菅平(長野県上田市)と言えば、ラグビー夏合宿の聖地です。しかしコロナ禍の影響により、今夏は合宿を張るチームが激減しています。そんな中、過去に13回、花園(全国高校選手権大会)に出場している東京高校(東京)は夏合宿を実施予定です。コロナに揺れる高校ラグビーの実情を森秀胤監督に聞きました。
――5月末に日本ラグビー協会が、5段階のレベル別活動指針を示す練習再開のガイドラインを発表しました。
森:本校は3月から休校になりました。その間、選手たちは再開に向けて自主トレーニングを積んでいました。しかし国からの自粛要請があり、4、5月も集まってトレーニングをすることはできませんでした。6月からは各クラス半数ずつの分散登校となり、練習も登校する選手に対し、1時間程度実施していました。ようやく中旬からラグビー協会のガイドラインに基づき、全体練習を再開しました。今はコンタクト練習を少しずつやり始めているところです。
――東京高校の練習施設は多摩川の河川敷にありますね。
森:よく土手を散歩されている方からは「やっと始まったんだね」と声を掛けていただきます。ありがたいことに子どもたちを応援する声が多いですね。
――先が見通せない中、退部した選手はいませんでしたか?
森:幸いウチにはいなかった。新入部員は24人加わりました。
――オンラインでのコミュニケーションは?
森:4月からオンラインでトレーニングを開始しました。ZOOMなどのミーティングアプリを使い、ミーティングも行いました。選手たちの顔を見ながらできるのは大きかった。特に新入生は入学式もなく顔を合わせる機会がありませんでした。ビデオ通話でコミュニケーションを取りました。オンラインはコロナが終息した後も使えると思っています。
――他校はどうなのでしょう?
森:他校の先生方とは、しょっちゅう連絡を取っています。どの高校も6月まで休校していて、中旬からラグビーらしい練習ができるようになったと聞きます。各校の先生方とは「ケガをさせたら大変だし、慌てずにやろう」と声を掛け合っています。
――夏合宿のキャンセルが相次いでいると聞きます。
森:本校も基本的には自粛ですが、ラグビーに限らず3年生が出場できる全国大会が残っている部活動は、例年より参加人数を絞ることで、学校から例外として合宿実施を認めていただきました。今はその方向で準備をしています。期間は8月中旬に8日間行う予定です。
――チームづくりにおける夏合宿の位置付けは?
森:選手たちが試合や練習で成功体験を得る機会であり、自分は何が武器なのか、何が足りないかなど、いろいろなことに気付くチャンスだと思うんです。本校の場合は、近畿や九州の強豪校に胸を借りる予定です。チームとしても花園までに何が通用するか、試せるかを見極める機会にしたいと思っています。
――菅平にはスカウティング活動として多くの大学、トップリーグ関係者が訪れます。
森:通常、3年生は夏までにスポーツ推薦が決まっています。2年生は大学の関係者やスカウトに見てもらえる。また夏合宿には代表のセレクターが各校を見て回り、目に留まった選手が世代別の代表にピックアップされることもあります。
――夏合宿はチーム内でのポジション争いにおいても重要な機会になりますね。
森:もちろんです。過去にはレギュラー当落線上にいる選手が、夏のひと踏ん張りで定位置を掴んだこともありましたし、ケガ明けの選手が合宿で復活をアピールしてメンバー入りしたケースもあります。
――夏合宿は、いわゆる“ラグビー漬け”ですね。
森:ええ。24時間ラグビーのことを考えるというのは大きいですね。栄養指導やケガの治療やケア、ミーティング……。皆で共有する時間がたくさんあるので、チームの一体感づくりや共通理解を深める上で、大切な期間になります。
――昔で言う“同じ釜の飯を食う”期間ですね。
森:そうですね。食事の席や部屋で“この子は最後まで片づけをしている”という場面に出くわすことがあります。ラグビーの実力はあるけれど、私生活がだらしない子もいる。普段は気が付かないことに気付けるという利点もあります。
――春季大会などの中止が相次ぐ中、例年冬に行われる全国高校選手権(花園)の開催が決まりました。
森:大きな目標ができたのは良かった。選手たちも花園を目指して、練習していたとはいえ、実際に開催できるかどうか不安だったと思います。協会から発表していただいたことで、その不安も取り除けたのではないでしょうか。
――花園に向けた抱負を。
森:自粛期間はこのピンチをチャンスに変えられるかをテーマにやってきました。今は花園という大きな目標ができた。まずは東京都の予選を勝ち抜き、花園で準々決勝、準決勝に進み、上位にチャレンジしていきたいです。
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