リーグワンが開幕してから1カ月半が経ちました。2月15日、暗いニュースが飛び込んできました。ディビジョン3に所属する宗像サニックスブルースが今季限りで廃部を検討しているというのです。
1994年にサニックスが創部した宗像は、過去に現ジャパンヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフさん、ナショナルチームディレクターの藤井雄一郎さん、ニュージラーランド代表31キャップのグレアム・バショップさんらが所属した九州を代表するクラブのひとつです。リーグワンの前身であるトップリーグにも創設初年度の2003年から参戦していました。親会社であるサニックスの業績悪化を理由に、今季は強化費を大幅に削減、17人の選手が退団しました。
廃部検討という衝撃的なニュースから3日後、クラブ側から次の報告がありました。
<報道の件については、会社より選手・スタッフにラグビー部の廃部について検討していることは伝えられましたが、決定しているものではありません>(「宗像サニックスブルースHP」2022年2月18日配信)
リリースには<今シーズンは、最後までジャパンラグビーリーグワンで戦ってまいります>と記されているものの、廃部を否定する文言はありません。
リーグワン開幕前には、同じ福岡県を本拠とするコカ・コーラレッドスパークスも廃部に追い込まれていたため、九州のラグビーファンの思いは複雑でしょう。
いうまでもなく、九州はラグビーどころです。19年W杯日本大会でベスト8入りしたジャパンには、九州出身者が流大選手、福岡堅樹選手(福岡県)、中村亮土選手(鹿児島県)、木津悠輔選手(大分県)と4人もいました。九州の学校、チームに在籍した選手まで含めると、ゆかりのある選手は9人にのぼりました。
選手だけではありません。12の会場のうち、実に3つが九州(福岡、大分、熊本)でした。ちなみに日本ラグビー協会の森重隆会長も福岡県出身です。
今年からスタートした新リーグのリーグワンは<地元の結束、一体感の醸成>をミッションに掲げています。しかし、新会社を立ち上げた静岡ブルーレヴズ(旧ヤマハ発動機ジュビロ)、分社化した東芝ブレイブルーパス東京(旧東芝ブレイブルーパス)を除くと、まだまだ“企業密着”から脱し切れていないような印象を受けます。
もっとも会社都合による解散は「地域密着」を掲げて1993年に船出したJリーグにもありました。98年10月、横浜フリューゲルスの出資会社である佐藤工業の撤退を受け、もう一つの出資会社全日空が、横浜マリノスに泣きつき、吸収合併の憂き目を見ました。
ここで立ち上がったのがサポーターたちです。「横浜フリューゲルスを存続させる会」を発足し、存続に向けての署名、募金活動をスタートさせました。彼らの熱意が通じたのか、最終的には50万人を超える署名と、6700万円もの募金が集まりました。選手たちもサポーターたちの熱意に応えるように、最後の戦いである天皇杯を制し、有終の美を飾りました。当時キャプテンの前田浩司さんは、こう語りました。
「会社も過ちに気付いたでしょう。我々には合併の不当性をフェアにアピールできた。プライドの勝利です」
しかし、これを美談にしてはいけません。公共財であるはずのスポーツクラブが、親企業の経営判断で、できたり消えたりするのは、好ましいことではありません。リーグワン創設の際に、この点は確認しておくべきでした。
宗像に話を戻しましょう。廃部検討報道が出た5日後の2月20日、北九州市の本城陸上競技場で行われたクリタ昭島ウォーターガッシュ戦前、ファンと選手がチーム存続を求める署名活動を行いました。試合後、キャプテンの屋宜ベンジャミン選手は神妙な面持ちで「この取り組みは大きな意味を持つと思います」と話し、続けました。
「今回のことで改めてファンの大切さ、サポートの熱さを感じました。日頃の感謝を1試合1試合、プレーで表していきたい」
そんな折、日刊スポーツWEB版に以下のような見出しが躍りました。
<福岡にラグビー新チーム「LeRIRO福岡」誕生へ、宗像サニックス廃部なら受け皿に>(2022年2月23日配信)
福岡といえば、博多どんたく、博多祇園山笠が生み出す熱狂について語らないわけにはいきません。スポーツは祭りです。あの熱狂をスタジアムに取り込めないものでしょうか。個人的には福岡こそがラグビー王国にふさわしい地だと考えています。
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