昨年の暮れから新春にかけて、テレビに出ずっぱりだったのがパナソニック ワイルドナイツのプロップ稲垣啓太選手です。昨秋のW杯ではジャパンのベスト8進出の立役者となりました。今月12日に開幕するトップリーグでも“笑わない男”に注目が集まります。
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暮れから新春にかけて、稲垣選手の顔を見ない日はありませんでした。
お笑いタレントが稲垣選手から笑いをとろうとしてもニコリともしません。そこは心得たものです。
その様子を自宅のテレビで観ながら、「さすが」と感心したのがパナソニックの飯島均GMです。
「彼の頭の良さを、テレビを見ていて改めて感じました。緊張もしていないし、的確なことを言う。間も絶妙です。ラグビーというのは瞬間、瞬間で最善を探し、判断して実行するスポーツなんです。頭が良い男だとは思っていましたが、こんなに臨機応変にできるとは……。彼がどういう幼少期を過ごしたかは知りませんが、肝が据わっている。ドシッと構えているのは、入社したばかりの頃からで、精神年齢も40代、50代ぐらいに感じていました」
ある著名な映画監督が「あれだけ存在感を出せる役者は、そうはいない。ぜひ僕の作品に出演してもらいたい」と語っていたという話を、知り合いのテレビプロデューサーから聞きました。
「それは任侠映画?」と突っ込むと、意外な答えが返ってきました。
「いや、そうじゃないらしい。“あれだけの存在感があれば、医師でも弁護士でも、何の役でもやれる”と言うんだ。監督が言うには“彼は目の動きと表情だけで演技ができる”と。心配なのはセリフだけど、“慣れれば問題ない”とも言ってたね」
稲垣選手の「知性」については、ジャパンの長谷川慎スクラムコーチも太鼓判を押していました。
「例えば試合がある週のはじめの朝、“次の試合はこういうことをやるからリーダーとして話してくれ”と頼む。彼はそれを1週間やり続けてくれました。だいたいの選手は1回言われただけでは忘れてしまいます。しかし、彼はずっと覚えているんですよ」
そして、こう続けました。
「僕の現役時代、彼の頭脳があったら、もっと良い選手になれたと思います」
これは最高の褒め言葉でしょう。
思い出すのはW杯日本大会に向けての最後のテストマッチ、南アフリカ戦後の談話です。試合は7対41で完敗でした。W杯本番まで、残り13日。自らの足元を見つめた、冷静沈着な話しぶりに「肝っ玉の座った男だな」と感じたのは私だけではないでしょう。
「よく記者の方たちから“プレッシャーありますか?”と聞かれますが、変に強がって“プレッシャーとかないです”とは言わない。プレッシャーを感じているんだったら、素直に“プレッシャーはある”と言っていいと思うんです。それよりもプレッシャーを自分たちでどう力に変えていくかが大事。そのためには入念な準備が必要になってくる。準備をすることで自信を持ち、プレッシャーを苦にするのではなくて、プレッシャーを楽しむ。そういう気持ちで(W杯に)臨みたい」
さて注目のトップリーグです。パナソニックの開幕戦の相手はクボタスピアーズ。3季連続の開幕カードです。
パナソニックは稲垣選手の他、フッカー堀江翔太選手と坂手淳史選手、プロップのヴァル・アサエリ愛選手、スタンドオフ/センター松田力也選手、ウイングの福岡堅樹選手と6人の代表メンバーを抱え、4季ぶりの王座奪還を狙います。リーグ屈指のタレント集団は、「世界最高のロック」と呼び声が高いニュージーランド代表117キャップのサム・ホワイトロック選手、ジャッカルの名手と言われるオーストラリア代表フランカー/ナンバーエイトのデービッド・ポーコック選手、力強い突破が持ち味で南アフリカ代表の優勝に貢献したセンターのダミアン・デアリエンディ選手の加入により、まるで世界選抜のような陣容になりました。新キャプテンに就任した坂手選手は「今年は勝ちたい、優勝したいというところをまず一番に持っています。“勝つために”ということに基準を置いてすべての行動をしていこう、とチームで考えている」と抱負を口にしました。
対するクボタは、ジャパンでゲームキャプテンを務めるなどリーダーシップを発揮したフランカーのピーター・ラブスカフニ選手、2015年W杯イングランド大会で活躍したセンター/スタンドオフ立川理道選手を中心とした攻守にバランスの取れた好チームです。新戦力としてW杯決勝のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた南アフリカ代表ナンバーエイトのドウェイン・フェルミューレン選手、W杯3位のニュージーランド代表センターのライアン・クロッティ選手らが加わり、強力な布陣になりました。
結びに、ルーキーイヤーから6季連続でベストフィフティーンに選ばれている稲垣選手のコメントを紹介しましょう。
「皆さんに感動してもらえるような、また何かを感じてもらえるような試合をお見せしたい。ぜひ会場に足を運んでいただき、応援していただければと思います」
真冬の熱闘に期待が集まります。
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