11日に東京・国立競技場で行われた全国大学ラグビー選手権大会決勝は天理大学が早稲田大学を55対28で破り、初の大学日本一に輝きました。好守で早大を上回っての完勝でした。関西勢の優勝は1984年度の同志社大学以来、36大会ぶり2校目。“東高西低”の勢力図に一石を投じたかたちです。
天理大は11年度、18年度に続く3度目の決勝で、ついに悲願を達成しました。チームを率いる小松節夫監督は奈良県天理市出身。天理高、同志社大、日新製鋼でプレーしました。大学1年生だった85年1月には旧国立競技場のスタンドで同大の大学選手権3連覇を見届けました。その時の優勝を最後に関西勢は頂点から遠ざかっていました。
「我々が勝ったことで関西の仲間の励みにも、目標にもなる。関西のチームでも優勝できる。それを関西の学生たちにもわかっていただければ、関西リーグの全体的なレベルアップにつながっていくと期待しています」
兵庫県神戸市出身で、兵庫・甲南高から天理大に進んだキャプテンの松岡大和選手は「関西のラグビー選手に勇気を与えられた」と胸を張りました。
「関西1位でも大学選手権になると関東には勝てないだろうという声のなか、天理大学が優勝したことによって、関西のラグビーを盛り上げる意味でもプラスになると思います。関東に負けじとくらいついていければチャンスはあるんです」
全国大学ラグビー選手権大会は今回で57回目でしたが、天理大が初戴冠を果たしたことにより、優勝校は10校となりました。関東勢は早大(16回)、明治大学(13回)、帝京大学(9)、関東学院大学(6回)、法政大学、慶應義塾大学、大東文化大学(3回)、日本体育大学(2回)と8校もあるのに対し、関西勢は同志社大(4回)と天理大(1回)の2校のみです。優勝回数で見ると、その差はさらに開きます。関東勢が52回(3度の両校優勝はいずれも関東勢だったため1回とカウント)に対し、関西勢は5回。決勝進出校に至っては105対9とワンサイドです。
では、人材までもが“東高西低”なのでしょうか。今回の大学選手権決勝を例にとると、登録メンバー各23人のうち天理大17人、早大13人が西日本の高校出身者でした。
また全国高校ラグビー大会の成績を見ると、大学とは一転して“西高東低”の勢力図が浮かび上がります。
【過去20年の全国高校ラグビー大会優勝校】
2000年 伏見工(京都)
2001年 啓光学園(大阪)
2002年 啓光学園(大阪)
2003年 啓光学園(大阪)
2004年 啓光学園(大阪)
2005年 伏見工(京都)
2006年 東海大仰星(大阪)
2007年 東福岡(福岡)
2008年 常翔啓光学園(大阪)
2009年 東福岡(福岡)
2010年 東福岡(福岡)
2010年 桐蔭学園(神奈川)
2011年 東福岡(福岡)
2012年 常翔学園(大阪)
2013年 東海大仰星(大阪)
2014年 東福岡(福岡)
2015年 東海大仰星(大阪)
2016年 東福岡(福岡)
2017年 東海大仰星(大阪)
2018年 大阪桐蔭(大阪)
2019年 桐蔭学園(神奈川)
2020年 桐蔭学園(神奈川)
※数字は年度。校名は優勝当時のもの。2010年は両校優勝
2000年度以降、優勝回数は西日本勢18回に対し、東日本勢3回。決勝進出校は32対8と西が東を圧倒しています。今年度の第100回全国高校ラグビー大会を例にとると、優勝校こそ神奈川県の桐蔭学園でしたが、ベスト8は東日本勢2校(桐蔭学園、千葉・流経大柏)、西日本勢6校(大阪・東海大仰星、福岡・東福岡、京都・京都成章、愛知・中部大春日丘、奈良・御所実業、大阪・大阪朝鮮)と西に軍配が上がりました。
高校の“西高東低”が大学では一転して“東高西低”となるのは、西日本の強豪校の選手たちが東京を中心とする関東の大学に進んでいることが要因と思われます。
その意味でも、今回の天理大の優勝が東の後塵を拝していた関西の大学に与えた影響は大きいと思われます。さらに言えば決勝メンバーのうち花園決勝を経験していたのはプロップ谷口祐一郎選手(東海大仰星)のみ。大活躍したフランカー松岡選手、スタンドオフ松永拓朗選手(大阪・大産大附)、センター市川敬太選手(大阪・日新)は花園未出場組でした。
これを受け、関西ラグビー協会の萩本光威会長は天理大の大学選手権優勝翌日(1月12日)のスポーツニッポンWEB版で<これを天理大だけの優勝に終わらせたらだめだと感じる。他の大学も学ばないといけない。その手助けを関西協会がしなければいけない>と述べました。
ラグビーの大学選手権は箱根駅伝のように関東の大学だけで争われるものではありません。天理大の初優勝を契機として、関西勢の底上げに期待したいものです。
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