W杯フランス大会前最後のテストマッチとなったイタリア代表戦は、21対42とダブルスコアの完敗でした。本番が迫る中、指揮官はチームをどう立て直すのでしょう。
テストマッチの舞台はイタリア北部のまちトレヴィーゾ。テレビで見る限りスタンドの8割はイタリアのサポーターで、日本を応援する者は一握りに映りました。
まずは前半です。6分に先制されたジャパンは15分、ラインアウトからのサインプレーで、ウイングのジョネ・ナイカブラ選手がインゴール左中間に飛び込みました。しかし、前半のトライはこのひとつだけ。その後、イタリアに1トライ1ゴール、PGを決められ、11対17で前半を終えました。
残念だったのはプレースキックの精度です。この日、スタンドオフに起用された李承信選手は、17分のコンバージョンキックと31分のPGを外してしまいました。
結果論ですが、これが入っていたら、スコアは16対17だったわけで、イタリアにプレッシャーをかけて後半を迎えられていました。
後半、李選手に代わって出場した松田力也選手もコンバージョンキックを2本外すなど、キックの精度の低さが課題として残りました。
ここぞという場面でのキックは大事です。“ブライトンの奇跡”と呼ばれる2015年イングランド大会の南アフリカ戦、ロスタイムでの逆転トライに目が向きがちですが、あの試合、キッカーを任された五郎丸歩選手は、9本中7本(PG5、G2)を成功させ、しつこくスコアを詰めていきました。
特に格上の相手と戦う場合、取れる時に確実に取っておかないと、後でツケを払わされることになります。その意味でも李選手と松田選手には奮起を期待したいものです。
後半に入ってからジャパンは持ち直します。12分には松田選手のパスからフルバック松島幸太朗選手がインゴール右中間に滑り込み、16対20と4点差に迫りました。しかし、終了間際、ミスも絡んで2つのトライを許し、終わってみれば21対42。本番であればボーナスポイントも獲得できない完敗でした。
見ている限り、スコアほどの実力差は感じませんでした。ランキングもジャパンが14位、イタリアが13位です。
スポーツ専門局ESPNのラグビーサイトによると、パス本数はジャパン209に対し、イタリア148。ラン回数はジャパン153に対しイタリアは112と、いずれもジャパンが上回っていました。
それでもダブルスコアになってしまったのは、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)が指摘するように「自滅が多過ぎた」からです。松島選手も試合後は「自分たちのやるべきことを遂行していかないと勝てない」と反省しきりでした。
これはサッカーの話ですが、岡田武史さんがチームを率いた2010年南アフリカW杯、本番前はセルビア、韓国に連敗するなど散々でした。
しかし、災い転じて福と為すではありませんが、「あれで原点に帰ることができた」と後に岡田さんは語っていました。この大会で、日本は海外でのW杯で、初の決勝トーナメント進出を果たしたのです。
本番を前に、守備の要の田中マルクス闘莉王選手は、こう熱弁を振るったそうです。
<俺たちはヘタくそなのだから、泥臭くやらないといけない>(自著『大和魂』幻冬舎)
おそらく、同じような会話が選手たちの間では交わされていたのではないでしょうか。修正すべきは修正し、しかし、芳しくなかったここまでの戦績を引きずらず、気持ちをリセットして本番に臨む――。初戦のチリ戦まで、あと10日です。
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