように春と夏の試合では敗れています。連覇を狙う帝京大の最大のライバルです。竹山選手は「自分たちは春と夏に負けている。チャレンジャーとして試合に臨みたい。守りに入るのではなく攻めていきます」と語気を強めて話していました。
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