リーグワンは2024-25シーズン、新たに3つのクラブがディビジョン3に参入します。セコムラガッツ、ヤクルトレビンズ、LeRIRO福岡(ルリーロ福岡)。この中で唯一母体企業を持たないのがルリーロです。チーム名は、ホストエリアの福岡県うきは市鳥カワセミの瑠璃色とフランス語で「笑い」という意味の「le rire」を掛け合わせたもの。福岡といえばラグビーどころ。リーグ側が「新しい風を吹き込んでほしい」(東海林一専務理事)と期待を寄せる同クラブの島川大輝代表に話を聞きました。
――1月下旬、リーグワンから新規参入が承認されました。その報を受けた時の率直な思いは?
島川大輝: まずはホッとしたというのが正直なところです。同時に気が引き締まりました。
――2022年春のチーム発足から、わずか2年足らずでリーグワン入りが決まりました。そもそもルリーロをつくったきっかけは?
島川: 福岡県うきは市唯一の高校、浮羽究真館高校の吉瀬晋太郎先生との出会いがきっかけでした。彼とは7、8年前に知り合いました。私は地元埼玉県の高校ラグビーの指導をしていましたが、その頃から吉瀬先生は「浮羽究真館を日本一にする」と言っていた。大きな夢を本気で語る姿に、“面白い人がいるなぁ”と感じましたね。
――その吉瀬先生の熱意にほだされたと?
島川: そうですね。2020年11月、私は「本気で高校ラグビーに携わってください」というオファーをいただき、浮羽究真館のコーチになりました。指導者として数カ月関わらせていただく中で、21年2月頃、ある疑問が湧いてきました。浮羽究真館の競技レベルがどんどん上がっていき、関東、関西の強豪大学に進学する生徒が増えてきた。ほとんどの生徒が外へ出て行ってしまう。吉瀬先生もいつかは異動するかもしれない。先生以外の大人が関われる仕組みづくりをしなければいけないという危機感を持ったのがきっかけです。行き着いた結論が、トップチームをつくることでした。
――22年1月、トップリーグに変わる新リーグ(リーグワン)がスタートする前ですね。
島川: はい。いずれ新リーグで戦うトップチームをつくりたいと思っていました。その年の4月、コカ・コーラレッドスパークスの廃部のニュースが届きました。多くの選手が既存のチームに移籍しましたが、「うきわ市にチームができるなら、もう一度、チャレンジしたい」と言ってくれる選手もいた。それでチームづくりも段々、加速していった感じです。
――ルリーロのホストスタジアムは久留米スポーツセンター陸上競技場(久留米市)ですが、練習拠点は浮羽究真館高校のグラウンドを使用しています。
島川: ウチの選手たちは高校生と毎日一緒に練習しています。日中は働きながらラグビーをしているので、夕方5時ぐらいにグラウンドに集合する。高校生たちにとっては吉瀬先生以外の生きたコーチ陣が毎日来て、教えてもらえるようなものです。
――母体企業を持たないクラブですから地域密着が大事になってきます。
島川: そうですね。私たちも「地域密着型クラブ」と言っています。ありがたいことに地元の方々からお金の支援のみならず人的、物的支援を含めれば、本当に多くの応援をしていただいています。協賛パートナーは、今年1月末の時点で、320社を超えました。
――地域に愛されるクラブを目指すと?
島川: もちろんです。協賛パートナーを含め、チームが大切にしているのは地域性。ラグビー、ラガーマンが持っているポテンシャルを最大限に活用していきたいと考えています。ホストエリアであるうきは市は、「うきはラグビータウンプロジェクト」を掲げています。市外企業からの寄付は、企業版ふるさと納税というかたちで、ルリーロに対し、運営費を補助していただいています。事業面でも初年度から収益化を目指しています。
――ルリーロは浮羽究真館の学生寮のほか、整骨院やフォトスタジオも運営しています。それも循環型のシステムのひとつですか?
島川: はい。こちらの運営は金額的に大きくありませんが、チームに関わる選手・スタッフと一緒に事業をやっていくんだというメッセージになっている。例えばチームのトレーナーがルリーロ整骨院で働き、生計を立てることができる。スポーツに関わりたいカメラマンは、土日だけフリーランスとして活動するのではなく、平日はフォトスタジオで勤務することだってできます。
――選手の価値向上の取り組みとして、個人スポンサーを付けられるそうですね。
島川: こちらはありがたいことに多くの方に興味を持っていただいています。選手ごとに明暗がくっきり分かれるという感じで、中には数百万円のスポンサーを得ている選手もいます。
――今後に向けての目標を。
島川: 地域性、事業性、競技性の3本を軸に、うきは市というひとつのまちから九州、アジアに広げていきたいと思っています。ルリーロは地域商社的な側面がある。地域に対し、人・物・金・情報を、ルリーロを通じて届けたいと考えています。東京の企業がルリーロを応援することをきっかけに、今パートナーシップを結ぶ300社との縁もつくれる。チームの影響力を福岡県内にとどまらず、九州、アジアへ。こうした“ルリーロ経済圏”をさらに拡大させていきたいと考えています。
<島川大輝(しまかわ・だいき)プロフィール>
1983年、兵庫県三田市出身。埼玉県立浦和高校でラグビーを始める。早稲田大学進学後、母校の浦和高ラグビー部で13年間コーチを務めた。2013年には54年ぶり2度目の花園出場を果たした。その後福岡にて、税理士事務所勤務。2020年11月、福岡県立浮羽究真館高校のコーチに就任。2022年4月、「うきはからリーグワンへ」を掲げ、福岡県南部筑後地域をホストエリアとしてラグビーチーム「LeRIRO(ルリーロ)福岡」を設立した。
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