スポーツの世界では古巣のチームを倒すことを「恩返しをする」と言います。「恩返し」こそなりませんでしたが、強豪・東京サントリーサンゴリアス相手に善戦した横浜キヤノンイーグルス。試合後の横浜E・沢木敬介監督の発言に注目が集まりました。
第10節が終わり、横浜Eは4位。一方の東京SGは1位。両チームは3月27日、第11節(昭和電工ドーム大分)で激突しました。
横浜Eは前半12分、フランカーのコーバス・ファンダイク選手のトライで先制。その後は点の取り合いになりました。前半は18対17で東京SGが1点リード。後半はリードを広げる東京SGに対し、横浜Eが追い上げる展開で、33分まで1点差という接戦でした。最後は東京SGに突き放なされ、27対40で敗れたものの、沢木監督の発言からは、それなりの手応えが窺えました。
「サンゴリアスに対しての善戦。以前のイーグルスだったら喜んでいたと思います。ただ、それが悔しさに変わり、そう思う選手が増えてきた。まだまだトップ4の壁を崩せるチャンスはある。更なるレベルアップをしていきたい」
第11節を終えた時点で、横浜Eは7勝4敗の勝ち点32で4位。上位4チームまでが進めるプレーオフ圏内に入っています。
言うまでもなく沢木監督はサンゴリアスの前監督です。2016年度に監督就任1年目で前年度9位と低迷したチームをリーグ優勝&日本選手権優勝に導き、翌シーズンも2冠を達成しました。その沢木監督、古巣への思いを、こう口にしました。
「僕も梶(梶村祐介)もサントリーのDNAがどこかに入っています。僕らはサントリーで育てられた。今はそのチャンピオンチームだった、勝ってきた文化のあるサンゴリアスにチャレンジできるという喜びの方が大きい。別に特別意識しているわけでもないんですけど、より勝ちたいという思いはあります」
沢木監督、センター梶村選手に加え、ウイング松井千士選手もサンゴリアスからの移籍組です。ここまで梶村選手は攻守に活躍し、不戦勝を除く全10試合に出場し3トライ。松井選手は持ち前のスピードを生かした突破で、同9試合4トライを記録しています。2人は27日の試合でもスタメン出場(松井選手はフル出場)を果たしました。
対する東京SG側も沢木監督の存在を意識していたようです。
「敬介さんがキヤノンの監督になった時点で、ベスト4に入って優勝争いをし、どんなチームをつくるのかもわかっていました。実際、素晴らしいラグビーをしていると思います。試合に対しての特別な感情というよりも、キヤノンが素晴らしいチームであることを認識し、そこに対し、準備してきました。梶村、松井という2人の後輩も相手チームにいたので、試合をしていて楽しかったです」(流大選手)
「敬介さんのチームなので、難しいゲームになると思っていた。いろいろな感情はどうしても出てしまう。選手たちに“いつも通りやれ”ということは一番大事にしたポイントです。ウチのチームはウォーミングアップの時も、ロッカールーム内でも、いつも以上にエナジーが高かった。そこが空回りした部分もあった。優勝するためにいろいろな学びがあったと思います」(田原耕太郎コーチングコーディネーター)
さて沢木監督の注目発言が飛び出したのは試合後です。
「ミスジャッジがありました。選手を守らなければいけないところを見逃している。レイトタックル。うちもやっちゃっているし、うちも食らっている。そこは改善していかないと選手を守れない。これを書いてください」
沢木監督が指摘したプレーのひとつは後半30分、東京SGのプロップ中野幹選手が、パスを放った直後の梶村選手に対して見舞ったタックルです。だが、レフリーが笛を吹いたのは、直後のファンダイク選手のスローフォワードに対してでした。
公の場での審判に対する“抗議”はリスクを伴います。今後のことを考えれば、黙っていた方が得策でしょう。経験豊富な沢木監督が感情に任せて審判批判をするとは思えません。もちろん日本ラグビーの将来を見据えての問題提起でしょうが、これを聞いた選手たちは背筋が伸びたのではないでしょうか。「沢木さんは本気だ! 退路を断っている」と。横浜Eは現在2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、同3位の埼玉パナソニックワイルドナイツとの対戦を残しています。ここからが勝負です。
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