NECグリーンロケッツ東葛は来年1月開幕予定の新リーグ「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(ジャパンラグビーリーグワン)に向け、積極的な補強を行っています。グリーンロケッツは日本選手権優勝3回、マイクロソフトカップ優勝1回の実績を持つものの、2005年度の日本選手権優勝を最後にタイトルから遠ざかっています。既に元ジャパンのスクラムハーフ田中史朗選手、ウェールズ代表50キャップを誇るロックのジェイク・ボール選手ら10人以上の新戦力が加入。NECの新組織「スポーツビジネス推進本部」の本部長で、NECロケッツ(グリーンロケッツとバレーボールのNECレッドロケッツの総称)の梶原健代表にリーグワンへの抱負を聞きました。
――今年6月にNEC社内に「スポーツビジネス推進本部」を立ち上げ、NECレッドロケッツとともにチームのリブランディング(ブランドの再構築、再定義)を敢行してきました。ここまでの手応えは?
梶原健: 改革点は「勝てる組織への意識改革」「お金を稼ぐ体制づくり」の2つだと考えていて、今はそれを実行に移しているところです。まずひとつ目の「勝てる組織」をつくるためには、「チーム内の共通言語が必要」というのが最低限の条件だと思っています。これは私が今までいろいろなスポーツを見た上で、強いチームの共通点でした。チームのリブランディングを実施して、チームが目指すべき理念やビジョン、スローガンを創り、それを象徴するエンブレムを作成しました。今やチームの皆がリブランディングに対する思いや、新エンブレムのデザインに込めた意味をきちんと説明できるようになってきています。目指すべき方向性も共有できており、共通言語化もできてきていると実感しています。
――「勝てる組織への意識改革」としてオーストラリア代表の元ヘッドコーチ(HC)であるマイケル・チェイカ氏をディレクター・オブ・ラグビーに招きました。
梶原: チームづくりで最初にとりかかったのが世界的な視点を持っているディレクター・オブ・ラグビーの選定でした。長期的な視点で組織の風土づくり、NECのラグビースタイルを築き上げていきたいと考えていたので、世界的指導者であるチェイカ氏が適任だと思い、オファーしました。
――補強も積極的に行い、既に10人以上の選手を獲得しています。
梶原: 人気のないチームに興味を持ってもらうことはできませんし、“試合を観たい”とも思ってくれない。そのためにもチーム強化はマストだと思っています。グリーンロケッツは2シーズン(19-20シーズンは第6節までで大会は中止)リーグ戦で勝てていない。組織風土を含め抜本的な変革が必要です。組織を変えるのに一番簡単なのは“外の血”を入れること。今回は15人の新規獲得を掲げ、全ポジションを補強するつもりです。“競争”と“共創”をつくりあげることを意識しています。
――大きく“血を入れ替える”ことに対し、チーム内に反発はありませんでしたか?
梶原: その点、チームは改革をやりやすい状況にあったと思います。先ほど申し上げましたようにグリーンロケッツは2シーズン勝っていなかった。選手たちも“勝ちたい”という欲が強くあった。練習を見ていても、去年とは雰囲気を含め別のチームになっています。まず第一歩はうまく踏み出せたと感じています。その一方で変わらないものも大切にしていきたい。NECのラグビーは「愚直で泥臭い」と言われています。そこは継承しながら、受け身の愚直さではなくアタックし続けること。それができるマインドを持った選手が必要です。挑戦し続ける姿勢を見せられる選手。その点を重視して今回の補強を行いました。
――ジャパンでW杯3大会に出場したベテランの田中選手は、改革の象徴的なプレーヤーですね。
梶原: はい。チームのコミュニケーションを活性化させるためには経験と実績があり、かつ発言力のある選手が必要です。そうした選手が加われば、チームはガラリと変わると思っていました。その意味でも彼はどうしても欲しい選手でした。
――変革のキーワード2つ目、「お金を稼ぐ体制づくり」については?
梶原: まずは当たり前のことを当たり前にできる体制を目指しています。事業化に向け、スポンサー集め、ファンクラブ創設、チケット・グッズ販売など、トップリーグ時代には着手できていなかった仕組みをつくりあげること。その土台はできつつあると手応えを感じています。スポンサーについては、今のグリーンロケッツに必要なのは資金の額ではなく、サポートしてくれる企業の数だと思っています。まずはチームを応援してくれる仲間を増やす。地域各地を回り、小さな商店から企業を含めて応援してもらえるように動いています。
――グリーンロケッツは、リーグワン参加にあたり、チーム名に「東葛」が加わりました。ホストエリアは千葉県の我孫子市、柏市、松戸市、流山市、野田市、鎌ケ谷市と6市にまたがります。
梶原: グリーンロケッツはこれまで我孫子市に練習グラウンドを構え、柏市にスタジアムがあります。活動は2つの市にまたがっていました。ひとつの市に限ってしまうと、マーケットが小さくなるデメリットがあります。私は千葉県の船橋市出身なので、東葛というエリア、名称に馴染みがありました。「東葛」という名前には、私も含め誇りに思っている方が多い。それを全面に出すチーム名は、地元の人たちにも愛着を持ってもらえるという自信がありました。今後は“東葛をラグビー王国にしていく”ことを強く打ち出し、活動していきたい。
――変革の2つ目「稼ぐ体制づくり」という点についても伺います。チケット収入はプロスポーツ経営の基本ですが、ラグビーは試合数の少なさがネックという声を聞きます。
梶原: 365日のうちホストゲームはリーグ戦で8試合。年間8試合しかホストゲームを開催しない中で収益を上げるのは至難の業です。そのためにラグビー、NECというコンテンツを活用し、試合がない日でも収益を出せる体制をつくれるかがカギとなります。人々の日常の中にいかにグリーンロケッツを潜り込ませることができるか。そこからトライ&エラーを繰り返しながら収益モデルをつくっていきたいと考えています。
――チアリーダーチームの創設もラグビー界としては珍しい試みですね。
梶原: 地域と密接に関わっていくことを考えた時に、日常的にチームと地域の方々が触れ合える接点をつくれるかが大事になってきます。シーズン中、選手は稼働しにくいので、地域とのパイプ役を担うのはチアリーダーであり、チームのマスコットキャラクターだと思っています。その意味でチアリーダーは地域密着のためにマストな存在だと考え、チームを創設しました。
――今後に向けての課題は?
梶原: チームを3段階に分けて進化をさせていきたいと考えています。1段階目は基盤づくり。ロケットでいうと設計図、基礎となる土台をつくる時期だと思っています。その骨組みがしっかりしていないとロケットは飛び立つことができません。今は“NECが変わった”“グリーンロケッツが変わった”と地域内外に対してプロモーションを行っている期間です。それを土台にして3年目にはリーグ優勝を狙えるチームにしたい。その先の目標として“世界で戦えるチームをつくっていきたい”と考えています。
<梶原健(かじはら・たけし)プロフィール>
1980年、千葉県出身。2005年、日本大学大学院理工学研究科不動産科学専攻修了後、株式会社新日鉄都市開発(現・日鉄興和不動産株式会社)入社。高校時代からの夢であった千葉県にプロバスケットボールチームを創るという想いの実現に向けて、10年3月に千葉プロバスケットボールチーム準備委員会を設立した。10年8月にbjリーグより11-12シーズンへの新規参入が認られ、同年9月に千葉ジェッツの運営会社である株式会社ASPE(現・株式会社千葉ジェッツふなばし)を設立し、代表取締役に就任。12年1月に代表取締役を辞任後は16年6月まで営業活動に奔走し、観客動員数リーグナンバーワンに貢献した。19年にはJリーグ・アビスパ福岡の社長代行として経営に参画。今年2月、NECに入社。NECロケッツ(ラグビーのグリーンロケッツ、バレーボールのレッドロケッツの総称)代表に就任し、チームの改革を担っている。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。