昨季のスーパーラグビーベスト4の強豪ワラターズ(オーストラリア)相手に最後、1点差にまで詰め寄りました。2月23日、東京・秩父宮ラグビー場でヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの国内開幕戦が行われ30対31で敗れはしましたが、大善戦でした。
対戦相手のワラターズは2014年のスーパーラグビー優勝チームです。スタメンには現役・元を含め11人のオーストラリア代表(愛称ワラビーズ)経験者が名を連ねました。フランカーのマイケル・フーパー選手はワラビーズの現キャプテン、プロップのセコペ・ケプ選手、リザーブのアダム・アシュリークーパー選手は100キャップのレジェンドです。
そんなワラターズ相手にサンウルブズは3トライをあげました。その全てに絡んだのがセンターの中村亮土選手でした。
1本目は前半8分でした。自陣に押し込まれたものの、中村選手は冷静にカウンターアタックのチャンスを狙っていました。22メーターライン付近で相手のパスをインターセプトすると60メートル以上を独走し、ウイングのゲラード・ファンデンヒーファー選手の先制トライに結び付けたのです。
2本目は38分。スコアは13対17。1本欲しい場面でスクラムハーフの茂野海人選手、スタンドオフのヘイデン・パーカー選手からもたらされたボールを中村選手はうまくいかしました。敵を引きつけながら“技あり”のオフロードパス。ロックのトム・ロウ選手の“ごっつぁんトライ”をお膳立てしました。
そして3本目は後半30分でした。23対31とリードを許し、シンビン(10分間の一時退場)でひとり少ない時間帯。サンウルブズは敵陣深くのスクラムからボールを展開しました。ここで中村選手とパーカー選手がポジションを入れ替えるサインプレーを披露します。パーカー選手からのパスを受け取ったファンデンヒーファー選手は鋭い突破でトライをあげました。
実際のサイズより大きく見えるのは好選手の特徴です。中村選手は身長178センチ、体重92キロとノーマルですが、ピッチに立つとひと回り大きく見えます。
どんな選手なのでしょう。1991年6月生まれの27歳。大学選手権9連覇を達成した帝京大学の出身です。V2からV5に貢献しました。3年時(初キャップは4年時)にはジャパンに選出され、当時のエディー・ジョーンズHCをして「国際レベルの選手として、今後の進歩を興味深く見守っていきたい」と言わしめました。
しかし、その後は順風満帆ではありませんでした。大学卒業後に入団したサントリーサンゴリアスの沢木敬介監督によれば「プレーに波がある」。集中力不足をたびたび指摘されました。
「口を酸っぱくして、そのことを言われたので、強く意識するようになりました」と中村選手。その教えが生きたのが17-18シーズンでした。
成長した姿を見せたのは日本選手権決勝を兼ねたトップリーグファイナルのパナソニック ワイルドナイツ戦でした。前半5分、スタンドオフのマット・ギタウ選手の絶妙なグラバーキック(ゴロのキックパス)に反応した中村選手は、右中間に先制トライをあげました。中村選手の攻守に渡る活躍でサントリーはパナソニックを12対8で破り、2年連続2冠に輝きました。
今月22日、トップリーグ&日本選手権3連覇を逃したサントリーは、沢木監督の退任を発表しました。中村選手は指揮官との3年間を「よく怒られました。一番思い出に残っていることは怒られ過ぎて覚えていないです」と語っていました。
そして、こう続けました。
「すごく成長させてもらった監督。寂しいですけど、いなくなったからこそ自立しなければいけない部分もある。いる時と同じように緊張感を持ちながらやっていきたいと思います」
現在、中村選手はジャパンでティモシー・ラファエレ選手らとポジション争いの真っ最中です。サンウルブズでは昨季スーパーラグビーベストフィフティーンのマイケル・リトル選手が立ちはだかります。それについては、どう考えているのでしょう。「あまり気にしていないです。チームとしていい結果を出すことが大事。ポジション争いはありますが、試合に出たら自分の仕事を全うするだけです」。中村選手は足元をしっかり見つめています。
「ビッグプレーは狙っていない。僕の場合、足が速かったりポテンシャルがずば抜けているわけもない。いかにチームとコネクションを取って、パイプ役として動けるか……」。スーパーラグビーは残り14戦。生き残りの条件を反芻しながら「悔いのない日々を送る」中村選手です。
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