W杯フランス大会、D組のジャパンは現地時間17日、イングランドに12対34で敗れ、通算成績を1勝1敗としました。勝ち点5で目下、D組3位。各組上位2チームまでが進める決勝トーナメントに向け、2位・サモアとの次戦(28日、トゥールーズ)は文字通り、「負けられない戦い」となりました。
「最初の60分は非常に良かった。ただチャンスを生かすことができなかった」
試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)が語ったように、前半から後半の途中までは上々の出来でした。あの時、トライを取っていれば、あのトライがなかったら……。それを言い出すときりがありませんが、12対34というスコアほどの実力差はなかったように感じられました。
しかし、イングランドからすれば、それは「引かれ者の小唄」ということになるのでしょう。イングランドとジャパン、どちらに運があったかといえばイングランドですが、運も実力のうちです。
前半4分、ジャパンは早々に失点します。ウイングのエリオット・デーリー選手のキックをフルバックのセミシ・マシレワ選手がこぼし、ノックオン。その後のアタックでペナルティーを犯し、PGで3点を失いました。
マシレワ選手は、この日、厄日だったようです。6分、ロングキックを蹴った際に右足を痛め、途中交代を余儀なくされました。スタメンはレメキ・ロマノ・ラヴァ選手でよかったかもしれません。
健闘が目立ったのはFW陣です。注目された3分のファーストスクラム。8人の選手の足がピタッと止まり、その後もイングランドの強力FWとほぼ互角の戦いを演じました。
前半は9対13。後半14分にスタンドオフ松田力也選手の、この日4本目のPGが決まり、12対13と1点差に。
16分、滅多にお目にかかれないプレーが飛び出します。敵陣深く攻め込んだイングランド。スタンドオフのジョージ・フォード選手からのパスをプロップのウィル・スチュアート選手が捕球できず、プロップのジョー・マーラー選手の頭部を直撃したのです。前方にこぼれたボールをそっと拾ったのがフランカーのコートニー・ローズ選手。ノックオンと判断し、足を止めたジャパンの選手たちを横目に、ゴールポストの真下にボールを届けました。コンバージョンも決まり、12対20。さぁ、これからという時だっただけに、ジャパンにとっては泣くに泣けないトライとなりました。
「集団同調性バイアス」という心理学用語があります。集団の中にいると、つい他人と同じ行動をとってしまう心理で、日本の選手の多くが、仲間の誰もタックルにいかないから、おそらくノックオンなのだろう、と早合点してしまったようです。
だが、ジャパンにも挽回のチャンスはありました。被トライの直後、ウイング松島幸太朗選手がワールドクラスの走りでロングゲインに成功し、その後も波状攻撃を仕掛けます。初トライの期待が膨らみましたが、プロップのヴァル・アサエリ愛選手が痛恨のノックオン。結局、その後2トライを追加されるなど、尻すぼみの内容となってしまいました。
それでも時間は待ってくれません。「下を向く時間はない」とはキャプテンの姫野和樹選手。トゥールーズでのサモア戦に向け、選手たちは気持ちを切り換え、準備に余念がありません。
サモアで気になるのが、次の2人です。ひとりはスタンドオフのクリスチャン・リアリーファノ選手。NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(現・浦安D-Rocks)などでプレーをした日本をよく知る男です。チリ戦はその右足で、ひとりで16得点を叩き出しました。
もうひとりはセイララ・マプスアHC。クボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、釜石シーウェイブスでプレーしました。釜石時代、チームメイトだった伊藤剛臣さんは、「彼はスーパーラグビー、ヨーロッパのプロリーグ、そして日本でプレーした経験がある。いろいろ策略を練っていると思います」と語っていました。
「彼と僕が一緒にプレーしていた2015年。その年のW杯イングランド大会でジャパンがサモアにW杯で初めて勝ったんです。翌日、彼に会うと、ものすごく落ち込んでいた。要は“オレらのサモア代表がジャパンに負けた”と。それまでサモアにとって日本は格下でしたからね。僕は彼の顔を見て、“アンラッキーだったね”としか言えなかった……」
ジャパンにとってのアドバンテージは中10日でサモアと対戦するのに対し、サモアはアルゼンチン戦から中5日での日本戦となることです。コンディション的には、明らかにジャパンが有利でしょう。後半にその差が出てくると思われます。
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