リーグワン最多となる5万6486人の観客を集めた5月26日の東京・国立競技場に新たな名勝負が誕生しました。リーグワン・プレーオフトーナメント決勝は、東芝ブレイブルーパス東京が埼玉パナソニックワイルドナイツを24対20で下し、トップリーグ時代を含めると14季ぶり6度目の優勝を果たしました。
両チームがプレーオフ決勝で対戦するのはトップリーグ時代の2016年1月以来、8年ぶりです。この時はワイルドナイツが勝利しましたがスコアは27対26。ラストでブレイブルーパスのコンバージョンキックが決まっていれば、勝者と敗者は入れ替わっていました。
3月9日、埼玉・熊谷ラグビー場で行われた今季の直接対決は36対24でワイルドナイツが勝ちましたが、一時は5点差に詰め寄るなどブレイブルーパスも見せ場をつくりました。それだけに今回も接戦は必至と思われました。
先制したのはワイルドナイツ。2本のPGをスタンドオフ松田力也選手が決め、6対0。対するブレイブルーパスは前半27分、ウイングのジョネ・ナイカブラ選手が力強い突破を見せ、インゴール右に飛び込みました。スタンドオフのリッチー・モウンガ選手のコンバージョンキックも決まり、7対6と逆転しました。
今季限りでの引退を表明しているワイルドナイツのフッカー堀江翔太選手は後半開始と同時にピッチに姿を現しました。
ブレイブルーパスは5分、ナイカブラ選手が、この日2本目のトライをあげ、17対6とリードを広げます。一度は逆転を許したものの、34分、ウイング森勇登選手のトライとモウンガ選手のコンバージョンキックにより、24対20と再々逆転に成功しました。
2年ぶりの王座奪還を目指すワイルドナイツは残り時間が6分を切ったところで猛攻を仕掛けます。39分、左サイドから右サイドに素早く展開し、最後はウイング長田智希選手が右サイドを突破し、そのままインゴールに飛び込みました。
結局、幻のスコアとなりましたが、これで25対24。コンバージョンキックを蹴ろうとした松田選手は試合後、「勝ったと思っていました」と語りました。
「(キックにかけられる時間は)80分2秒までレフリーに言われていたので、そのホーンをしっかり聞いてから蹴れば、僕たちが笑っている状況で終われると……」
ボールを置く松田選手の元に寄ってきたのが堀江選手です。ワイルドナイツファンの中には堀江選手が蹴るのではないか、と思った者もいたようです。2点を追加して有終の美を飾るのではないかと……。
ここで何やらグラウンドの雲行きが怪しくなってきました。滑川剛人レフリーがなかなかプレーを再開しないのです。キックの準備をする松田選手を「ちょっと待って」と制止します。
滑川レフリーはTMOからの無線を受け、モニターに映像が映し出されるのを待っていました。対象となったのはトライから2フェーズ前のシーンです。フッカー堀江選手からウイングのマリカ・コロインベテ選手へのパスが前方に流れていないか、すなわちスローフォワードか否かの確認です。
さて判定は。入念なチェックの後、滑川レフリーは両手を水平に開き、トライキャンセルをコールしました。スコアは動かず24対20。ナイカブラ選手の鋭いタックルが、堀江選手の手元を狂わせたのかもしれません。
ブレイブルーパスのキャプテン、ナンバーエイトのリーチマイケル選手は試合後の会見で勝因を問われると、「何だろうね……TMOじゃないですか?」と冗談交じりに言いました。そして、こうも話しました。
「本当によく見てくれていました。僕が試合中に気づかないところをレフリーが見ていたりして、良かったと思います」
TMOは1995年に南アフリカの国内大会で初めて運用され、W杯は2003年大会から導入されました。日本では2008年のテストマッチで初導入。リーグワンではD1とD2、プレーオフトーナメント、D1とD2の入れ替え戦でも実施しています。
この日、レフリーがTMOで映像を確認した場面は4度ありました。アシスタントレフリーを務めた古瀬健樹さんは試合翌日、こう語りました。
「昨日の試合はライブで判断するのが難しかった。もしライブで判断して間違った場合、大きな問題になりかねません。明らかなものに対してはオンフィールドでやりましょう。それができなければTMOが入り、サポートします、というのが世界のTMOのやり方。僕は昨日のジャッジに関しては正しいと思っています」
さて、当事者の堀江選手は?
「とりあえず横にペッと放った感じ。ジョネ(・ナイカブラ)が僕にタックルに入ってなかったら……」
ここはナイカブラ選手の懸命なタックルを褒めるべきなのでしょう。攻守にわたって活躍したナイカブラ選手、堂々のプレーヤー・オブ・ザ・マッチでした。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。