帝京大は12月4日、東京・秩父宮ラグビー場で行われた関東大学対抗戦グループA最終節で、慶應大に64対14と大勝し、3年ぶり10度目の優勝を果たしました。照準は4年ぶりの大学日本一です。
ここまで6連勝で対抗戦1位を守っていた帝京大ですが、慶大に敗れると、翌日の早明戦の結果次第では順位が入れ替わる可能性がありました。対する慶大は3勝3敗で4位。下馬評では帝京大有利と見られていたものの、ここ2シーズンの対抗戦では慶大に24対29、27対30と苦杯を嘗めさせられていました。
試合前、帝京大・岩出雅之監督は、こう檄を飛ばしました。
「もし敗れると(大学選手権の)組み合わせが厳しい場所に入る恐れがあった。“いろいろな意味で締めくくる試合にしていこう”と言って送り出しました」
前半は21対14。帝京大は後半に入って一気に突き放しました。5分にスタンドオフ高本幹也選手がPGを決めると、それを狼煙とばかりにFWとBKが一体となった分厚い攻撃を仕掛けます。
11分、プロップ奥野翔太選手のオフロードパスを受けたロック江里口真弘選手がインゴール中央に飛び込みました。16分はセンター押川敦司選手、18分にはナンバーエイト奥井章仁選手がトライをあげ、43対14で慶大を突き離します。
30点近い差をつけても帝京大は攻撃の手を緩めません。20分には、ウイング高本とむ選手がキックオフのボールをキャッチすると、左サイドを1人で駆け抜け、約80mを走り切るノーホイッスルトライ。高本幹也選手、途中出場のプロップ津村大志選手にもトライが生まれました。
後半だけで6トライをあげ、大量40得点。結局、61対14と50点差の大勝で、10度目の対抗戦優勝を飾りました。
試合後の記者会見には、この試合をケガで欠場していた主将の細木康太郎選手も出席しました。後半の強さについて、細木選手はこう明かしました。
「ゲーム前に岩出監督からは“徹底”、ゲームキャプテンの上山(黎哉)からは“今までやってきたことを信じてやり抜く”といったテーマを与えられました。ゲーム中に反則が多かったり、いろいろな場面がありましたが、自分たちが立ち返る言葉があったことが、後半の点差につながったと思います。ゲームに出ているリーダー陣がコミュニケーションを取り、グラウンドに立っている15人がゲームに集中できていた。何にフォーカスして、何を徹底するかができていた」
岩出監督は“徹底”というキーワードの狙いについて、こう説明しました。
「すべてのことにその言葉を使ってくれるといいなと思っていました。マインドセットにしても、ゲームひとつひとつのプレーにしても、激しさにしても。ワンワードで自分たちがどんなプレーをしていきたいか、どんなことが必要かということを考えてもらいたい。そう思って、この言葉を選手たちに授けました」
ワンワードで思い出したのが初めて大学日本一になった10年1月の東海大との決勝です。岩出監督は「ブザー・ビート」という言葉を用いました。
7対7の同点で迎えたハーフタイム、指揮官は「よし、“ブザー・ビート”で行くぞ!」と選手たちに発破をかけました。この言葉は当時の人気ドラマ『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』で使われていたもので、学生には馴染みがありました。
周知のようにバスケットボールでは、各ピリオド終了のブザーが鳴る直前にシュートが放たれ、それが決まれば「ブザー・ビーター」と称賛されます。要するに岩出監督は選手たちに「接戦になっても最後は勝つぞ」と暗示をかけたのです。
この試合、東海大に後半一度は勝ち越されたものの、帝京大は1トライ1ゴールで逆転に成功します。試合終了間際、自陣に押し込まれるピンチを凌ぎ切り、1点差で逃げ切りました。終わってみれば、岩出監督の思惑通りでした。
さて、今シーズンの帝京大に話を戻しましょう。細木選手は「ここからがスタート。僕たちの目標は大学選手権優勝」と気を引き締めます。全勝での対抗戦制覇は、帝京大が最後に大学選手権を制した17年度以来です。
4年ぶりの王座奪還へ、岩出監督は再び“徹底”という言葉にこだわる構えです。
「まさにここからが“徹底”だと思います。しっかりと我々のできることを徹底する。それをグラウンドで出し切るしかない。そういう仕上げ方をしていきたいと思います」
帝京大の大学選手権初戦は26日の準々決勝です。対抗戦優勝を果たしたことにより、約3週間の準備期間を手に入れました。4年ぶり10度目の日本一に向け、徹底した準備が始まります。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。