これはジャパン復帰への布石かもしれません。2月5日、オーストラリア合宿中のヒト・コミュニケーションズ サンウルブズがロックのトンプソン・ルーク選手を追加招集しました。ジャパンで64キャップを持つトンプソン選手は16日の開幕戦(シンガポールでのシャークス戦)に向け、調整中です。
4月で38歳になるトンプソン選手は、トップチャレンジリーグの近鉄ライナーズでプレーする大ベテランです。ニュージーランド出身で2004年に来日し、10年には日本国籍を取得しました。ニックネームは“トモさん”。身長196センチ、体重110キロの恵まれた体躯を武器に、07年フランス大会、11年ニュージーランド大会、15年イングランド大会とW杯に3回出場しています。
わけても15年イングランド大会での活躍は語り草です。専門誌の「ラグビーマガジン」の読者投票ではキャプテンでフランカーのリーチ・マイケル選手、フルバックで大会ベストフィティーンの五郎丸歩選手らを抑えて、堂々のMVPに選ばれました。それほど彼のチームへの献身ぶりは際立っていました。
ジャパンがW杯過去最多の3勝をあげた同大会における最高の名場面が、“ブライトンの奇跡”と呼ばれた初戦の南アフリカ戦です。試合終了間際、29対32で日本は劣勢でした。敵陣深く攻め込み、相手が反則を犯して得たペナルティー。そこでPGではなくスクラムを選択し、トライを奪ったシーンは、今思い出しても震えがきます。これを演出したのがトモさんでした。
「スクラムの時にトンプソンさんが“歴史を変えるのダレ?”と発言したんですよ。それにタイトファイブ(プロップ、フッカー、ロックのFW5人)全員が共鳴して、“俺らだ”と応えたんです。“日本のラグビーを変えたい”との気持ちをずっと持ってきていたので、その言葉はすごく響きました。やはり“ここでやらなかったら、何も変わらない!”という思いがありましたから」(南アフリカ戦に途中出場したロックの真壁伸弥選手)
この直後、連続攻撃から最後はウイングのカーン・ヘスケス選手の劇的なトライが生まれ、34対32と逆転。ジャパンはW杯で過去2回の優勝を誇る強豪から大金星をあげたのです。
15年10月を最後に代表から離れていたトンプソン選手ですが、17年6月に再び桜のジャージーに袖を通しました。19年W杯日本大会において同組で対戦するアイルランドのテストマッチ2連戦でした。22対50で敗れた第1戦終了後、トンプソン選手は急遽、招集されました。ジェイミー・ジョセフHCは「彼の経験や能力を考えると他に選択肢はなかった」と説明しました。
13対35と敗れたものの、約1年8カ月ぶりの復帰となったトンプソン選手は指揮官の期待通りの働きを見せました。目を引いたのは前半3分のプレーでした。敵陣で強烈なタックルを相手に見舞い、ボールを奪取しました。直後に、味方がパスをインターセプトされたため、得点には結び付きませんでしたが、体を張ったプレーでチームを鼓舞しました。スポーツ専門局のESPNによれば、この試合でのトンプソン選手のタックル成功数は26回。これは両チームトップの数字でした。これにはアイルランド代表のジョー・シュミットHCも「タックルの精度が素晴らしい。やはり大きな存在だと思った」と最大級の賛辞を送っていました。
以下は試合後のジェイミーHCの話です。
「今回、トンプソンを招集した時には前向きでない反応があった。たとえば“彼は年寄り過ぎていてプレーできない”という声も。しかし、今回のパフォーマンスで世界レベルのロックだということを、しっかり確認することができた」
トンプソン選手は「(代表入りは)今回だけ」と答えましたが、依然としてチームメイトからの信頼は厚く、たとえばリーチ選手は「すべてを出し切ってプレーしてくれる選手」と全幅の信頼を寄せています。スクラムハーフの田中史朗選手も「今でもすごい選手。能力的には全然できると思うんです」と語っていました。
ピッチ外からの評価はどうでしょう。元ジャパンの大畑大介さんは「まだまだやればできる。アイルランド戦のトモを見たらすごいなと思いました」と舌を巻いていました。
さてトンプソン選手のサンウルブズ追加招集はジャパン復帰への布石となるのでしょうか。サンウルブズのHCはジャパンのAC(アシスタントコーチ)のトニー・ブラウンさんです。ジャパン復帰を見据えての招集と見るのが妥当でしょう。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。