来年1月にスタートする「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(ジャパンラグビーリーグワン)の開幕カードが決まりました。他5試合に先立ち1月7日、昨季トップリーグ(TL)王者の埼玉パナソニックワイルドナイツがクボタスピアーズ船橋・東京ベイと国立競技場で対戦します。リーグワン側は「開幕戦にふさわしい試合」と期待しています。そこでワイルドナイツの飯島均ゼネラルマネジャー(GM)に抱負を聞きました。
――先日、リーグワンの大会日程が発表され、ワイルドナイツの“先行開幕戦”が決まりました。
飯島均: 開幕戦に選ばれたことは光栄ですが、そこが目標ではありません。リーグワンのディビジョン1はTLからチーム数が絞られ、どこも強い。クボタさんは昨季飛躍した強敵です。しっかり私たちのラグビーをして勝利したいものです。
――新リーグの“先行開幕戦”ということで注目が集まります。
飯島: 今回はTLからレギュレーションが変わり、各チームの外国出身選手の割合が大きくなります。日本代表資格を持つ選手は外国籍枠にならない予定です。その点ではラグビーのレベル、強度は上がっていくのではないかと見ています。また個人的には日本人選手の出場割合が減ることに対し、国内でどういう反応が起こるのかに関心を持っています。出場資格のレギュレーションを変えようという意見も出てくるかもしれません。今後の日本ラグビーにおける羅針盤となる試合だと思います。
――2019年W杯日本大会でのジャパンは多国籍型のチームで、国内メディアから“多様性を象徴するチーム”と称されました。
飯島: 私は現役時代、大東文化大学と三洋電機でトンガ出身の選手とチームメイトでした。一緒に食事に行った際など、彼らに対する偏見や差別を味わうこともありました。そういうものがなくなるきっかけになればいいですね。
――新戦力としてオーストラリア代表ウイングのマリカ・コロインベテ選手などが加わりました。昨季MVPの福岡堅樹さんが抜けた穴を埋めることができるのでしょうか。
飯島: コロインベテはスピードと強さを兼ね備えた世界屈指のウイングです。フランカーのラクラン・ボーシェー、センター/ウイングのヴィンス・アソもワールドクラスの選手。2人ともニュージーランド代表に選ばれても不思議ではありません。スーパーラグビーでの実績も十分ですから当然期待しています。特にボーシェーは「ニュージーランド代表になぜ選ばれないんだ」と議論になっているほどの選手です。私たちはターンオーバーからの攻撃を武器にしているので“ジャッカルの達人”である彼の加入は大きい。
――日本代表資格を持つロックのマーク・アボット選手もチームのフィロソフィーに沿って獲得したわけですか。
飯島: そうですね。一番評価したのは人間性とチームプレーヤーであるということ。練習に対する姿勢は素晴らしいものがあります。またチームには東京オリンピックセブンズ(7人制ラグビー)日本代表のウイング/フルバック藤田慶和も帰ってきます。福岡が引退したのは戦力的に痛手ですが、それを補える力を持った選手たちが揃っていると考えています。
――昨季と比べ、むしろ層が厚くなった印象です。
飯島: 純粋な足し算で言えば、そうかもしれません。しかし、良い選手が来れば来るだけ調理も難しくなる。簡単にチーム力がアップしたとは言い切れない。ただ我々のチームには百戦錬磨のロビーさん(ロビー・ディーンズ監督)がいますから、そこは心配していません。
――新シーズンのキープレーヤーは?
飯島: 良いキャラクターがいっぱいいるので選ぶのは難しい。強いてあげるならフランカー/ナンバーエイトの福井翔大です。今回のジャパンにも選ばれましたが、どれだけ伸びるのか。高校卒業後、ワイルドナイツに加わって昨季ブレイクした。TLのチームには大学を卒業してから、入団するのが一般的です。その意味で彼は、日本ラグビーを変える起爆剤になり得る人材だと思っています。
――福井選手以外には?
飯島: 皆さんも期待していると思いますが、スタンドオフ拓也とスタンドオフ/フルバック京平の山沢兄弟です。今年4月に弟が明治大学から加わりました。2人ともパスもキックも巧く、天賦の才を感じますね。その2人が同じチームでプレーすることにより、どんな化学変化が起きるかが楽しみです。先日の高知合宿でゲーム形式の練習を観ましたが、2人ともキック力があり、精度の高いボールを蹴っていました。今年8月に採用された「50:22ルール」(自陣から蹴ったボールが敵陣22メートルライン内で間接的にタッチラインを割った場合、ラインアウトは蹴ったチーム側のボールになる)によりキックの重要性が増しました。彼らが切磋琢磨して伸びていくことに期待しています。
――2人は地元出身ですから、ホームのファンの期待は大きいでしょうね。
飯島: 兄の方は、もう既に熊谷の顔にはなっていると言っていいでしょうね。願わくばジャパンにも選んでいただけたらうれしい。その力は十分あると思っています。また山沢兄弟の活躍により、今後、さらに熊谷出身の選手が増えていけばいいですね。
――ワイルドナイツは拠点を群馬県太田市から埼玉県熊谷市に移しました。練習グラウンドのある「さくらオーバルフォート」は宿泊施設なども併設した多機能施設です。
飯島: 選手たちも皆、喜んでいます。施設が熊谷文化スポーツ公園内にありますので、公園を散歩する方たちのコースから練習場の様子が窺える。つまり誰でもワイルドナイツの練習を観ることができるんです。それはチームにとってメリットとデメリット両面あると思っています。デメリットはサインプレーなど戦術面で公開したくない練習も観られてしまうこと。メリットは常に人から観られるので、選手たちに緊張感が生まれる。いい加減な立ち居振る舞いはできませんからね。その緊張感が選手育成にもプラスに働くと期待しています。
――今後に向けての活動方針を教えてください。
飯島: 地域の大学や行政と連携し、人を育てていきたい。例えば、留学生や外国人選手の日常生活を地域の方々にサポートしていただくような取り組みを考えています。熊谷市を軸に、埼玉県、北関東で育てていきたい。地域の人に育ててもらった選手が活躍し、代表に選ばれたら「アイツはウチで面倒見てたんだよ」と胸を張っていただけるでしょう。
――改めて、1月開幕のリーグワンに向けての目標を?
飯島: もちろんリーグの初代王者を狙っていますし、優勝したいという気持ちは例年以上に強い。熊谷移転1年目に結果を残すことができれば、より多くの人が私たちに関心を持つ。それが地域の活性化や人材育成など私たちがやりたいことを加速させる原動力になると思っています。
<飯島均(いいじま・ひとし)プロフィール>
1964年9月1日、東京都出身。現役時代のポジションは主にフランカー。府中西高を経て大東文化大に進む。大学4年の時、大学選手権優勝を経験。三洋電機(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)に入社。95年度の全国社会人大会初制覇を最後に現役を引退した。96年度から99年度まで三洋電機の監督を歴任。その後、2001年から03年までラグビー日本代表のコーチを務め、05年度からは三洋電機に復帰した。08年度より再び監督に就任し、日本選手権の連覇を3に伸ばし、10年度には悲願のトップリーグ初優勝に導いた。ラグビー部長を経て、現在はゼネラルマネジャーを務める。
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